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飛べない翼
「君は、まだそこに居るのかい?」
羽を、揺らしながら 仲間の鳥は、言った

僕は、鳥籠の中から 嘴を上に向けて言う
仲間の鳥を見上げた。



「もう 怪我は 治ってるんじゃないのかい? いつまで、飛べないフリをして、
人間の側に居るつもりだい?」

僕は、聞こえないかの様に ぷいっと
横を向く

「放っといてくれ」

その 不貞腐れた 僕の様子を
見て 仲間の鳥は、馬鹿にした様に笑う

「よっぽど 飼われるのが 気に入った
みたいだね!」

そう言って 仲間の鳥は 羽を旋回
させて 僕の前から 飛び立って行った。


そう、本当は、僕だって 分かってる
もう僕の羽の怪我は、すっかり
治って居る事を....
あの大空にいつでも 戻れると言う事を...

だけど 僕が 巣から落ちた あの日

痛くて 寒くて 悲しくて
もう二度と空には、戻れないと
死を覚悟した時 君の温かい手が
僕を救ってくれたんだ。

「大丈夫?」優しい 光を注いで
くれた 君の言葉

そんな君の側にずっと居たいと
思うのは、当たり前で 普通の事だ。


馬鹿にされる事じゃない
僕は、空を飛ぶ事よりも大切な事を
見つけたんだ

だから.... 

「ただいま!」

君の笑顔を迎える為
僕は、甲高く
「ピィ」と鳴いた。

11/12/2023, 6:55:39 AM