来世は犬になりたい

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春爛漫


もう春なのだと、実感させられる。

木漏れ日の中、桜を綺麗に彩った花が咲き乱れている。その花を見ると、いつも思うことがある。


娘が、桜を見るのが好きだったなと。


娘は、春爛漫の季節に、
桜を見ては、綺麗だと言った。

私の手を掴み、近場の桜並木を見に行った。


しかし、娘は小学校に上がってすぐに、小児がんを発症し、桜を見ることが出来なかった。


「今日は、桜、ゴホッ見に行かないのぉ、?」

「ごめんね、具合が安定してからにしよう、」


そう言って、娘と桜を見に行かない理由を、何度も濁した。そして春爛漫の季節が訪れ、娘は、静かに息を引き取った。


だから私は、春爛漫の季節になると、


娘を思い出す。





娘同様、がんだと診断された私も、


この苦しみを、苦痛を終わりにして。


娘と同じように。春爛漫の日に。


そっと、静かに。

死ねるのかな。

3/27/2025, 4:28:08 PM