涙
「妊娠、したの」
ラブホテルで一緒していた女に突然言われた。
女とは、身体の関係を持ち、許可をもらってはゴムを付けずに性行為をしたものだ。
危険日じゃないから。その口実は何度も聞いた。
何度も、ゴムを着けようと告げた。
決して、彼女に迷惑はかけられない。
彼女を置いて、逃げたりはしたくなかった。
しかし、彼女は自分の心配を他所に、生が好きだと耳元で囁いた。
お互い学生だと言うのに。
自分は、彼女を強く睨んでこう告げた。
「妊娠させてすまない」
「責任取る。子供を堕ろせ」
彼女から流れる涙は、まるで産みたいと告げているよう。彼女が見つめた光は、綺麗な真っ二つに割れた。
それでもその光は、僕と彼女を縛る
「子育てなんて無理だろう!!」
彼女の妊娠は、螺旋階段が繋がっただけだ。
彼女の涙は、棒の中に入っている、真ん中に線の入った丸の中に沈んだ。
しかし、
彼女の産みたいという気持ちとは、裏腹に。
後日。彼女が涙を流して、親に赤ちゃんを堕ろされたと教えてくれた。
あぁ。堕ろせと言うなんて。
僕はなんて最低なんだろう。
彼女が流した涙は、罪悪感。
自分が流した涙は、自分への嫌悪だった。
3/29/2025, 5:21:38 PM