蒼白ねっこ

Open App
3/30/2025, 1:15:10 PM

春風とともに


今日は娘の入学式。
春風とともに、桜の下で写真を撮る。

綺麗な娘の姿に、
父親である自分は涙を流す他ない。


本当なら、涙を流すのは二回目のはずだった。

妻との間に授かった、長女は先に死んだのだ。

次女は、長女が亡くなった後に産まれているため、何も知らない。

それでもやがて知ることになる。



春風とともに、
お空に飛んで行ったお姉ちゃんのことを。

3/29/2025, 5:21:38 PM





「妊娠、したの」

ラブホテルで一緒していた女に突然言われた。

女とは、身体の関係を持ち、許可をもらってはゴムを付けずに性行為をしたものだ。

危険日じゃないから。その口実は何度も聞いた。
何度も、ゴムを着けようと告げた。

決して、彼女に迷惑はかけられない。
彼女を置いて、逃げたりはしたくなかった。

しかし、彼女は自分の心配を他所に、生が好きだと耳元で囁いた。

お互い学生だと言うのに。

自分は、彼女を強く睨んでこう告げた。


「妊娠させてすまない」
「責任取る。子供を堕ろせ」


彼女から流れる涙は、まるで産みたいと告げているよう。彼女が見つめた光は、綺麗な真っ二つに割れた。

それでもその光は、僕と彼女を縛る


「子育てなんて無理だろう!!」



彼女の妊娠は、螺旋階段が繋がっただけだ。

彼女の涙は、棒の中に入っている、真ん中に線の入った丸の中に沈んだ。

しかし、
彼女の産みたいという気持ちとは、裏腹に。


後日。彼女が涙を流して、親に赤ちゃんを堕ろされたと教えてくれた。

あぁ。堕ろせと言うなんて。

僕はなんて最低なんだろう。



彼女が流した涙は、罪悪感。
自分が流した涙は、自分への嫌悪だった。

3/28/2025, 10:21:55 AM

小さな幸せ



『「幸せは偉大なことだ」100万部突破!!』



そんなニュースを耳にした。その本の中には、

「幸せは、大きいことだ。」
「小さなことでは得られない!」
「毎日の日常は、当たり前」
「その上に進むものが幸せを掴みとる!」

と書かれている。

まさに、自分を傷つけるようなその言い方。


私は、父子家庭で育ち、幼い頃からも家に父親は毎日おらず、家事も何もかもこなしてきた。

月に一度やってくる休みは、必ずどこかに連れて行ってくれて、たらふく食べさせてくれる。

それなのに、私は子供心のままか、豪華なものを父に求めた。


当時の私は、父親が低い給料でやりくりしていたことを知らなかったからだ。

そして、
これが小さなことでも、父は、ずっと一緒に居られる時間が幸せに感じていてくれたことも。



幸せは、大きな成功をしなくては得られない?

世間は、小さな幸せでも、認めてはくれない?

父との時間は幸せだった。


父の墓の前で、ふと考えた。

3/27/2025, 4:28:08 PM

春爛漫


もう春なのだと、実感させられる。

木漏れ日の中、桜を綺麗に彩った花が咲き乱れている。その花を見ると、いつも思うことがある。


娘が、桜を見るのが好きだったなと。


娘は、春爛漫の季節に、
桜を見ては、綺麗だと言った。

私の手を掴み、近場の桜並木を見に行った。


しかし、娘は小学校に上がってすぐに、小児がんを発症し、桜を見ることが出来なかった。


「今日は、桜、ゴホッ見に行かないのぉ、?」

「ごめんね、具合が安定してからにしよう、」


そう言って、娘と桜を見に行かない理由を、何度も濁した。そして春爛漫の季節が訪れ、娘は、静かに息を引き取った。


だから私は、春爛漫の季節になると、


娘を思い出す。





娘同様、がんだと診断された私も、


この苦しみを、苦痛を終わりにして。


娘と同じように。春爛漫の日に。


そっと、静かに。

死ねるのかな。

3/26/2025, 3:41:14 PM

七色


みんなそれぞれ、カラーを持つ。

私の所属する劇場は、一人一人カラーを持つ。

そして七色が集まった時、全てが光り輝く。


一人は、とても素敵な快晴。

一人は、綺麗に彩った晴れ。

一人は、中立な立場の曇り。

一人は、心の闇を抱える雨。

一人は、爆発寸前を見た雷。

一人は、崩壊した建物雷雨。

一人は、冷たく生きてる雪。


この七人ではないと、パフォーマンスは完璧では無い。皆が、袋を被り、自らを隠すように。

自分一人では輝くことは許されない。

しかし、一人一人が、自分という表を隠す鎖に縛られれば縛られるほど、変わってゆく。

心の闇を浄化するような、視線を奪う七色に。

どこまでも、光り輝く虹と呼べる何かに。


ラッキーセブンと言うだろう。まさに、劇場はそれを表している。この、七人で。

Next