蒼白ねっこ

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7/27/2025, 4:17:41 PM

オアシス


私は死にたい。今も死にたい。

死にたいのに何故か息をしていた。

そんな私に当然オアシスなどあるわけもない。


つい先日。オアシスを壊されたのだ。


電車がオアシスだった私。山手線に乗り、ガタンゴトンと揺れる電車の音を楽しむのだった。

元々味方のいない人生から逃げるべく、死にたいと思っていて、それでも最後に楽しむことを探した。

それが電車になったわけだ。

しかし運命は残酷だ。

「席を譲れ!こちとら仕事帰りなんだ!」

「やめッ…!」

40か、50くらいの男が

私の腕を掴んで席を立たせた。

その後何度も声を掛けたが、無視される。

男は決まった電車に乗る私に目をつけ、毎度席を立たせるようになった。

怖がり、電車に乗るのをやめた。

心のオアシス。

「感情を伝えることが許されない。」
「なら、心なんていらないね」
「心のオアシス。」
「…あなたの心の在りどころでありますよう?」


「…………なにそれ」


「気持ち悪いね。」


____ガタン_ギィィィ


---

死にたい彼女の言うこと。
死にたくても息をしている。

死にたいから心のオアシスを作ろうと周りが働く


彼女が、生きたいと思えた時に。

心のオアシスになってあげて欲しかった。


でも、それに気づいたのはもう遅かった。

6/22/2025, 11:16:42 PM

どこにも行かないで。



昔から、

友達が親と仲良いという関係が羨ましかった。


自分の母親は病弱で入院していて、父親は毎日病院で付きっきり。僕は孤独だった。

そんな生活に慣れてしまったので、母親のお見舞いに行くことはそうそうなかった。

だから人の家に行く時、母親と子供が仲良くする関係に憧れがあった。


「病院行ってくるから」



だからどこにも行かないで。

僕を見て。

僕もお母さんとお父さんの子供だから。



そして気がついた。

僕が、問題児になれば見てくれるということに。

6/21/2025, 2:00:36 PM

君の背中を追って


僕の寿命が何年あるとお思いで?

公園で暮らす、しっぽの付いた男性の姿を見た。引かれるように彼に話しかけた。

微笑んだ彼の姿。僕はどこか惹かれるが、人間であり、現在24歳自分に対し、彼は1000年生きたと言い出す。私はそんな彼にふっと笑みがこぼれた。


しかしそれは嘘じゃなかった。



「行かないで、やだぁ、」

身体を重ねる関係にまで発展した二人のワルツは、いい加減終わりにしようと神様に壊された。


その翌年。ニュースで告げられた。

_しっぽのついた彼が自殺しました。

__恐らく、関係があった男を追いかけて。




「君の背中を追いかけてきたよ」
「……会いたかった。」

6/20/2025, 6:02:43 PM

好き、嫌い


「おかあさん、」
養子と実母の差。毎日痛感しているものだった。

「うるさい。黙れ」
「ままー!」
「あらぁ、なぁに?」

今の母親は、実母じゃない人だ。

僕は養子としてこの家に引き取られた。そして母親は、僕を嫌っているため、いつもご飯が出てくる保証などどこにも無い。

対して、母親の実子である弟は何もかも甘やかされ、マイペースでのろまな存在になっていった。

そんな弟が、僕に危害を加えようものなら、じっと耐え忍ぶのみ。抵抗すれば、母親にナイフを向けられ、ご飯は一ヶ月以上出てこない。

母親の好きな弟に従い、母親の嫌いな僕は人形になる。

そうでないと、命の保証などない。

だから僕は嫌いになった。


___この母親も。弟も。




____お兄ちゃんなんか死ね!


弟が僕にナイフを向けて、母親のように殺そうと襲いかかってきたのを、僕は難なく交わし、弟を殺した。その後、悲鳴をあげる母親を殺害した。



「二人のこと嫌い!でも、この死に顔は好き♡」

6/18/2025, 12:45:16 PM




僕と実母の糸は引きちぎられた。

僕は小一のとき、養子縁組に出され、養子としてとある家に入れられた。

それからだった。僕が壊れ始めたのは。


糸で固く結ばれた夫婦の中に、ポツンと入るわけだ。そして妻は妊娠している。僕に二人と繋がった糸は無い。

糸でキツく結び付けた関係になるよりも先に、きっと糸は何らかの方法でちぎれる。

僕を拒むように。


それが女から赤子が生まれたとき。


そう悟ると、全てが崩れ落ちた音がした。





__産んだなら、ちゃんと育ててよ。


_なんで、僕と糸で繋いだのさ。おかあさん。



「朝ごはん、何が食べたい?」
「………」
「……」
義母なんざ要らない。どうせ糸で繋がらない。信頼が深ければ深いほど太く頑丈になる糸。僕に巻かれた糸は全て細いもの。

この二人の糸はとんでもなく太いのに。

そして、朝ごはんの話を持ちかけた女の中にいる子供もだ。


俺はどうせこいつらの子供よりも愛されない。
何が養子縁組だ。「愛してる」とか口を開いておきながら、実際は実子と養子の違いを、まだ幼い子供に分からせるためか。だったらいらない。



こんな、口だけの糸なんて。





「……嫌!嫌ッ!!やめて!この子だけは!」

愛されないなら、

僕は一生愛されないまま進むことになる。

それなら自分で糸を切る選択を取るだろう。

縋るように括った糸に依存するよりも、糸を切ってしまうほうが正直楽だった。


女の膨らんだ腹を殴り、罵倒した。



やがて中にいる赤子を殺した。



そして、
自分はまた施設に送られ、新しい養子となる。



「君が、〇〇くんだね。よろしくな。」

「………」

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