Saco

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11/10/2023, 3:16:02 AM

脳裏
「私の事は、忘れてしまっていいから」
そう言った 君の寂しそうな笑顔を
僕は、頭の中で何回も何回も再生する。

意識が揺蕩っている直前 明かりが
パッと付く
見ると映画の エンドロールが流れていた。

「お兄ちゃん 行くよ!」

妹に そう声を掛けられ
僕は、席を立つ


「この映画アンコール上映が何回も
されてるよね
お兄ちゃん上映されるたび何回も
見に行くんだもん!
だから、私も興味出て来て
今日一緒に付いて来たけど...
すっごく良かった。」

妹が隣で、燥いでいる。
パンフレットを見ながら僕の方を向く
「この 女優さん お兄ちゃんと
同い年だね!」

「うん...」僕は、静かな声で頷いた。

いつか 君が言っていた
忘れてしまっていいからを
僕は、守りたくなくて、
君の笑顔を脳裏に焼き付けたくて...

僕は、君に性懲りも無く会いに行く
映画館のタイトルポスターを
見ながら また同じ風に席に
座り 君が再生されるのを眺め続けている。


11/9/2023, 2:05:04 AM

「グリコやろう!」と、突然妹は言い出した。
長い石畳の向こう神社の石段が続いていた。
俺は、最初なにを罰当たりな事を...と
思っていた。
なにもこんな神聖な場所でやる事じゃないだろう...と
しかし周りを見渡すと 昼間なのに
人気がなかった。

夏の日差しに外出するのが億劫なのか...
たまたまお盆で、帰省ラッシュなのか...
妹を見るとにこにこと、腕を振り上げて
いた。
完全に じゃんけんをする態勢に
入っていた。

俺は、ため息を吐いて
「嫌だよ!帰って勉強したいんだから」
と 踵を返そうとする。
俺は、今年受験生だった まだ焦る年ではないし 成績も平均点以上取れていると
教師からは、言われていたが
念には、念を入れたかった
少しの気の緩みが、何に直結するか
分からない
一分一秒も無駄には、出来なかった。

しかし 妹も諦めない
「一回だけ 一回だけだから お願い」と
必死に 懇願するので 俺は、
根負けして、一回勝負を受けた。


結果は、・・・ 俺の負けだった。
妹は、両手を広げて 大喜びだったが
俺は、軽くショックを受けた。
手を抜いたつもりは、無いのに
自分は、意外とじゃんけんが弱かったのだと気付く

ふと俺は、思う

負けるってこんな感覚だっただろうか...
最近の 俺は、他の奴らに引き離されまいと 上ばかり見て、他の奴らが上に居ると
イライラして...

ふいに俺の下から声が聞こえた。
「お兄ちゃん...ごめんね...」
見るとさっきまであんなに大喜びしていた
妹が、顔を俯けて落ち込んでいた。


「はぁ~ 何謝ってんのお前」と
俺は、訳も分からず妹を見下ろす。

「だって私の我が儘のせいでお兄ちゃんの
勉強の邪魔しちゃって~」と
今更に なって 罪悪感が込み上げて
来たのか 妹がそんなことを言う。

俺は、苦笑して、妹の頭をポンポンと
優しく撫でる。

「こんなちょっとの時間が邪魔になるわけないだろう 俺の成績舐めるなよ!
むしろ...良い息抜きになった。
ありがとな!」

妹は 何でお礼を言われたか分からないらしく きょとんと 俺を見上げた。

俺は、その顔を見てまた 笑ってしまった。

こうして 俺達 二人は、家路へと 
歩きはじめた。




     意味のないこと

11/8/2023, 2:53:04 AM

あなたとわたし
昔から、あなたとわたしは、正反対
だったね!

あなたは、宿題を最初に全部終わらせて
海や山のレジャーの計画を立てるタイプ

わたしは、のんびり自由研究や
図画工作 読書感想文など自分の興味を
掻き立てるものを遊び感覚で、終わらせて
苦手な数式や元素記号 小難しい古語の
プリントなどは、後回しにするタイプ


あなたは、ショートケーキの苺を必ず
最後まで取っておくよね!
ふわふわのスポンジと甘い生クリームを
一緒に食べて口の中を溶けさせてから
甘酸っぱい苺で口直し


わたしは、爽やかな苺の酸味の余韻を
口の中に残してから、甘い生クリームを
頬張る。
そうすると口の中にショートケーキがまだ
丸ごと残っている感じがするから

あなたの好きな色は、ブルー
わたしの好きな色は、ピンク


あなたは、物事を はっきりと口に出して
言うよね?

私は、おどおどして、人の顔色ばかり
窺ってしまう...


こんなに正反対なのにどうして私達
一緒にいるのかな?

でも...不思議なんだけどね!!
私...あなたになら、自分の気持ちを
ちゃんと言えるんだ。

あなたは、私は、私のままでいいって言ってくれたから だから私はあなたの隣に
居たいって思えたの!!

あなたのおかげだよ!!
ありがとう!   大好きだよ!!

11/6/2023, 12:13:05 PM

「さぁ 起きて君の出番だよ!」
眠い目を擦り 欠伸をしながら
小さな体が立ち上がる。


大きな蓮の葉っぱを杖代わりに
最初は、野菜や植物達に
恵みの雨を

次に池や、湖に水を溜めて
動物達に 憩いの場所を

最後は、雨上がりに 反射する
虹の光を
傘を閉じて、空を見上げる
  人間達に!!


   優しい雨の妖精の贈り物

     柔らかい雨

11/6/2023, 1:21:06 AM

一筋の光
何処までも、何処までも 続く暗闇
どくん、どくんと脈を打つ音
その音が何かを知らせる様に呼ぶ

僕... 私 誰を呼んでいるの?

透明な薄い膜の中で、水に揺蕩う
その心地良さに、半分開いていた
瞳がまた 瞼で閉じる。
水の揺らめきが また眠りを誘う

すると... どくん どくんと また脈を
打つ音が聞こえる。
今度は、強く はっきりと
その音に、敏感に、反応し また
目を開ける。

すると 黒一色の世界に 一筋の光が差す
その光に 抗おうなんて 考えは、
微塵も無かった。
その光を見ようと目を凝らす。

凝らせば 凝らす程 視界が広がり
吸い込まれた。


次に目を開けた時 白い空間が
目の前にあった。

そのあまりに、衝撃的な光に
目が潰れると想い
体がびくんと跳ね
口から思いも寄らない 音が鳴った。


「おめでとうございます 元気な
男の子ですよ!」

その音が産声だと僕が気付くのは、
その優しい声を聞いてからだった。




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