『好きな色』
好きな色は何ですか。子供のような質問。大人になるにつれこんなことを聞かれることは無くなっていた。それと共に私の目の前にある世界は、色を失って行った。
気づいたら、私の世界はわたしだけが真っ黒になっていた。反対に色づいている人々が私を苦しめた。苦しみながら私は大人になるんだと思っていた。
ある時、色のない現実に疲れてしまった。綺麗な世界に嫌気がさした。私は不意に電車に乗った。窓から見る家々の灯りが思った以上に眩しかった。
私が住む場所よりもこの街はやはり眩しかった。でも、薄暗かった。少し汚い空気を吸うと私は少しだか色を取り戻したような気がした。今なら好きな色を答えられるかもしれない。無駄に明るい街を見て私はそう思っていた。
6/22/2024, 9:21:13 AM