独特な匂いを放つ季節 。
涙さえ隠してしまえる雨 。
しかし己はそんな雨が好きでは無い 。
大切な友人が帰ってこなかった日だからだ 。
彼の笑顔を彷彿とさせる太陽を隠すからだ 。
「 本当この街ってごちゃごちゃしてるよなぁ 」
ビルの一室 。 椅子に座りながら独り言 。
椅子に座ったまま天を仰ぎ 、 小さなため息 。
この街では 、 表で幸せに暮らす者たちは
知らない裏の世界がある 。
彼はその世界にいたから居なくなった 。
己が誘ったから居なくなった 。
そしてこの街は入り組んでいる 。
裏の人間が死んでも 、 表の人間は気付かない 。
そういうものなのだ 。
「 ……… 待ってろよ 。 敵は俺がとってやる 。 」
今度は深いため息を吐き 、
ゆっくりと立ち上がる 。
親友の敵を探して5年 。 敵討ちを果たすため 、
柑子浅葱は隠された太陽を想い外へ足を向けた 。
- 街
6/11/2023, 1:13:37 PM