糸
僕と実母の糸は引きちぎられた。
僕は小一のとき、養子縁組に出され、養子としてとある家に入れられた。
それからだった。僕が壊れ始めたのは。
糸で固く結ばれた夫婦の中に、ポツンと入るわけだ。そして妻は妊娠している。僕に二人と繋がった糸は無い。
糸でキツく結び付けた関係になるよりも先に、きっと糸は何らかの方法でちぎれる。
僕を拒むように。
それが女から赤子が生まれたとき。
そう悟ると、全てが崩れ落ちた音がした。
__産んだなら、ちゃんと育ててよ。
_なんで、僕と糸で繋いだのさ。おかあさん。
「朝ごはん、何が食べたい?」
「………」
「……」
義母なんざ要らない。どうせ糸で繋がらない。信頼が深ければ深いほど太く頑丈になる糸。僕に巻かれた糸は全て細いもの。
この二人の糸はとんでもなく太いのに。
そして、朝ごはんの話を持ちかけた女の中にいる子供もだ。
俺はどうせこいつらの子供よりも愛されない。
何が養子縁組だ。「愛してる」とか口を開いておきながら、実際は実子と養子の違いを、まだ幼い子供に分からせるためか。だったらいらない。
こんな、口だけの糸なんて。
「……嫌!嫌ッ!!やめて!この子だけは!」
愛されないなら、
僕は一生愛されないまま進むことになる。
それなら自分で糸を切る選択を取るだろう。
縋るように括った糸に依存するよりも、糸を切ってしまうほうが正直楽だった。
女の膨らんだ腹を殴り、罵倒した。
やがて中にいる赤子を殺した。
そして、
自分はまた施設に送られ、新しい養子となる。
「君が、〇〇くんだね。よろしくな。」
「………」
6/18/2025, 12:45:16 PM