来世は犬になりたい

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3/28/2025, 10:21:55 AM

小さな幸せ



『「幸せは偉大なことだ」100万部突破!!』



そんなニュースを耳にした。その本の中には、

「幸せは、大きいことだ。」
「小さなことでは得られない!」
「毎日の日常は、当たり前」
「その上に進むものが幸せを掴みとる!」

と書かれている。

まさに、自分を傷つけるようなその言い方。


私は、父子家庭で育ち、幼い頃からも家に父親は毎日おらず、家事も何もかもこなしてきた。

月に一度やってくる休みは、必ずどこかに連れて行ってくれて、たらふく食べさせてくれる。

それなのに、私は子供心のままか、豪華なものを父に求めた。


当時の私は、父親が低い給料でやりくりしていたことを知らなかったからだ。

そして、
これが小さなことでも、父は、ずっと一緒に居られる時間が幸せに感じていてくれたことも。



幸せは、大きな成功をしなくては得られない?

世間は、小さな幸せでも、認めてはくれない?

父との時間は幸せだった。


父の墓の前で、ふと考えた。

3/27/2025, 4:28:08 PM

春爛漫


もう春なのだと、実感させられる。

木漏れ日の中、桜を綺麗に彩った花が咲き乱れている。その花を見ると、いつも思うことがある。


娘が、桜を見るのが好きだったなと。


娘は、春爛漫の季節に、
桜を見ては、綺麗だと言った。

私の手を掴み、近場の桜並木を見に行った。


しかし、娘は小学校に上がってすぐに、小児がんを発症し、桜を見ることが出来なかった。


「今日は、桜、ゴホッ見に行かないのぉ、?」

「ごめんね、具合が安定してからにしよう、」


そう言って、娘と桜を見に行かない理由を、何度も濁した。そして春爛漫の季節が訪れ、娘は、静かに息を引き取った。


だから私は、春爛漫の季節になると、


娘を思い出す。





娘同様、がんだと診断された私も、


この苦しみを、苦痛を終わりにして。


娘と同じように。春爛漫の日に。


そっと、静かに。

死ねるのかな。

3/26/2025, 3:41:14 PM

七色


みんなそれぞれ、カラーを持つ。

私の所属する劇場は、一人一人カラーを持つ。

そして七色が集まった時、全てが光り輝く。


一人は、とても素敵な快晴。

一人は、綺麗に彩った晴れ。

一人は、中立な立場の曇り。

一人は、心の闇を抱える雨。

一人は、爆発寸前を見た雷。

一人は、崩壊した建物雷雨。

一人は、冷たく生きてる雪。


この七人ではないと、パフォーマンスは完璧では無い。皆が、袋を被り、自らを隠すように。

自分一人では輝くことは許されない。

しかし、一人一人が、自分という表を隠す鎖に縛られれば縛られるほど、変わってゆく。

心の闇を浄化するような、視線を奪う七色に。

どこまでも、光り輝く虹と呼べる何かに。


ラッキーセブンと言うだろう。まさに、劇場はそれを表している。この、七人で。

3/25/2025, 12:56:31 PM

記憶


私の記憶の中に存在する、あの子は誰だろう?

顔を火傷して、醜い姿を見せるなと蔑まれた彼女。それでも、折れずに頑張っていた彼女。面白い話をしてくれて、毎日隣にいた。

対して私は、何もかもから逃げ出し、罵られ、蔑まられたら最後。何も出来ないほど落ち込む。
彼女は、私とは真逆だった。

そんな私の記憶の中に残る彼女は、名前も思い出せない。誰なのかと考え、街中をふらついている。あまり親近感は無かったため、考えるのをやめた途端、一人の女が私に声を掛けた。喜んでいるような、そんな明るい声で。

「久しぶり!〇〇だよね?」

顔に火傷跡がついている女。私はその女を見つめる。親近感はないが、何故か見たことがあるように感じる。しかし、名前が分からない。

「え、お会いしたこと、ありましたっけ、?」


そうだ、そうだった。私の記憶は抹消されている

前に、頭をぶつけた。その時に、自分の名前すら思い出せないようになって、今の親が私の記憶を元に戻してくれた、、?

違う。違う。私の記憶は元には戻っていない。

元の親が、名前と今までのこと。

分からないことを話してくれた。


「思い出した、顔を火傷した、子、」


「そう、そうだよ!」

彼女は、私の前で涙を流して喜んだ。

3/24/2025, 11:15:02 AM

もう二度と


もう二度と、あなたの手を離さない。

そう決断した一人の男は、女を抱きかかえた。

しかし、女はどんなに語りかけても答えてくれることは無い。いつか獄炎の炎に焼かれる日まで。

真っ白に染まった、青白の肌は彼女の存在を否定しているようにも感じ、何よりも、彼女の身体はいつもに増して冷えきっている。


次は、もう二度と離さない。
あなたが産んでくれた子供を、何があろうと守る。

私は、番人になるのだ。



もう二度と、被害を加えさせないために。

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