後で書く
てかお題のバレンタイン、驚くほど気分がのらない
どうしたものか…。
って書いたらたくさんハートをもらってしまった。
みんなバレンタインは複雑なんですね……
風呂に入ったら、ネタ出てきたので書きました。
ここから本文です。
🍫🍫🍫🍫🍫🍫🍫🍫🍫🍫🍫
「父さん!」
「どうした佳代。そんなに慌てて……」
リビングでくつろいでいた父さんは、驚きながら私を見る。
「学生時代に父さんの作る手作りチョコがおいしすぎて、クラスメイトの女子から『バレンタイン用のチョコ制作禁止令』を出されたことがあるって本当?」
「……母さんから聞いたのか。
いかにも、学生の時バレンタインチョコを作ることを禁じられた。
女子より目立つなという理由でな。
そして今も母さんから禁じられている」
「なるほど。通りでお菓子作りが好きな父さんが、バレンタインチョコを作らないはずだ」
私は長年の疑問が一つ解決した。
だが本題はそこじゃない。
「父さん、そのエピソードを見込んでお願いがある」
「バレンタインか……」
「そうだ。気になる人がいる。
父さんにお願いするのは癪だが、作り方を伝授してもらいたい」
「くっ。佳代が男になびくのは許しがたいが……
愛する娘の頼みだ。いいだろう」
父さんはにっこりと微笑む。
「教える前に一つ聞かなければいけないことがある。
チョコをあげたい人は仲がいいのか?」
父さんに痛いところを突かれる。
だがこれからのためにも正直に答えねばなるまい
「学校の部活の先輩で、会話はあんまりしてなくて……
顔を合わせた時に挨拶するくらいで……
で、でも私はあの人に愛を伝えたいんだ!」
「なるほど。はらわたが煮えくりそうだが、事情は分かった。
そうなると問題点が二つある」
「問題点?」
まさかの指摘に頭が急激に冷めてくる。
「まず一つ目。
愛を伝えるには佳代のお菓子作りの腕では足りない可能性がある。
だがこちらはそこまで問題ではない。
練習すればいいだけだ」
「うん、頑張る」
「二つ目、こちらは深刻だ。
受け取ってもらえない可能性がある」
「!?」
受け取ってもらえないだって。
盲点だった。
確かにあまり親しくない人からチョコをもらっても困るだけ。
こんなことに気づかないほど浮かれていたのか。
「だが、そこに関して父さんにいいアイディアがある」
「いいアイディア?」
かなり致命的な問題のようだが打開策なんてあるのか?
「さっき、佳代は練習すると言っただろう。
その練習の過程で作ったものを渡す」
「え?でもチョコは受け取ってもらえな――はっ」
その手がったか!
「気づいたか。
確かに『バレンタインチョコ』は受け取ってもらえないかもしれない。
だが『普通のチョコ』は?
よほど嫌われてない限り、受け取ってもらえるだろう」
私は父さんのアイディアをじっくり頭の中で消化していく。
そして、それにも問題点があることに気づく。
「いい案だと思うけど……
いきなりチョコ渡したら不審に思われない?」
「そこも考えてある。
個人に渡せば不自然だが、部活のメンバー全員に渡せば自然だ。
バレンタインの練習だといえば、勘ぐる人間がいても指摘まではされないだろう。
そして普段からチョコをあげる程度の仲になれば、バレンタインチョコも受け取ってもらえる、という寸法だ」
完璧だ。
完璧な作戦だった。
「分かった。それで行く」
「後はお菓子作りの修行だな。
厳しくするが、ついてこれるか?」
「当たり前、完璧なチョコを作る」
こうして私は父さんからチョコを作り方を教えてもらう。
厳しい修行だったがなんとかなった。
愛ゆえに。
そして、その過程で作ったチョコも、先輩に食べてもらうことに成功した。
そしてバレンタイン当日。
「佳代。チョコは持ったか?」
「もちろん。このパーフェクトなチョコでメロメロだよ」
「ならいい。じゃあ《《彼氏》》によろしくな」
「うん」
そう、今日私は彼氏にチョコを渡す。
なんと驚くべきことに、先輩はバレンタインを待たず私の彼氏になった。
私がチョコをあげることで、先輩は私を意識するようになったらしい。
それで数日前、先輩から呼び出され告白、晴れて恋人同士となった。
このことを父さんに報告すると、
「『男は胃袋で掴む』っていうだろ」
と言われた。
どうやらすべて作戦通りらしい。
私の父親ながら恐ろしい人である。
「あ、そうだ。コレ」
そう言って父さんに小包を渡す。
小包を見た父さんは驚いて固まってしまった。
「お礼。じゃ、行ってきます」
父さんの返事を待たず、家を出る。
フフフ、父さんビックリしてた。
父さんにばれないよう、友達の家で作ったバレンタインチョコである。
ベタだけど効果てきめんだった。
効果てきめんだからベタなのか?
