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『この道の先に』

今日のことも明日には忘れてしまう。一過性全健忘―それが神がかけた私への呪い。私は前世でどれだけ思い罪を背負ったのだろうか。私は必死に普通を生きている。呪いのことは誰にも、絶対に言わない。私にかかっている呪いなのだ、私が向き合えばいい。支度をするために私は鏡を見た。制服を着た自分を見て気合を入れた。

今日も普通に過ごせている。そう考えると少し楽になる。私の友達であろう人と1日過ごしている。また忘れてしまうのに。そう考えると…こんなこと考えるのはもう辞めよう―

「考え事?」
[あっ。いや、なんでもない。]

ふと隣の席の男の子に声をかけられた。クラスの中でも陽るいほうの人だろう。

「なんか、今日ぼーっとしてるね。」
[えっ?見てたの?もしかしてストーカー?]
「なんでそうなっちゃうかなぁ?隣の席だから自然と目に入るんだよ。」
[そっか。結構見えるんだね。隣からって。]
「まぁ、今日は特にどんよりしてたから気になっただけ。気のせいだったかー。」

そうおちゃらけて笑っている。隣の席の人。この道の先に、光は無い。でも、またこの人と笑って喋りたかったから。

私は、昨日の私を超えてみようと思った。多分、昨日の私はこんなことしないだろうから。

[明日も喋ってくれない?こうやって。]

この先の道に期待は持てないけど。

7/3/2024, 11:14:07 AM