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6/23/2024, 4:48:35 AM

あなたがいたからの続き

日常

シズクが居ない日常が 一ヶ月
二ヶ月 三ヶ月と続いた。
日常なんて 違和感があるのは最初だけで
徐々に慣れるのが普通だ。

だからこれは俺のメンタルの問題で
俺が未練がましく振り切れ無いのが
問題でシズク自身には何も関係なくて....

仕事が終わって帰っても バインダー局の中にあいつの姿は無い
いつもなら....

『皆.... おかえり.... 怪我...して...ない
大....丈夫....』そんな心配そうな声音で
聞いてくるシズクの声が聞こえて
皆の姿を見つけて安心した様なシズクの
笑顔が映って.... 「っ・・・」そこまで
考えてハイネは首を振る。

(駄目だ....俺 何やってんだ シズクに
執着し過ぎだろう....) あいつには
あいつの想いや事情があるんだから 
俺にばっかりシズクの想いを縛りつけるのは間違ってるって分かってるのに....

あいつは常に皆の事を考えてて
その皆の中にちゃんと俺も入ってる
それは....分かってるのに....

それなのに俺は いつだって俺を
一番に考えてくれないかなぁなんて
醜い事を思ってしまう....

ハイネがそんな事を自宅で悶々と考えてると.... 途端に ピンポーンと家の玄関
チャイムが鳴った。
ハイネは立ち上がり急いで玄関のドアを
開けた。もしかしてと期待に胸膨らませる
自分を押し隠して....

すると....「あら はー君どうしたの?
そんなに急いでドアを開けて そんなに
私達に会いたかった!」にっこりと可愛らしく微笑むリンネと無言で佇むハイルの
姿があった。

ハイネは、二人に自分の姿を見られて
恥ずかしくなり「別に....」とぶっきらぼうに答えてしまう。


そして二人を自宅に上げるハイネ
「で....何の用だよ....」と横を向いて
二人に問いかけるハイネ

「あら用が無いと可愛い息子に会いにきちゃ行けないのかしら?」リンネは可愛いらしく小首を傾げて言う。
リンネのそんな言葉にハイネは舌打ちを
鳴らして 「もうガキじゃねぇんだし
一々用も無いのに来るなよ!お袋 親父」

そんなハイネのつれない態度にもリンネと
ハイルはいつもの事の様に嫌な顔一つせず
返す。
「あら 親にとって子供はいつまでも
可愛い者よ! それこそ命を投げ出しても
構わない位にね」そんなリンネの言葉に
無口のハイルも「そうだぞハイネ」と
同意する。

そんないつまでも自分を溺愛する二人に
ハイネはありがたい様な迷惑な様な複雑な
感情を抱き「うぜぇ....」と返す。

「あらはー君も溺愛してる子が居るなら
私達の気持ちも分かるでしょ?」そんな
リンネの悪戯っぽい返しにハイネは
「なっ....」とたじろぎ....
「べっ....別に....溺愛してる奴なんて...
いねェ....」とハイネは膝を抱えて自分の
顔を自分の膝に埋める。

リンネはそんな息子の態度を深く追求せず
「そう....でも もしそんな子が出来たら
はー君 絶対離しちゃ駄目よ
もし離してしまっても取り戻す位の気概を
見せなさい」とリンネは息子に向かって
力強く言う。それに続く様にハイルも
「ハイネ頑張れよ」と声を掛ける。

