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7/11/2024, 11:44:11 AM

『私の当たり前』

夜。ビルの光がよりいっそう輝き始める頃。学校が終わった私は、大きめのパーカーを着た。私はある町に向かった。東京にあるその町で紅い文字がより一層輝きを増して見える。今日も欲望と理性が入り混じった匂いがした。私がやることは単純。ただひたすら歩くだけである。ここ数年同じことをしているので知りあいも増えてきた。適当に話しながら街をぶらぶらしていると、ネクタイの紐が緩んだ男性が声をかけてきた。
「毎度。何にする?」
[バツ、20g頂戴。]
私は金を貰いラムネのようなカラフルなものを渡した。
今日も私は手を汚してしまった。黒く染った夜のように。それが、私の当たり前なのだ。

7/6/2024, 11:54:43 AM

『友達の思い出』

今を生きている過半数の人は、人生を友達との思い出で
彩らせてきたのだろう。私も、同様である。ただ、人生の中でたった2人「私の普通」からはみ出た友達がいた。
確か高校の頃だったと思う。

1人はビデオカメラと携帯(まだガラケーだった)をずっと持っていた。目立たないけどすごく綺麗な顔立ちだった。携帯を持ってると言っても、写真を撮ったり、動画を撮ったりすることしか使わなくて。なんか、不思議な雰囲気を持つ子だった。
もう1人はすごく明るくて自由だった。補習がある日でも先生の前で堂々と遊び行こー!なんて笑いながら言ってくるような子だった。周りにはバカにしか見えなかったかもしれないが、私には強かに見えた。
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“ずっと続けばいいのになー。”
“学校でバカみたい笑って、放課後プリクラ行ってつけま貰って。そのまま誰かの家行ってメイクして。1日全部楽しすぎて、卒業が遠く感じるくらい。”
ビデオカメラを持ったあの子が急にこんなことを言った。急な事だったから2人で驚いた。

「急にどうした?ウチらはずーっと一緒だよ。」
私は不思議がりながら反論した。
[プリクラにも書いたじゃん。ズッ友って。]
プリクラを見せたその子はチュッパチャプスを舐めながら言った。
“そっか。そーだよね。じゃあさ、もし葬式やったら来てね。”
[何年後の話してんの?]
“うーん。数億年後?”
「まぁだろうね。ウチらさいきょーだもん。」
そう言って私たちは放課後の教室で、3人だけで笑いあった。
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数年後、私は大学に進学した。上京をする時に、携帯をなくしてしまったのであの2人との連絡は途絶えてしまった。丁度、夏休みで実家に帰省していた時、一つだけ私宛に大きな封筒が届いた。その封筒の中には1つのビデオカメラと訃報と書かれた葉書が入っていた。私はセミの泣き声と同じくらい泣いた。

7/3/2024, 11:14:07 AM

『この道の先に』

今日のことも明日には忘れてしまう。一過性全健忘―それが神がかけた私への呪い。私は前世でどれだけ思い罪を背負ったのだろうか。私は必死に普通を生きている。呪いのことは誰にも、絶対に言わない。私にかかっている呪いなのだ、私が向き合えばいい。支度をするために私は鏡を見た。制服を着た自分を見て気合を入れた。

今日も普通に過ごせている。そう考えると少し楽になる。私の友達であろう人と1日過ごしている。また忘れてしまうのに。そう考えると…こんなこと考えるのはもう辞めよう―

「考え事?」
[あっ。いや、なんでもない。]

ふと隣の席の男の子に声をかけられた。クラスの中でも陽るいほうの人だろう。

「なんか、今日ぼーっとしてるね。」
[えっ?見てたの?もしかしてストーカー?]
「なんでそうなっちゃうかなぁ?隣の席だから自然と目に入るんだよ。」
[そっか。結構見えるんだね。隣からって。]
「まぁ、今日は特にどんよりしてたから気になっただけ。気のせいだったかー。」

そうおちゃらけて笑っている。隣の席の人。この道の先に、光は無い。でも、またこの人と笑って喋りたかったから。

私は、昨日の私を超えてみようと思った。多分、昨日の私はこんなことしないだろうから。

[明日も喋ってくれない?こうやって。]

この先の道に期待は持てないけど。

6/29/2024, 9:08:36 AM

『夏』

青春の季節と言われるそれが私は嫌いだ。暑いし、暑いし、暑い。暑いということがどれだけ人の体を蝕むのかこの季節になるととてもよくわかる。でもそんな夏にこそ好きな場所がある。いつの間にか昼食を終えた私は、走り始めていた。汗なんて感じなかった。少しきしんだドアを私は開けた。

「失礼します!!!!!!」
[今日も来たんだね〜。毎日来るから顔覚えた。]

今日もいた。部屋にはたくさんの本棚が並んでいる。カウンターにいるあの人はにっこり笑った。あぁ、ここに来てよかった。その笑顔だけでも反則なのに、顔を覚えてもらえるなんて。やばい。私の心臓は大きく動いた。
それと同時に体温も上昇した。夏の暑い気温のせいだろう。多分。

6/22/2024, 9:21:13 AM

『好きな色』

好きな色は何ですか。子供のような質問。大人になるにつれこんなことを聞かれることは無くなっていた。それと共に私の目の前にある世界は、色を失って行った。

気づいたら、私の世界はわたしだけが真っ黒になっていた。反対に色づいている人々が私を苦しめた。苦しみながら私は大人になるんだと思っていた。

ある時、色のない現実に疲れてしまった。綺麗な世界に嫌気がさした。私は不意に電車に乗った。窓から見る家々の灯りが思った以上に眩しかった。

私が住む場所よりもこの街はやはり眩しかった。でも、薄暗かった。少し汚い空気を吸うと私は少しだか色を取り戻したような気がした。今なら好きな色を答えられるかもしれない。無駄に明るい街を見て私はそう思っていた。

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