Saco

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「グリコやろう!」と、突然妹は言い出した。
長い石畳の向こう神社の石段が続いていた。
俺は、最初なにを罰当たりな事を...と
思っていた。
なにもこんな神聖な場所でやる事じゃないだろう...と
しかし周りを見渡すと 昼間なのに
人気がなかった。

夏の日差しに外出するのが億劫なのか...
たまたまお盆で、帰省ラッシュなのか...
妹を見るとにこにこと、腕を振り上げて
いた。
完全に じゃんけんをする態勢に
入っていた。

俺は、ため息を吐いて
「嫌だよ!帰って勉強したいんだから」
と 踵を返そうとする。
俺は、今年受験生だった まだ焦る年ではないし 成績も平均点以上取れていると
教師からは、言われていたが
念には、念を入れたかった
少しの気の緩みが、何に直結するか
分からない
一分一秒も無駄には、出来なかった。

しかし 妹も諦めない
「一回だけ 一回だけだから お願い」と
必死に 懇願するので 俺は、
根負けして、一回勝負を受けた。


結果は、・・・ 俺の負けだった。
妹は、両手を広げて 大喜びだったが
俺は、軽くショックを受けた。
手を抜いたつもりは、無いのに
自分は、意外とじゃんけんが弱かったのだと気付く

ふと俺は、思う

負けるってこんな感覚だっただろうか...
最近の 俺は、他の奴らに引き離されまいと 上ばかり見て、他の奴らが上に居ると
イライラして...

ふいに俺の下から声が聞こえた。
「お兄ちゃん...ごめんね...」
見るとさっきまであんなに大喜びしていた
妹が、顔を俯けて落ち込んでいた。


「はぁ~ 何謝ってんのお前」と
俺は、訳も分からず妹を見下ろす。

「だって私の我が儘のせいでお兄ちゃんの
勉強の邪魔しちゃって~」と
今更に なって 罪悪感が込み上げて
来たのか 妹がそんなことを言う。

俺は、苦笑して、妹の頭をポンポンと
優しく撫でる。

「こんなちょっとの時間が邪魔になるわけないだろう 俺の成績舐めるなよ!
むしろ...良い息抜きになった。
ありがとな!」

妹は 何でお礼を言われたか分からないらしく きょとんと 俺を見上げた。

俺は、その顔を見てまた 笑ってしまった。

こうして 俺達 二人は、家路へと 
歩きはじめた。




     意味のないこと

11/9/2023, 2:05:04 AM