Saco

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11/14/2023, 11:41:14 AM

秋風

私の 名前は、帽子
鍔(つば)が広いのが自慢なの!
白い滑らかな光沢が 丸みを帯びて
帽子の世界では、なかなかの 美人の
部類に 入るのよ!
綺麗な ピンクのリボンが私の
チャームポイント
私の 持ち主は、小さな女の子
名前は、美衣(みい)ちゃん
私は 彼女の 頭を彩り 守るのが、
仕事なの!



でも、ある日 悪戯な 秋風が
私を ひゅうっと飛ばして行ってしまったの
私は、抵抗できないわ
何たって帽子なんですもの
流れに 身を任せるしかないの


ひゅう ひゅうっと 逆さに
煽られ 地面に付くまで
着の身着のまま

やっと地面に 着いて 美衣ちゃんに
拾って貰えた時

私の中に赤い紅葉が 一枚入っていたの。
美衣ちゃんは、顔を綻ばせて、
嬉しそうに 摘まんで 駆けていったわ!

ふふっ私も美衣ちゃんに 思わぬ
プレゼントが出来て嬉しいわ!
秋風さん ありがとう!

11/13/2023, 11:51:05 AM

また会いましょう
新人刑事 佐藤令子(さとう.れいこ)は、
憤っていた。

「あ~あ もうっ!またやられた!!」
ヒールの高い靴で、地団駄を踏む

その原因は、今世間を賑わせている
大泥棒 怪盗Mの存在だった。

今時怪盗なんて、そんな 非現実的な者
誰が信じるかと思ったが...

世間は、面白い物に目が無いと
改めて痛感させられた。

そして、そんなふざけた 怪盗を
警察は、未だに 捕まえられないでいる
のだ。

そして、その 怪盗が逃げた跡には、
必ず 「又会いましょう」という
メッセージカードが残されていた。
 

「絶対 こっちを おちょくってるとしか
思えない ムカつく~」

「先輩 愚痴は、その辺にして
そろそろ自分の部署に 戻ったらどうですか?」

令子の怒りを鎮める様に 科学捜査課の
水無月(みなづき)は、諫める。

「うっさい あんたは、 現場に出てないから 私の気持ちが分からないのよ!」

そう言って 令子は、怒りを 携えながら
科学室を出て行った。

扉が、閉じる音を 聞きながら、
水無月は、ため息を 吐いた。


「はぁ~ 先輩だけだよな~あんなに
いきり立って捜査してんの~」

やれやれと、肩を竦めながら、もう一度
ため息を 吐くと 水無月は
口角を上げた。

「ま、だから 面白いんだけど!」

彼の名前は、水無月 真名人(まなと)
科学捜査課の捜査員である。

ごくごく普通の彼ではあるが・・・
彼のもう一つの仕事を知る者は、
この警察署内には、一人も居ない。

11/12/2023, 12:05:14 PM

スリル
(あ~ぁ 何で 私は、此処にいるんだろう....)

あの時 見栄を張らなければ 私の体は、
今地面に 付いていると言うのに....

帰りたい 帰りたい 今すぐ 10分前の
私を殴り飛ばして 無かった事にしたい

発車を 告げる アナウンスが流れる。
ゆっくりと 進んで行く 上り坂を上がって行き 心の準備をする様に
心臓が 早鐘を打つ 下り坂に差し掛かり
スピードが 上がって行く

もうダメだ...
思った通り スピードが 加速して行く
レールの上を 急上昇 急降下して行く

体が浮き上がり 振り落とされる
感覚が 強くなる。
重力のGが掛かる。

私の顔は、青くなり 涙目になる。
そして、しばらくして 地獄の
日々は、終わった。



「おい 大丈夫か?」
私の手を包む 大きな手がある
私は、震えながら自分の横を見る。

「だから やめとけって言ったんだ
お前 昔から 絶叫系苦手だろ!」

「だって 私だけ 下で待ってるの
淋しいじゃん!」

涙ながらに 昔馴染みの 幼馴染みに
訴える。
私の 弱味を唯一知る幼馴染みは、
こうなる事も読んでいたらしい...

