蒼白ねっこ

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6/20/2025, 6:02:43 PM

好き、嫌い


「おかあさん、」
養子と実母の差。毎日痛感しているものだった。

「うるさい。黙れ」
「ままー!」
「あらぁ、なぁに?」

今の母親は、実母じゃない人だ。

僕は養子としてこの家に引き取られた。そして母親は、僕を嫌っているため、いつもご飯が出てくる保証などどこにも無い。

対して、母親の実子である弟は何もかも甘やかされ、マイペースでのろまな存在になっていった。

そんな弟が、僕に危害を加えようものなら、じっと耐え忍ぶのみ。抵抗すれば、母親にナイフを向けられ、ご飯は一ヶ月以上出てこない。

母親の好きな弟に従い、母親の嫌いな僕は人形になる。

そうでないと、命の保証などない。

だから僕は嫌いになった。


___この母親も。弟も。




____お兄ちゃんなんか死ね!


弟が僕にナイフを向けて、母親のように殺そうと襲いかかってきたのを、僕は難なく交わし、弟を殺した。その後、悲鳴をあげる母親を殺害した。



「二人のこと嫌い!でも、この死に顔は好き♡」

6/18/2025, 12:45:16 PM




僕と実母の糸は引きちぎられた。

僕は小一のとき、養子縁組に出され、養子としてとある家に入れられた。

それからだった。僕が壊れ始めたのは。


糸で固く結ばれた夫婦の中に、ポツンと入るわけだ。そして妻は妊娠している。僕に二人と繋がった糸は無い。

糸でキツく結び付けた関係になるよりも先に、きっと糸は何らかの方法でちぎれる。

僕を拒むように。


それが女から赤子が生まれたとき。


そう悟ると、全てが崩れ落ちた音がした。





__産んだなら、ちゃんと育ててよ。


_なんで、僕と糸で繋いだのさ。おかあさん。



「朝ごはん、何が食べたい?」
「………」
「……」
義母なんざ要らない。どうせ糸で繋がらない。信頼が深ければ深いほど太く頑丈になる糸。僕に巻かれた糸は全て細いもの。

この二人の糸はとんでもなく太いのに。

そして、朝ごはんの話を持ちかけた女の中にいる子供もだ。


俺はどうせこいつらの子供よりも愛されない。
何が養子縁組だ。「愛してる」とか口を開いておきながら、実際は実子と養子の違いを、まだ幼い子供に分からせるためか。だったらいらない。



こんな、口だけの糸なんて。





「……嫌!嫌ッ!!やめて!この子だけは!」

愛されないなら、

僕は一生愛されないまま進むことになる。

それなら自分で糸を切る選択を取るだろう。

縋るように括った糸に依存するよりも、糸を切ってしまうほうが正直楽だった。


女の膨らんだ腹を殴り、罵倒した。



やがて中にいる赤子を殺した。



そして、
自分はまた施設に送られ、新しい養子となる。



「君が、〇〇くんだね。よろしくな。」

「………」

6/17/2025, 4:27:25 PM

届かないのに。


手を伸ばしても、伸ばしても。
もう彼には届かない。

彼は病気で死んだ。生前、毎日苦しそうに息をする彼の姿に、言う言葉など見つからなかった。

毎日乗る電車。明日へと繋ぐ電車に、ついに彼は乗れなかったのだ。彼を置き去りにして発車した電車は白い世界に入り込み、翌朝に連れていく。

翌朝、病院で彼の訃報を聞いた私は片手に、彼が綺麗な字で書いてくれた手紙と、彼と二人で撮影した写真を握りしめ、部屋で泣いた。

電車など乗らなくていい。彼の傍にいられるのならば、終電の電車に乗りたくなどない。

毎日何本も発車される電車。就寝時間に人は翌朝に連れて行ってもらうための電車に乗るそう。

私は毎日終電だった。0時を回る終電を逃せば、翌日には連れて行ってもらえない。電車に乗れず眠りに落ちたものは魂を抜かれ、電車に乗れず、歩いて翌朝に向かう線路を辿る者もいる。いわゆる徹夜だ。


私は駅員に手を掴まれ、電車に強引に押され、乗せられた。

「私に彼がいるの!彼がいないなら乗らない!」


叫んでも、叫んでも。電車は私を閉じ込め発車する。


持ち出せない私の思い出も置き去りにして、電車は発車する。もう届かないのに。


忘れたくなかった。
届かなくても伝えたかったこと。



………愛してるよ。って。





『…電車、発車致します。』
『ここは、貴方様にしか見られない特別列車』
『終点は、"翌朝”でございます。』

4/13/2025, 4:15:48 PM

ひとひら



私の幸せは、薄いガラスの上に乗っているものだと気が付いたある日。


ある日、父親が事故で死んだ。
ある日、母親は病んで精神科に入れられた。


私は、まだ五歳。


祖父母は、私を見なかった。



「あなたに構ってなどいられない」




やがてお母さんは、私を忘れた。




記憶障害だと医者は祖父母と、私に説明をした。これは残酷な世界に落とされた気分だろう。


「お母さん、私!私だよ、、??」


毎日母親に話しかけた。思い出す日を待っていた



その努力は報われず、私が母親を理由に縛っていた、ひとひらのガラスは割れ、砕け散った。


「自殺する、勇気なんてなかったと思ってた」


終わりでいい。これで私も。



ひとひらの、人生は。

3/31/2025, 10:24:20 AM

またね!




またね!その言葉は何度聞いたんだろう。

毎年一度、亡くなった人に会えるという都市伝説。私は、彼に会いたくて試してみた。


そうしたら、最期まで動けなかった彼が、元気な姿で私の前に現れたのだ。

溢れ出る涙を堪えられず、透けてしまう彼を抱いている気分で泣き叫んだ。そして一時間もない幸せな時間は、またね!で締められる。

なんて寂しい話なんだろう。

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