先輩への愛の百分の一もないけど、まあ世話になったからサービスくらいせんとな。
それはともかく。
私は先輩の待つ学校へと歩き出す。
私が愛情をたっぷり込めたこのチョコで、きっと私の愛が伝わるはず。
待っててください、先輩!
「少し待ってて」
そう言われて待つこと、二十分。
妻はいまだに帰ってくる気配がない。
私の我慢はそろそろ限界だ。
トイレに行きたくてたまらない。
早く帰ってきて欲しい。
どうしてこうなったのだろうか。
話は一時間前にさかのぼる。
私はこの度、妻の買い物の荷物持ちとして、近所のスーパーへやってきた。
なんでも『このスーパーで近年まれにみるすごいセール行われる』という情報を得た妻は、私を荷物持ちとして連れてきたのだ。
普段家事を任せっきりなので、これくらいお安い御用とばかり了承した。
だが妻に言わせれば、結局のところマアマアぐらいのセールだったらしい。
とはいえセールはセールなのでたくさんの物品を買い込み、私は荷物持ちとして過不足なく運用された。
そして車の後部座席に荷物を山の様に積んでいく。
積み終わった後、さすがに買いすぎではなかろうかと、物思いにふけっている時に妻は言った。
「買い忘れたものがあったわ。少し待ってて」
「分かった」
たしかそのような会話だったと思う。
特に考えもなく受け入れたのだが、それが間違いだった。
よく女性は買い物が長いと言うが、妻はそれに輪をかけて長いということを忘れていた。
そして、もう二十分も待たされている。
もう二月とはいえ、まだまだ寒い季節である。
燃料代節約のため、エンジンもかけず寒い車内で待っている。
こうして寒い車内で待たされるのはクるものがある。
するとどうなるか?
トイレが近くなる。
つまり漏れそう。
何度もトイレに行こうと思ったのだが、入れ違いになり妻を待たせてしまうかもしれないので、トイレに行けずにいた。
妻は人を待たすのは好きだが、待たされるのは大嫌いな人間なのだ。
だから、怒らせるくらいなら、少しくらい待てばいいかと思っていた。
買い忘れを買うだけなら時間はかからないはずだから。
だが妻は帰ってこない。
いつまで待てばいいのか?
「待ってて」
妻の言葉が頭の中で反芻される。
なんだか妻が帰ってこないような気がしてきた。
縁起でもない。
たかだか買い物帰ってくるに決まっている
だが頭を振るも、その疑念までは振り払えない。
こうなれば心を無にしよう。
そうすれば、気が付いたときには妻は帰ってきているはずだ。
無、無、無、無、無。
駄目だ、トイレ行きたい。
私は一瞬の逡巡の後、車から降りることを決意する。
妻からは文句は言われるだろうが、漏らすよりましだ。
そう決意し、降りようとしたところでスマホが震える。
電話すればよかったのかと思いながらスマホを見ると、SNSでメッセージが来ていた。
『タイムセールがもう少しで始まるので、もう少し待ってて』
妻には悪いがもう待てない。
私は車を降りる。
私は十分待った。
あとは尿意がトイレまで待ってくれるだけ。
私は祈りながら、トイレに向かうのだった。
私は恋人の卓也と一緒に、マンションの屋上に来ていた。
理由は逢引き――ではなく、星空を見に来た。
『なんだ逢引きじゃないか』と思われるかもしれないが、そんなロマンチックなものではない。
私たちは双眼鏡を手に、宇宙人を探している。
『宇宙人なんていない』とおっしゃる方もいるだろうが、残念ながら存在する。
でも誰も信じないので、毎晩こうして証拠探しをしている。
けれど基本的に何かが見つかることは無いし、あっても流れ星くらいなもの。
それでもこの時間は楽しい。
きっと卓也と一緒にいるからだろう。
「何かあった?」
私は卓也に尋ねる。
「ダメだな。なにも無い」
「まあ、気長にやるしかないね。少し休もう」
「そうだな」
卓也は双眼鏡を覗くのをやめて、私の近くに座る。
「はい、お茶。なんと宇宙人のテクノロジーで熱々のまま!」
「何言ってるんだよ。魔法瓶に入れてただけだろ」
「バレたか」
卓也とお茶を飲みながら、星空を見上げる。
「ねえ、宇宙人に会ったらどうしたい?」
「あれ言ったことなかったっけ?」
「聞いたけど、もう一回聞きたい」
「仕方ないな」