「っ....」ハイネは二人の言葉に何も言えなくなる。
どうして親って言うのは何も話して
無いのに見ていた様に的確に言葉を向けるんだ。

そうしてリンネとハイルは帰って行った。

二人を見送るとハイネは何かを決意した
様に立ち上がる。

そして相棒の鎌を手の中に出現させると
自宅の玄関ドアを開けて
外に飛び出した。

そうしてハイネは足取りを力強くさせ
バインダー局に向かうのだった。

6/21/2024, 10:12:40 PM

好きな色

「ねぇ 君の好きな色ってなあに?」
唐突に、横に居る君が僕に聞いてきた。
僕は、作業をしながらだったので彼女の顔を見ずに前を向いて考える。

好きな色? 好きな色?
まずは、赤 青 黄色の三原色について
考える。
赤 情熱的な夕日の空には、赤みがかった
オレンジが似合う

瑞瑞しいトマトには、真っ赤な濃い赤
光の反射と雨の雫が赤に映える

青 爽やかな澄み切った青空 そこに少し
白を入れると水色の快晴の青空が心を
洗い流してくれる。

ちょっとした影の陰影や 光の角度の当たり具合で青がアクセントになったりする。

黄色 太陽を見つめる向日葵の色
酸味の果汁を持ったレモンの色

緑 青草の匂いをくれる新緑の色

黒 君の艶やかな長い黒髪を表現する色

僕は前を向いて好きな色を決めかねていた。

だって僕は、今 現在進行形で筆を動かして キャンバスに色を塗って
パレットに色を乗せて色を作って

美術部の課題である絵を完成させているのだから そんな、僕に好きな色と言う質問は難問だった。

「どの色にもお世話になっている僕には
好きな色なんて選べないよ
だってどの色も僕にとっては必要で
大事な物なんだから 無駄な色なんて
一つも無い」と僕は、筆を動かして答える
すると彼女がそんな僕を見て笑いながら
こう言った。

「そう言う時は、こう答えれば良いよ!
僕の好きな色は虹色ですってね
そうすれば少なくとも7色は最初から君の
好きな色だよ!」と彼女はにっこり笑って
僕に言う。

かなりの暴論だがそう言った彼女の笑顔が
可愛いかったので この課題が終わったら
彼女に絵のモデルを頼んでみようかなあと僕は思った。

6/21/2024, 5:57:42 AM

未来の続き

あなたがいたから

初めてチームを紹介された時シズクファーラムにとっては、不安な時間の一つでも
あった。

シズクが紹介されたのは赤髪のおかっぱの少女と金髪の柔和な笑みを浮かべる少年と
目つきが鋭い少年三人であった。

赤髪の少女は、活発そうな印象でシズクの事を常に気に掛けてくれる人だった。
金髪の少年は常に笑顔を絶やさず優しい言葉を掛けてくれた。

そうミーナとナイトは、兄弟姉妹が居ない
シズクにとってお兄さんお姉さんみたいな
存在だった。
人見知りが激しいシズクにも話しやすい
雰囲気を作ってくれた。

マリアやハロルドはシズクにとっては
安心できる人達だった
シズクが失敗しても急かす事も怒る事もせず暖かく見守ってくれた。

しかし他の人とは上手く喋れる様になった
シズクだが一人だけいつまでたっても
喋れない少年が居た。

ハイネクラウンと言う少年にシズクは苦手意識を持っていた。
口を開こうとすると強く睨まれシズクが
勇気を出して喋っても無反応でシズクは
たびたび不安になっていた。


そうしてだんだん日が経つにつれて
仲良くなるどころか髪の毛を引っ張られたり頬を抓られたり頭に虫を乗っけられたり
意地悪ばかりされた。
シズクは、抵抗したり怒ったりするのが
苦手だった。

シズクが怒ってもあまり怖いと思われないせいでもあるがシズクは大きな声で怒るのもあまり得意では無いしかしハイネと言う
少年の意地悪にとうとう耐えきれなくなり
シズクは泣きながらその少年に向かって
嫌いと言ってしまった。
気付いた時には、もう遅くその少年にまた
睨まれて怒られるんじゃないかとシズクは怖くなり目を瞑り見ない様にしていた。

しかしシズクの予想に反してその少年は
楽しそうに笑っていた。シズクは涙目になってその少年を見つめていた。
怒られ無いのは良かったがシズクが泣いているのを見て笑うと言う事は自分はこの
少年に嫌われて居るんだと感じた。

