来世は犬になりたい

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4/13/2025, 4:15:48 PM

ひとひら



私の幸せは、薄いガラスの上に乗っているものだと気が付いたある日。


ある日、父親が事故で死んだ。
ある日、母親は病んで精神科に入れられた。


私は、まだ五歳。


祖父母は、私を見なかった。



「あなたに構ってなどいられない」




やがてお母さんは、私を忘れた。




記憶障害だと医者は祖父母と、私に説明をした。これは残酷な世界に落とされた気分だろう。


「お母さん、私!私だよ、、??」


毎日母親に話しかけた。思い出す日を待っていた



その努力は報われず、私が母親を理由に縛っていた、ひとひらのガラスは割れ、砕け散った。


「自殺する、勇気なんてなかったと思ってた」


終わりでいい。これで私も。



ひとひらの、人生は。

3/31/2025, 10:24:20 AM

またね!




またね!その言葉は何度聞いたんだろう。

毎年一度、亡くなった人に会えるという都市伝説。私は、彼に会いたくて試してみた。


そうしたら、最期まで動けなかった彼が、元気な姿で私の前に現れたのだ。

溢れ出る涙を堪えられず、透けてしまう彼を抱いている気分で泣き叫んだ。そして一時間もない幸せな時間は、またね!で締められる。

なんて寂しい話なんだろう。

3/30/2025, 1:15:10 PM

春風とともに


今日は娘の入学式。
春風とともに、桜の下で写真を撮る。

綺麗な娘の姿に、
父親である自分は涙を流す他ない。


本当なら、涙を流すのは二回目のはずだった。

妻との間に授かった、長女は先に死んだのだ。

次女は、長女が亡くなった後に産まれているため、何も知らない。

それでもやがて知ることになる。



春風とともに、
お空に飛んで行ったお姉ちゃんのことを。

3/29/2025, 5:21:38 PM





「妊娠、したの」

ラブホテルで一緒していた女に突然言われた。

女とは、身体の関係を持ち、許可をもらってはゴムを付けずに性行為をしたものだ。

危険日じゃないから。その口実は何度も聞いた。
何度も、ゴムを着けようと告げた。

決して、彼女に迷惑はかけられない。
彼女を置いて、逃げたりはしたくなかった。

しかし、彼女は自分の心配を他所に、生が好きだと耳元で囁いた。

お互い学生だと言うのに。

自分は、彼女を強く睨んでこう告げた。


「妊娠させてすまない」
「責任取る。子供を堕ろせ」


彼女から流れる涙は、まるで産みたいと告げているよう。彼女が見つめた光は、綺麗な真っ二つに割れた。

それでもその光は、僕と彼女を縛る


「子育てなんて無理だろう!!」



彼女の妊娠は、螺旋階段が繋がっただけだ。

彼女の涙は、棒の中に入っている、真ん中に線の入った丸の中に沈んだ。

しかし、
彼女の産みたいという気持ちとは、裏腹に。


後日。彼女が涙を流して、親に赤ちゃんを堕ろされたと教えてくれた。

あぁ。堕ろせと言うなんて。

僕はなんて最低なんだろう。



彼女が流した涙は、罪悪感。
自分が流した涙は、自分への嫌悪だった。

3/28/2025, 10:21:55 AM

小さな幸せ



『「幸せは偉大なことだ」100万部突破!!』



そんなニュースを耳にした。その本の中には、

「幸せは、大きいことだ。」
「小さなことでは得られない!」
「毎日の日常は、当たり前」
「その上に進むものが幸せを掴みとる!」

と書かれている。

まさに、自分を傷つけるようなその言い方。


私は、父子家庭で育ち、幼い頃からも家に父親は毎日おらず、家事も何もかもこなしてきた。

月に一度やってくる休みは、必ずどこかに連れて行ってくれて、たらふく食べさせてくれる。

それなのに、私は子供心のままか、豪華なものを父に求めた。


当時の私は、父親が低い給料でやりくりしていたことを知らなかったからだ。

そして、
これが小さなことでも、父は、ずっと一緒に居られる時間が幸せに感じていてくれたことも。



幸せは、大きな成功をしなくては得られない?

世間は、小さな幸せでも、認めてはくれない?

父との時間は幸せだった。


父の墓の前で、ふと考えた。

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