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『友達の思い出』

今を生きている過半数の人は、人生を友達との思い出で
彩らせてきたのだろう。私も、同様である。ただ、人生の中でたった2人「私の普通」からはみ出た友達がいた。
確か高校の頃だったと思う。

1人はビデオカメラと携帯(まだガラケーだった)をずっと持っていた。目立たないけどすごく綺麗な顔立ちだった。携帯を持ってると言っても、写真を撮ったり、動画を撮ったりすることしか使わなくて。なんか、不思議な雰囲気を持つ子だった。
もう1人はすごく明るくて自由だった。補習がある日でも先生の前で堂々と遊び行こー!なんて笑いながら言ってくるような子だった。周りにはバカにしか見えなかったかもしれないが、私には強かに見えた。
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“ずっと続けばいいのになー。”
“学校でバカみたい笑って、放課後プリクラ行ってつけま貰って。そのまま誰かの家行ってメイクして。1日全部楽しすぎて、卒業が遠く感じるくらい。”
ビデオカメラを持ったあの子が急にこんなことを言った。急な事だったから2人で驚いた。

「急にどうした?ウチらはずーっと一緒だよ。」
私は不思議がりながら反論した。
[プリクラにも書いたじゃん。ズッ友って。]
プリクラを見せたその子はチュッパチャプスを舐めながら言った。
“そっか。そーだよね。じゃあさ、もし葬式やったら来てね。”
[何年後の話してんの?]
“うーん。数億年後?”
「まぁだろうね。ウチらさいきょーだもん。」
そう言って私たちは放課後の教室で、3人だけで笑いあった。
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数年後、私は大学に進学した。上京をする時に、携帯をなくしてしまったのであの2人との連絡は途絶えてしまった。丁度、夏休みで実家に帰省していた時、一つだけ私宛に大きな封筒が届いた。その封筒の中には1つのビデオカメラと訃報と書かれた葉書が入っていた。私はセミの泣き声と同じくらい泣いた。

7/6/2024, 11:54:43 AM