仲良くなりたいけど..... 自分を嫌っている人に話し掛けるのは躊躇われた。

しかしシズクの言う事に無反応で目も合わせてくれない事が多いが意地悪はしてくるので.... 痛いけど....何故かその少年は
凄く楽しそうだった。

痛いし怖いけど少年が楽しそうに笑っているのでこれは少年なりのスキンシップなのだとシズクは、思い始める。
私しか意地悪をして来ないのはきっと
私がびくびくおどおどしているから
それが少年の癪に障る様だった。
だからシズクは、この少年に意地悪をされたらはっきり嫌だと言おうと決めた。
するとこの少年は凄く楽しそうに笑うのだ

きっとシズクがはっきりと嫌な事が嫌と
言える様になってくれたのが嬉しいのだろうとシズクなりにそう解釈した。

それがきっかけかは分からないがシズクは
他の人に怒るのは、未だに苦手だがハイネには、少し怒れる様になった。
しかしシズクが怒ってもあまり怖くならないのでハイネに笑われてばかりいる。

ハイネが居なかったら私は未だに怒るのが苦手のままだっただろう。

一人でもちゃんと自分の気持ちをはっきり言える人が居るのはシズクにとっては
嬉しい事だった。

みんな元気かなあ.... バインダー局を辞めてみんなと顔を合わす機会があまり無くなった。 それでも学校でみんなと会えると
思っていたのに....

「学校もバインダーの仕事に関わらない
学校に行こうその方が平和で安全だからね」とルークさんにそう言われ私はまた
憶病風に吹かれて自分の言葉を飲み込んでしまった。

今度みんなに手紙を出そう それだけだったらきっとルークさんも許してくれるかも
しれない.....。みんなの顔を思い浮かべながらシズクは手紙の文面を考える。

みんなの一人一人の顔が思い浮かぶ
最後にハイネの顔が思い浮かぶ。

(ハイネに....会いたいなぁ....)シズクは自分で何故そう思ったのか分からないまま
無意識にそう思ったのだった。

6/20/2024, 2:50:26 AM

相合傘

「ねぇ 僕と一緒に傘に入る意味が分からないのだけれど....」彼は、不思議そうに
私を見る。
「せめて君の方に傘を傾けてよ君が濡れちゃうよ!」そう言う彼の言葉に私は
躊躇して傘をまだ君の方に傾けていた。
彼は、にっこり透明に笑って
「傘を君の方に向けて」と私に呼びかける。

私は、それでも傘を自分の方に傾けようと
しない 彼は、困った様に笑って
「僕は君の傘に触れ無いんだ だから
お願いだ 言う事を聞いてくれ」
彼は、懇願する様に私に頼む
私は根負けして とうとう自分の方に
傘を傾ける。
私は、何だか泣きたくなって唇をかみしめた。

(意味はあるよ....だって私はずっと貴方の事が好きだったんだから....)
そんな事今の彼に言っても困らせるだけ
分かってる....
貴方と触れ合える時に気持ちを伝えて
いたら私達の関係は、何か変わって
いたのかなあ....
でもそんな事になったらお互い辛いだけだ
透明で透き通っている貴方の身体を見る
雨で煙って貴方の姿が目を凝らさないと
良く見えない。

貴方の姿は私にしか見えない
だから今の私は、一人で傘を差して
独り言を言っている痛い人に周りの人には
見えるだろう。

でも 私は貴方の姿が私にしか見えなくて
ほっとしている。
もし他の人に見えていたら....
今の相合傘をしている姿が他の人に
目撃されていたら あること無い事
噂されて私達は、気まずくなっていただろう そうなっていたら たとえ付き合って無い事が事実でも貴方が本当の事を言ったとしても 貴方の口から否定の言葉を
聞いたなら 私はその場で涙を流して
いただろう そうして益々貴方を困らせていただろう.....