足をガクガクさせて フラフラになって
ジェットコースターから 降りた私を
幼馴染みは、呆れた ため息を吐きながら
見ていた。

他の友逹も 待たせている為 止まってる
訳には、行かない
私が歩き出そうとした時
幼馴染みが 私の腕をグイっと引っ張る。


「悪い 俺ら 抜けるわ!」
「え! ちょ ちょっとま、...」

私の言葉を遮る様に 幼馴染みは、
どんどん先に行ってしまう...

抗議しようと思ったが...
ふと見ると 幼馴染みの頬が ほんのりと
赤かった。

それを見ると私は、何も言え無くなり...


二人で 手を繋いで 家路へと帰った。



11/12/2023, 6:55:39 AM

飛べない翼
「君は、まだそこに居るのかい?」
羽を、揺らしながら 仲間の鳥は、言った

僕は、鳥籠の中から 嘴を上に向けて言う
仲間の鳥を見上げた。



「もう 怪我は 治ってるんじゃないのかい? いつまで、飛べないフリをして、
人間の側に居るつもりだい?」

僕は、聞こえないかの様に ぷいっと
横を向く

「放っといてくれ」

その 不貞腐れた 僕の様子を
見て 仲間の鳥は、馬鹿にした様に笑う

「よっぽど 飼われるのが 気に入った
みたいだね!」

そう言って 仲間の鳥は 羽を旋回
させて 僕の前から 飛び立って行った。


そう、本当は、僕だって 分かってる
もう僕の羽の怪我は、すっかり
治って居る事を....
あの大空にいつでも 戻れると言う事を...

だけど 僕が 巣から落ちた あの日

痛くて 寒くて 悲しくて
もう二度と空には、戻れないと
死を覚悟した時 君の温かい手が
僕を救ってくれたんだ。

「大丈夫?」優しい 光を注いで
くれた 君の言葉

そんな君の側にずっと居たいと
思うのは、当たり前で 普通の事だ。


馬鹿にされる事じゃない
僕は、空を飛ぶ事よりも大切な事を
見つけたんだ

だから.... 

「ただいま!」

君の笑顔を迎える為
僕は、甲高く
「ピィ」と鳴いた。

11/11/2023, 5:57:08 AM

ススキ
ぴょんぴょんと 白兎が、薄野原を
駆けていく
セピア色の空に 黄金色の薄野原は
よく映えていた。

白兎が、もう一匹の体が大きな兎に 
話し掛ける。
「ねぇ ねぇ 父ちゃん お月様には、
人間が、居るって 本当?」

すると、父親兎は、小首を傾げて
「それは、正確には、人間が居るんじゃ無くて 月の影が 人間の形に見えるだけだよ!」

子兎は、赤味がかって来た空を見上げる
そして、「ふ~ん」と 口の中で呟く
今夜は、満月 満月の日には、
月の中に 人間の姿が、見えるという

子兎は、人間の姿を他の 下界に降りた
兎達から聞いていたが、自分自身で
関わった事は、一度も無い。

しかも人間には、兎達の言葉は、
分からないという
そんな 意思疎通が、出来ない 生き物に
近づくのは、子兎は、怖くて 怖くてたまらず 人間には、興味はあるが
会いに行く勇気は、無かった。

しかし 人間に 会いに行った
兎達は、頻りに 言うのだ

「人間は、愚かで 浅ましいし 残酷だ
一方で 優しく 儚げで 脆い」

その話を聞いた子兎は、首を傾げるばかり
だった。

人間は、やっぱり 怖いの?
それとも優しいの?

子兎は、疑問符を 浮かべるばかりだった。

だから、子兎は、月を見上げる。
まだ 見ぬ 人間に 想いを馳せて.....

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