卓也は手に持ったお茶をすする。
「会ったら伝えたいことがあるんだ。
地球の文化、自然とか、地球のいいところをたくさん知ってもらう。
それで宇宙人が住んでいる星の事もたくさん聞きたいんだ」
「夢があるね」
「多分だけど、宇宙人って地球に興味があると思うんだ。
アニメとかゲームとか、面白いものがたくさんあるしね」
「それは私も保証するよ。絶対に気に入る」
「そうだろ。
よし、体も暖まったし、宇宙人探しを再開するか」
そう言って卓也は双眼鏡を手にして、星空を見上げる。
だけどそんな卓也を見て、私はため息をつく。
実は私は卓也に秘密にしていることがある。
彼の夢に叶えるために伝えなければいけないこと。
でも話せないこと。
それは私が宇宙人だということ。
『自分が宇宙人ということを地球人に教える』
それは宇宙条約で禁止されている。
破ったら厳罰で、知った地球人も記憶を消されてしまう。
『地球はまだまだ未開だ』と言って、頭の固いお偉いさんによって決められたのだ。
でも地球は宇宙を渡る技術が無いだけで、素晴らしい文化があると思っている。
卓也の言ったように、アニメやゲームは素晴らしい。
ぜひとも故郷の星の人々にも堪能して欲しいくらいだ。
他の宇宙人もそう思っているようで、撤回運動が展開されていると聞いたことがある。
でもお偉いさんは頑なに拒否しているそうだ。
何がそんなに怖いのだろうか。
地球のこと、もっと知ればそんな事は思わなくなるのに……
私が卓也の求めているものだって分かったら、どんな顔をするのだろう。
いつかあなたに伝えたい。
あなたの夢は叶っているって。
いつかあなたに話したい。
私の故郷の星の文化、自然やいいところをたくさん。
そして最後に伝えたい。
あなたを心の底から愛してるって。
卓球の大会の後、高台の公園にある番地を目指していた
だが、僕が座ろうとしたベンチには先客がいた。
「この場所で待っていれば、来てくれると信じていたよ」
彼女は僕をまっすぐ見ながら言った。
「君、辛い事があったらいつもここに来るよね」
どうやら何もかもお見通しらしい。
僕は彼女の言葉に何も返さず、彼女の隣に座る。
「慰めてあげようか?」
「……いらない」
「そう言わずに」
彼女は僕の意思を無視して頭を撫でる。
「君は頑張ったよ」
「中途半端な慰めはいらない」
「ゴメンね。私、負けたことないから慰めかたが分からないや」
「嫌味か。じゃあ、やめろよ」
「それとこれとは別」
彼女の手は止まる気配がない。
「君の対戦相手、強かったね」
「そうだな」
「知ってる?君と当たった子、去年の大会で君に負けているんだよ」
「ああ」
「おや、知ってたんだ?」
「当然だ」
僕の答えに彼女の手が止まる。
そして数秒経って、また頭を撫でる手が動き始める。
「……君その時彼を完膚なきまでに負かしていたよね。
理由を聞いてもいい?」
「去年の試合の時、最後の瞬間、アイツに飲まれた。
気を抜けば負けると錯覚するほどに……
それが印象に残ってた」
「なるほど。だから君は去年から練習を増やしていたんだね」
納得しながらも、彼女は頭を撫でてくるが、最初ほどの繊細さは無い。
というか痛い。
「あと、いい加減頭を撫でるのをやめろ。
雑になってるぞ」
「ゴメン、止め時分かんなくって。
正直飽き始めてたんだよね」
「じゃあ、さっさと止めろよ!」
飽きたというのは本当のようで、彼女はすぐ頭から手をどけた。
それからお互い言葉は無く、正面に見える景色を眺める。
見慣れた街並みも、夕日に染まれば幻想的に映るのだから不思議である。
『嫌なことがあったらここに来る』。
彼女の言う通りだ。
この景色を見る時だけは、何もかもを忘れられる。
「しかしここからの景色、いいね」
彼女が突然口を開く。
「ああ、お前がいなければもっとよかったんだがな」
「可愛い女の子捕まえて、そういうこと言う?」
「なんだ、可愛いって言って欲しいのか?」
「……それはやめてくれ。君に可愛いって言われたら、死にたくなるかも」
彼女はここにきて初めて苦い顔をした。
「で、どうするつもり?」
だがそれも一瞬で、すぐに真面目な顔に切り変えた。
どうやらこれが本題らしい。
「決まってるだろ。リベンジだ」