霊感なんて全然無い私だけど.....
今の透明の身体の彼を私だけが見れる事に
私は、神様に感謝した。
もう決して彼とは触れ合え無いけど
だから決してこの気持ちも言わないけれど
私は、心の中でこの雨に感謝して
彼に気付かれ無い様に 雨に濡れない彼の方に自分の傘をそっとまた傾けたのだった。

6/18/2024, 12:01:33 PM

風邪の続き

落下

ふわりと体が浮き そうして急激に
落下スピードが上がり体が急降下して
行く。

このままでは、俺の体は地面に叩きつけられ俺は、死ぬだろう....

俺は、落下していく体と一緒に上に昇って行く景色を見ながら 俺に留めを刺さんとする人影を視界に捉えた。

嗚呼 死ぬのか.... 不思議と恐怖は
湧かなかった。

俺に剣を振りかざそうとする少女の笑った
顔が視界に過るまでは その瞬間俺は
剣の柄を握っていた。
俺はその瞬間 諦めていた気持ちが上昇し
気が付いたら剣を抜いていた。
完全に落下の態勢だった俺の体が少女の
剣と交わった瞬間 姿勢を垂直に保ち
金属のぶつかる音と音が俺の鼓膜を叩き
俺を持ち上げる。

生存本能とは、違う別の何かが俺を
突き上げる 楽しそうにダンスを踊る様に
まるで剣の舞の演舞かの様に俺の剣とかち合わせて戦う少女に俺は、見惚れた。

そうして俺は心の底で、はっきり思った。
もっと もっと戦いたい この少女と
命のやり取りをしたいと ひりつく様な
ぞくぞくと麻痺した感覚に俺は興奮し
高揚していた。

(ああ....良い もっと もっと俺を見ろ 
俺の命を奪って見ろ お前の命は俺が貰う
誰にも渡さない....)




そんな懐かしい高揚感を感じた夢を見て
俺の目覚めは、覚醒した。
窓から差し込む光に目を眇め手で目元を
押さえ光を覆う。

横を向くとさらさらした感触があった。
「先輩 今日 お寝坊~ 私 今日早起き
したよ~えっへん!!」少女は偉そうに
胸を張り陽だまりみたいな笑顔を俺に
向ける。

いつもならそんな少女の態度を完全無視するのだが.... 今日は久しぶりの休暇で
偶然にも二人っきりだった事もあり俺の
箍も外れてしまった。
それを夢の余韻のせいにして俺はニフジを
後ろから抱きしめた。

ニフジは、俺の珍しい態度に目を丸くさせ
俺を見る。
「先輩どうしたのぉ~寝ぼけてるの?
もう!だから夜更かししちゃ駄目って言ったのに~」見当違いの反応をするニフジ
俺は、そんなニフジの言葉に
「うるさい!」と返しニフジの首筋に唇を
落とす。
途端にニフジが「きゃははっ~先輩擽ったい!」と子供みたいな反応を示す。
(ガキ!ムードもへったくれも無ェ....)
「先輩 今日 変だね!可笑しい!」
「黙ってろ!」と俺はニフジの唇を自分の
唇で塞ぐ。

「っ・・・・んっ・・・・」俺は舌を絡ませニフジの吐息すらも奪う。
「先輩 苦しいよ~ 苦しいからそれ嫌だ」ニフジが頬を膨らませて俺に抗議する。
そう こいつはこんな行為の意味も良く
分かってはいない....俺のこの気まぐれの
戯れもこいつの中では、唯の悪戯
動物がじゃれ合って遊ぶ程度の意味しか無い
「お前を苦しませる為にやってんだよ」と
俺は、ニフジに向かってニヤリと笑う
ニフジは、そんな俺の表情を悔しそうに
眺め俺の首を絞めて来た。
俺は自分の手を入れて呼吸を確保する。
キスのお返しが首絞めってニフジしか
思い付かないだろう....
ニフジはまだ俺を睨んでいた。
俺は、その顔を見て口角を上げた
(良いぜ....今日は休みだし....とことん
付き合ってやるよ!)

こうして俺は猫のじゃれつきに一日中
付き合ってやったのだった。

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