相合傘
「ねぇ 僕と一緒に傘に入る意味が分からないのだけれど....」彼は、不思議そうに
私を見る。
「せめて君の方に傘を傾けてよ君が濡れちゃうよ!」そう言う彼の言葉に私は
躊躇して傘をまだ君の方に傾けていた。
彼は、にっこり透明に笑って
「傘を君の方に向けて」と私に呼びかける。
私は、それでも傘を自分の方に傾けようと
しない 彼は、困った様に笑って
「僕は君の傘に触れ無いんだ だから
お願いだ 言う事を聞いてくれ」
彼は、懇願する様に私に頼む
私は根負けして とうとう自分の方に
傘を傾ける。
私は、何だか泣きたくなって唇をかみしめた。
(意味はあるよ....だって私はずっと貴方の事が好きだったんだから....)
そんな事今の彼に言っても困らせるだけ
分かってる....
貴方と触れ合える時に気持ちを伝えて
いたら私達の関係は、何か変わって
いたのかなあ....
でもそんな事になったらお互い辛いだけだ
透明で透き通っている貴方の身体を見る
雨で煙って貴方の姿が目を凝らさないと
良く見えない。
貴方の姿は私にしか見えない
だから今の私は、一人で傘を差して
独り言を言っている痛い人に周りの人には
見えるだろう。
でも 私は貴方の姿が私にしか見えなくて
ほっとしている。
もし他の人に見えていたら....
今の相合傘をしている姿が他の人に
目撃されていたら あること無い事
噂されて私達は、気まずくなっていただろう そうなっていたら たとえ付き合って無い事が事実でも貴方が本当の事を言ったとしても 貴方の口から否定の言葉を
聞いたなら 私はその場で涙を流して
いただろう そうして益々貴方を困らせていただろう.....
霊感なんて全然無い私だけど.....
今の透明の身体の彼を私だけが見れる事に
私は、神様に感謝した。
もう決して彼とは触れ合え無いけど
だから決してこの気持ちも言わないけれど
私は、心の中でこの雨に感謝して
彼に気付かれ無い様に 雨に濡れない彼の方に自分の傘をそっとまた傾けたのだった。
6/20/2024, 2:50:26 AM