「男の子だね」
「言ってろ」
俺はベンチから立ち上がり、そこから見える街並みを見下ろす。
「次は負けない」
僕は赤く染まるこの場所で、決意を新たにするのだった。
「 頭が高い控えおろう」
「「「「「ははー」」」」
誰もがみんな、その場に膝をつく。
無理もない。
目の前にはあの水戸黄門様がいるのだ。
若い時から様々な悪事をやった俺でも、膝をつくしか道は無い。
かつて俺に悪の道を教えてくれた師匠も、黄門様だけには逆らうなと言っていた。
それほどのお方だ。
だが俺には一つ疑問があった。
本当に『あの』水戸黄門なのだろうか。
なるほど、疑うだけでも不遜であろう。
でも本物であるかどうか、俺には全く見当がつかなった。
黄門様(仮)一行に気づかれないよう、隣で土下座をする相棒を小突く。
「なんだよ」
相棒は不機嫌な様子でこちらを睨みつける。
「あれ、本物だと思うか?」
「本物に決まってるだろ。印籠も持ってるし」
「そうなんだが、俺は本物の黄門様も印籠も知らない。
あれが本物か偽物か分からないんだ」
相棒は黄門様(仮)の方へ一瞬目線を向け、俺の方に視線を戻す。
「確かにお前の言う通りだ。あれが本物かに偽物か、全く分かんねえ」
「だろ」
「ほかのやつが知っているかもしれない。聞いてみよう」
相棒は、一行に気づかれないよう隣のやつを小突き、なにやら話している。
だが、その男も知らないらしく、その男はさらに隣のやつを小突き、さらに隣の男を――
といった様子で、波の様に動きが伝播していく。
だが誰も知らないらしく、一向に答えが戻ってこない。
黄門様が本物なのか、偽物なのか。
誰もがみんな、判別する方法をしらない。
ここまで誰も知らないとなると、本当に水戸黄門が存在するのかさえ怪しい。
俺は、俺たちはよく分からないやつらに土下座しているのか……
なんだか、急に腹が立ってきた。
なんでこんな目に会わなくてはいけないのか?
ちょっと悪事を働いただけなのに!
俺は立ち上がる。
「貴様!どういうつもりだ!」
黄門様(仮)に立っている隣の男が叫ぶ。
「本物かどうか、よく分かんないやつらにヘコヘコできるかよ!」
「この印籠が目に入らぬか!」
「その印籠が本物か分かんねえんだよ!」
俺は言い返す。
「こうなりゃヤケクソだ。一か八かお前たちを殺して俺は逃げる」
「貴様ぁ!」
「待ちなさい、角さん」
黄門様が男をなだめる。
「儂に任せなさい」
すると角さんと呼ばれた男が一歩後へ下がる。
「そこの君、儂が本物かどうかわからんと言うが……」
黄門様(仮)が一歩前に出る。
「これでどうかな?」
そう言うと、印籠が光輝き始めた。
なにが起こっているんだ?
「変身!」
黄門様(仮)が叫ぶと、黄門様(仮)が光で満たされる。
そして光が収まると、黄門様(仮)は全身を鎧に身を包み、顔を仮面で隠してい。
「あ、あんたは……」
俺はこいつを知っている。
「黄門仮面!」
日本中で悪を成敗し、弱い者たちを救う正義の使者。
知らない人間なんて、この日本には一人もいない。
「歳には勝てなくてな。必要が無ければ変身しないことにしているんじゃよ」
俺は膝から崩れ落ちる。
「若いの。これでどうかな」
「はい、申し訳ありません。あなたは本物です。かつて助けてもらったこともあります」
「そうか……見たことがあると思ったが、やはりな」
「申し訳ありません。悪から足を洗うと言いながら、この道に戻ってまいりました」
「うむ、だが君は若い。これからは償いをするといい」
「はい」
俺は自然と土下座の姿勢を取っていた。
この人を偽物だと、一瞬でも疑った自分が恥ずかしい。
「黄門様、私は残りの人生を償いに捧げることを誓います」
「うむ、心を入れ替えるとよい」
黄門様(真)は満足そうにうなずく。
そして土下座している仲間たちを見渡し、全員に聞こえるように告げた。
「罪を憎んで人を憎まず。お前たちも心を入れ替えることだ」
「「「「ははーー」」」」
この場にいた全員が涙を流していた。
無理もない。
誰もが黄門仮面に助けてもらったことがあるのだ。
そして彼のようになりたいと憧れ、だけどどこで道を間違えてしまったのか……
やり直そう。
誰もがみんな、そう思ったのだった