10年後の私から届いた手紙
10年後。私から一件の手紙が来た。
入院中の私に、看護師が手紙を渡してくる。
「……?」
恐る恐る手紙を開ける。
私の字、私の文字の書き方。
「こんにちは、10年前の私。」
「あなたは、死ぬ。教えられないけど」
「10年後にはいないよ」
それだけ書かれていた。
「……」
そしてその翌年。
彼女は病室のベッドで冷たくなっていた。
真っ白の、血色のない顔に布がかけられる。
___
「〇〇ちゃん。余命1年だったんだってね」
「そうそう、親が最期に手紙を残したんだって」
「10年後の彼女から。というお題でね」
「どうやら、余命宣告を隠してたらしくて」
「だから、こう手紙で伝えるみたいな」
死んだ彼女の、写真を見ていた。
病室のベッドで、冷たくなった彼女は親友だ。
私の、唯一の
あの手紙は、親が最期に彼女を笑わせようとした
そして、絶望に叩き落とした。
『あなたは死ぬ』
その一言でね。
待ってて
大好きな人に会うこと。
それはすごく楽しみなこと。
「待ってて」
楽しみにしていた。
急いで電車に乗って、彼氏の所へ向かう。
その時に、一言電話
「_〇〇さんの、彼女さん、ですね」
「__い、ま_病院_で」
「え」
楽しみにしていた。
それは事実である。
でも、怪我をしてまで会いたかった訳じゃない
「___まってて」
楽しみだった思い出。
楽しみじゃないよ、もう。
怪我するのは、嫌いでしょ。
うん私も、嫌い。
処置室の前、倒れそうなほど
心臓がバクバクしていた。
君が隠した鍵
私は、この部屋で監禁されている。毎日朝、一人目を覚ませば、暗い部屋に入ってくる光を見る。
そして両手に湯気の出た朝ごはんを持ってくる男の顔を見ると、途端に苛立ちが湧いて彼に怒鳴る。
「出して。ここから。」
「……出せないよ、家にも帰れないのに」
そう、私は家に帰れない。家の場所を覚えていない。この男の顔も名前も覚えていない。
数年前に起こった、交通事故で恋人だった男の名前も顔も、自分のことすらも忘れ去った。
君が隠しているのは、私が無くした鍵だった。
私が、事故で彼との思い出に蓋をした。
それを彼が私に悟られぬように蓋の鍵を握っている。いつか、いつか記憶の箱が開くと信じて。
「家、家にかえ、りたい。」
同棲している彼に、そんなことを言っても意味が無い。私の頭にある家は存在しない。
帰りたい。と言っても帰る場所もないのだ。
だから君が鍵を隠した。
……私が、
自分の記憶と全てから逃げ出さぬように。
灯火を囲んで
死んだら、みんな灯火を囲うらしい。
私の住んでいる村では、そうゆう風習がある。
死んだ遺体を真ん中に置き、灯火で燃やす。
お坊さんの歌う歌を歌わなかったものは、呪われるという。
「…………」
お坊さんが歌っている中、私は灯火の中にいる、彼の顔を見た。
みんなが歌っているのに、私だけ口を開かずにじっと鋭い視線で睨みつけた。焦げ付いた顔を。
私が殺した彼の顔を。
「すごく、汚い顔ね」
それでいいと思えた。
私の彼氏を奪い去って、母と父を脅かした。それなのに、灯火で焼かれるだけで幸せだと思える。
「灯火で焼かれるだけで、よかったね」
後日、彼を殺したと告白した女が、
灯火に入れられた。
「きっと、呪いね。」
「そうよそうよ!あんなのは呪いよ!」
「いい子だったのにねぇ」
許さない。母と父を脅かして。
二度と許すものか。
地獄へ落としてやる。そして必ず。
私の手で灯火を囲ってやる。
僕と一緒に
「あああああ!」
精神科、閉鎖病棟で叫ぶ彼女の姿。
涙を流しながら叫び、光を失った目。
そんな彼女が、好きなのは変わらない。
でも彼女に対して、安楽死が決まった。
悲痛な選択を取った彼女の親。
僕は、彼女の親を殺した。惨殺した。
何度も何度もナイフで刺し、
血を、内蔵を抉った。
僕もどうせ死ぬ。死刑になって、殺される。
彼女と同じだ。
最期に、彼女の身体を抱きしめた。言葉にならない言葉を話す彼女の肩に、涙が落ちる。
「大丈夫、僕がいるよ」
「一緒に、死のうか。"僕と一緒に”」