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7/5/2023, 4:05:26 PM

「 星って綺麗だと思わない ? 」

白の少年は優しく笑った 。

「 ……… 別に 、 興味ねェな 。 」

緑の少年はそう突っぱねた 。

「 えぇ 、 本当に ? そっかぁ …… 」
白の少年は首を傾げる 。 彼ならきっと
賛同してくれるって思ったんだけどなぁ 。

「 聞いたことあるぜ 、 星ってのはただの
ガスの塊なんだろ ? んなモン綺麗でも何でも
ねェじゃねェか 。 」
緑の少年は鼻で笑う 。
本で見たという話を聞いたんだとか 。

「 それでも僕は綺麗だと思うよ 。 だって例え
ガスだったとしてもあんなに輝いてるんだ 。 」
目を閉じ 、 満天の星空を想像する 。

赤い星 、 白い星 。 よく見るとそれ以外にも
色は見えて 、 それを見つけるだけで心が踊る 。

「 僕 、 生まれ変わるならあんなに輝いてる
お星様みたいな存在になりたいなぁ 。 」
そんな風に笑う少年は 、むしろ太陽の様だった 。



部屋から星空を見上げる 。

「 …… 今日はやけに星が綺麗に
見えるじゃねェか 。 」

かつての緑の少年 __ 裏葉木賊は呟いた 。

「 ……… 綺麗 、 か ………… オレもアイツに
感化されちまったみてェだな 。 」
俯き 、 小さく笑った 。

視界の隅に映る窓に 、 1つ輝きを放つ星を見た 。
顔を上げると 、 それはどの星よりも強く
輝いて 、 まるで自分が主役だと言うようだ 。

「 ……… 」
木賊は 、 輝く白い星をみて笑った 。

「 やっぱりお前は星じゃなくて
太陽がお似合いだよ 、 真珠 。 」


- 星空

6/19/2023, 7:43:52 PM

「 思ったより降ってるな ……… 」

店の入口に立ち尽くす2人 。

「 ほんまやね 、 ここまで降るなんて
思っとらんかったわぁ 。 」

2人して屋根の下から 、 降り注ぐ雨水を
ただ呆然と見つめる 。
出かける前は降っていなかったからと安心を
していたのだけれど 、 ここまで降るなんて 。

「 参ったな 、 一応折りたたみ傘は持っては
いるが ……… 1本じゃあどちらかが濡れて
帰らないといけないことになってしまう 。 」

右手に握りしめられた折りたたみ傘を見つめる 。
やはり止むまで待つしか 、 と彼女の口が零す 。

「 ん ? 待たんでもええんちゃうの 、 だって
1本に俺らが入ったらいいんやもん 。 」

彼が指をさした傘を 、 再び見つめた 。

「 …… そうか 、 その手があったのか 。 」

そんな彼女の声を聞き 、 彼は
拍子抜けた様な表情を見せた 。

「 柘榴ちゃんそれ 、 ほんまに言ってるん ?
俺冗談のつもりやったんやけど …… 」
「 だって雨が止むまでここにいるのは迷惑に
なってしまう 、 それに晴も早くアジトに
帰りたいだろう ? 」

彼としては 、 例え迷惑でも止むまでここに
いたって良いと思っていたのだけれど 。
まぁ彼女との相合傘も 、 嫌じゃない 。

「 …… そうやね 、 そしたら風邪引く前に
はよ帰ろか 。 傘俺が持つわ 。 」

何処か楽しそうに表情を綻ばせる彼 、
何処か照れた様子の彼女 。

広げられた傘の中で幸せを滲ませながら
2人は歩いていくのだった 。


- 相合傘

6/12/2023, 3:10:59 PM

「 母さん ? 大っ嫌いだよ ! 」

糸目の彼女は笑う 。

「 だってボクに女の子らしくあることを
ものすごく強要してきたんだ 、 本当にいや
だったんだから ! 」

幼い頃から可愛らしい服を着せられ 、
まるで壊れ物を扱うかのように優しくされ 、
なのに弟のことは適当に扱って 、
彼女を守る道具としか思わなかった母親 。

弟のことを粗雑に扱う母親のことを 、
彼女はどうしても好きになれなかったのだ 。



「 母さん ? ………… 好きだよ 。 」

笑顔を作った彼は言う 。

「 だって僕に生きる意味をくれたんだ 。
優しくされたことは無いけど 、 僕にはそれ
だけで充分だったよ 。 」

幼い頃から姉を守れと強要され 、
頭を撫でることも頬にキスをされることもなく 、
なのに姉のことは人形のように扱って 、
彼の分まで愛を注いだ母親 。

自分は愛されなかったけれど 姉を大切に
する母親を 、 それでも己は愛していたのだ 。


「 青藍のことは大好きだよ ! ……たしかに 、
母さんの遺伝を受け継ぎすぎなところはある
けど 、 でも母さんみたいに縛り付けてこない
から全然青藍の方がマシ ! 」

「 勿論藍のことは大好きだよ 。 僕は弟として
きちんと姉のことを守らなきゃいけないんだ 。
それが僕の生きる意味だから 。 」


- 好き嫌い

6/11/2023, 1:13:37 PM

独特な匂いを放つ季節 。

涙さえ隠してしまえる雨 。

しかし己はそんな雨が好きでは無い 。

大切な友人が帰ってこなかった日だからだ 。

彼の笑顔を彷彿とさせる太陽を隠すからだ 。


「 本当この街ってごちゃごちゃしてるよなぁ 」

ビルの一室 。 椅子に座りながら独り言 。
椅子に座ったまま天を仰ぎ 、 小さなため息 。
この街では 、 表で幸せに暮らす者たちは
知らない裏の世界がある 。

彼はその世界にいたから居なくなった 。
己が誘ったから居なくなった 。

そしてこの街は入り組んでいる 。
裏の人間が死んでも 、 表の人間は気付かない 。
そういうものなのだ 。

「 ……… 待ってろよ 。 敵は俺がとってやる 。 」

今度は深いため息を吐き 、
ゆっくりと立ち上がる 。

親友の敵を探して5年 。 敵討ちを果たすため 、
柑子浅葱は隠された太陽を想い外へ足を向けた 。


- 街

6/10/2023, 4:32:03 PM

私には 、 やりたいことがある 。

死ぬまでに1度だけでも 綺麗な桜並木を見たい 。 今まで見たことの無い景色 。
どんなに綺麗なのかと 、 今までどれだけ
想像に胸を踊らせただろうか 。

勿論メディアでは何度も見た 。
それこそ 、 見飽きると思うほど 。
でも私は全く見飽きなかった 。
むしろ見れば見るほど 、 見たいという
欲は膨れ上がっていくようだった 。


早く 、 綺麗な景色を見られるといいな 。


「 本当に …… 春が大好きな子だったんです 。 」

静かな空間に小さく反響する声 。
すすり泣く声 。
その人物の目の前には 、 白い長方形の箱 。
箱に取り付けてある子窓を開く 。

「 頑張ったね 、 さくら …… 頑張ったね …… 」

少女の母親は 、 周りを薄い桃色の花に囲まれた
小さな女の子に顔を近付ける 。
そしてただ 、 頑張ったねと少女に呼びかけた 。
そんな彼女達の近くには 、 綺麗に咲きほこる
桜の枝が何本も飾られていた 。


お母さん 。 私 、 綺麗な景色は見れなかったけど
これで充分だよ 。 ありがとう 。


- やりたい事

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