蒼白ねっこ

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8/11/2025, 4:58:19 PM

こぼれたアイスクリーム


私の好物はアイスだ。それは昔からずっと。

大好きな彼に出会い、幸せな時を過ごす時ですら、アイスは欠かせない。

そんな私が彼との子を妊娠した時も、幸せだ。
彼が喜んでお腹をさすった時も幸せだ。

彼は喜んで私を可愛がった。
身体を重ねた時ですら、私がアイスを好んで食べるのと同じように。


甘く優しい「バニラ」味。

でも怒った時は、苦くて冷たい「抹茶」味。

時々、ツンデレが発動する「チョコレート」味。

彼の蓋を開ければ、色々な味に出会えた。



でも、私は死んだ。

車に撥ねられたのだ。お腹の子とともに。


彼は泣いた。何味でもない彼。

初めて見た。


味が「こぼれた」アイスクリーム。


アイスは、どん底に落ちたせいか、



「「無味無臭」」だった。

8/10/2025, 4:24:04 PM

やさしさなんて


俺は昔。人を殺した。

妻に虐待されていた、
娘を守るために、やむを得ず妻を殺した。

正しいのかは分からないが、真っ赤に返り血を浴びた自分を、娘が抱きしめた。

「ごめん、すぐに気づいてやれんくて。」

涙が溢れ出て、警察に連れて行かれる時ですら。

娘を見つめていた。


結果、妻がしていた虐待が正義となり、自分は執行猶予で済んだ。


娘と暮らし、何もかもが幸せだと思えた。

それなのに、周りは人はやさしさをくれた。
娘はともかく、近所の人、学校の教師。職場は。

いらない。いらない。人を殺した俺に。

やさしさを受け入れられない。


_やさしさなんて


__最初から、俺が受けるべきものじゃない。



そういう俺に、娘はやさしかった。


「私も。お母さんを殺したお父さんと同罪よ」

「だからやさしさなんて。って言わないで。あの人から守ってくれたのは。」

「紛れもない、ヒーロー(お父さん)でしょう?」

7/27/2025, 4:17:41 PM

オアシス


私は死にたい。今も死にたい。

死にたいのに何故か息をしていた。

そんな私に当然オアシスなどあるわけもない。


つい先日。オアシスを壊されたのだ。


電車がオアシスだった私。山手線に乗り、ガタンゴトンと揺れる電車の音を楽しむのだった。

元々味方のいない人生から逃げるべく、死にたいと思っていて、それでも最後に楽しむことを探した。

それが電車になったわけだ。

しかし運命は残酷だ。

「席を譲れ!こちとら仕事帰りなんだ!」

「やめッ…!」

40か、50くらいの男が

私の腕を掴んで席を立たせた。

その後何度も声を掛けたが、無視される。

男は決まった電車に乗る私に目をつけ、毎度席を立たせるようになった。

怖がり、電車に乗るのをやめた。

心のオアシス。

「感情を伝えることが許されない。」
「なら、心なんていらないね」
「心のオアシス。」
「…あなたの心の在りどころでありますよう?」


「…………なにそれ」


「気持ち悪いね。」


____ガタン_ギィィィ


---

死にたい彼女の言うこと。
死にたくても息をしている。

死にたいから心のオアシスを作ろうと周りが働く


彼女が、生きたいと思えた時に。

心のオアシスになってあげて欲しかった。


でも、それに気づいたのはもう遅かった。

6/22/2025, 11:16:42 PM

どこにも行かないで。



昔から、

友達が親と仲良いという関係が羨ましかった。


自分の母親は病弱で入院していて、父親は毎日病院で付きっきり。僕は孤独だった。

そんな生活に慣れてしまったので、母親のお見舞いに行くことはそうそうなかった。

だから人の家に行く時、母親と子供が仲良くする関係に憧れがあった。


「病院行ってくるから」



だからどこにも行かないで。

僕を見て。

僕もお母さんとお父さんの子供だから。



そして気がついた。

僕が、問題児になれば見てくれるということに。

6/21/2025, 2:00:36 PM

君の背中を追って


僕の寿命が何年あるとお思いで?

公園で暮らす、しっぽの付いた男性の姿を見た。引かれるように彼に話しかけた。

微笑んだ彼の姿。僕はどこか惹かれるが、人間であり、現在24歳自分に対し、彼は1000年生きたと言い出す。私はそんな彼にふっと笑みがこぼれた。


しかしそれは嘘じゃなかった。



「行かないで、やだぁ、」

身体を重ねる関係にまで発展した二人のワルツは、いい加減終わりにしようと神様に壊された。


その翌年。ニュースで告げられた。

_しっぽのついた彼が自殺しました。

__恐らく、関係があった男を追いかけて。




「君の背中を追いかけてきたよ」
「……会いたかった。」

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