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1/7/2024, 9:36:49 AM

「買い物についてきてくれない?
 買うものがたくさんあって、一人じゃ大変なの」
 日曜日の朝、妻はそう言った。
「いいぞ。ついでにデートしようか」
 そう言うと彼女は嬉しそうに笑った。
 普段家事を任せているので、こういう時は手伝うことにしている。
 彼女も助かり、俺もデートできる。
 一石二鳥だ。

    ◆◆◆

 服を着替えて、俺は車の運転席に乗る。
 二人で行くときは、俺が運転する。
 それが暗黙のルール。
 妻が乗り込んだことを確認して、車を発進させる。

 助手席に座っている妻の顔を横目で見る。
 彼女はいつものようにまっすぐ前だけを見ていた。
 獲物を狙うような狩人の目。
 大抵の人間は怖がるだろうが、俺は彼女のその目に惚れたのだ。

 思えば付き合う前も後も、やけに積極的だった。
 最初はその気がなかったのに、結婚までいった。
 つまり、俺はまんまと狩られたのだ。
 でも悪い気がしないのは、惚れた弱みという奴だろう。

 今日の獲物は何だろうか?
 そう思いながら彼女を見ていると、見ていることに気が付いたのか妻が顔をこちらに向ける。
「何?」
「ああ、何を買う予定なのかなって……」
「うん、2、3日分の食料とお米。
 お米が無くなりそうなの」
「なるほど、米か。重たいからな」
「うん、頼りにしてる」
 そう言うと、彼女は再び前を向いた。

   ◆◆◆
 
 車から降りて、店の中に入る。
 店に入ってすぐ、視界一杯に山のようなものが見えて、思わずたじろぐ。
 何事かと思い近づいて見ると、トイレットペーパーを山のように積み上げたものだった。
 立札には、『本日の商品』『お値打ち価格』『今日だけこの価格』など、たくさんの売り文句が書いてある。
 その値段は、12ロール100円!?
 安っ!
 値段設定大丈夫なのか、コレ。

 思わず妻の方を振り返る。
「お一人様一個までみたいね。今日は君と一緒に来てよかったわ」
 妻はまるで今気づいたかのように、俺に話しかける。

 だが彼女は最初から知っていたのだろう。
 俺じゃなくても分かる。

 彼女は、獲物を前にした猛獣の目をしていた。

1/6/2024, 9:58:59 AM

 俺は目的地について、スマホの時計を見る。
 彼女とのデートの時間まであと一時間。
 遅れてはいけないと、いつもより早めに出たが早すぎたようだ。

 当然、待ち合わせの相手はまだいない。
 どこかで時間をつぶすか、このまま待つか。
 まわりを見ても、時間をつぶせるような物は見当たらない。
 道を戻るのも面倒なので、このまま待つより他にない。
 幸い今日は冬だというのに、春を思わせるような暖かさ。
 このまま待っても、凍えることはないだろう。

 近くにあったベンチに座る。
 日に温められたのか、ほんのり暖かい。
 
 座っても見て面白いものがないので、なんとなく空を見上げれる。
 空は一つない冬晴れだった。
 冬で空気が澄んでいるのか、いつも見る空よりきれいに見える。

 別に面白いわけでもないのだが、なんとなくずっと見続けることが出来た。
 しばらくすると、ポカポカ暖かいので眠気がやってきた。
 いつもより早く起きたので、少々寝不足なのだ。

 少し考えて、寝ることにする。
 やることもないし。
 目を閉じると、そのまま夢の世界に落ちていく。



 どれくらい寝たのか、意識が覚醒する。
 時間を見ようとスマホを取り出そうとすると、誰かが肩にもたれかかっていることに気が付いた。
 待ち合わせをしていた彼女だった。
 彼女は、規則正しい寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。

 起こすべきか迷ったが、とりあえず今の時間を確認することにする。
 スマホを見ると、まだ待ち合わせの時間の三十分前だった。
 少し考えて、時間までこのまま寝かすことに決める。
 別に急ぐこともないだろう。

 もう一度彼女をみると、とても気持ちよさそうに寝ている。
 これだけ気持ちよさそうに寝ていれば、起こすのは気が引ける。
 彼女も、俺が寝ているのを見て起こすのをためらったのだろう。

 空を見上げれば、さっきと変わらない冬晴れの空。
 相変わらず、太陽が暖かい陽気を降り注いでいる。
 寒がりの彼女とデートするにはいい空模様だ。

 俺はそう思いながら、あくびをかみ殺すのだった

1/5/2024, 9:50:43 AM

「あなたがそんな人だなんて思わなかったわ」
「僕もだよ。君とは分かり合えない」
「本当に残念だわ」
 ママはパパを睨みつける。
 パパはママの迫力にちょっとビビっていたけど、謝ることは無かった。

「君こそ、なんでショートケーキのイチゴを最初に食べるんだ!
 意味が分からない」
 パパの言葉を聞いて、ママは説明するようにゆっくりと話し始めた。

「ケーキの甘さを最大限味わうためよ。
 最初にイチゴの酸味を味わうことによって、ケーキの甘みを引き立たせるの。
 そうすることでケーキを幸せに食べることが出来るわ」

 僕はイチゴを最初に食べて、ケーキを食べてみる。
 なぜかは分からないけど、最初にイチゴを食べるといつもより甘くなった気がする。
 なるほど、ママの言い分は正しい。

 でもパパは怖い顔のままだった。
 パパは分からなかったらしい。
「ふん、理解できないな」
 パパはママの説明を鼻で笑う。
 パパはかっこいいと思っているみたいだけど、はっきり言ってダサいからやめて欲しい。

「ケーキを甘くする?
 何言っているんだ、ケーキは最初から甘い。
 だから最後に口直しでイチゴを食べることで、ケーキの甘さをリセットする。
 メリハリをつけることで、自分が幸せだってことを噛みしめるのさ」

 僕はケーキを食べてから、イチゴを食べてみる。
 なぜかは分からないけど、お口の中がすっきり爽やか。
 なるほど、パパの言い分は正しい。

 でもママは怖い顔のままだった。
 ママは分からなかったらしい。
「ありえないわ。
 甘さをリセットなんて……」
 ママは目を細くしてパパを睨む。
 ママがかなり怒ったときの顔なんだけど、夜に眠れなくなるからやめて欲しい。

 僕は、パパとママ、どっちも正しいと思う。
 でも二人とも、自分が正しいと言って喧嘩をやめない。
 長くなりそうだから、自分のケーキを食べよう。
 どうやって食べようかな。

 すると、パパとママが、突然僕の方を見る。
「そうだ、お前はどう思―あれ?」「そうよ、あなたはどう思―あら?」
 パパとママはキョトンとした顔で、僕の近くにある何も載ってない2枚の皿をじっとている。
 パパとママの、ケーキが載っていた皿だ。

 ゆっくりと僕の方の顔を見る。
 マズイ。
 僕が二人のケーキを食べたことがバレてしまった。
 なんとかごまかさないと……

「うーん。僕はケーキをたくさん食べるのが幸せかな」

1/4/2024, 8:42:03 AM

 初日の出が見たいと彼女に連れられ、近所の公園に来ていた。
 この公園は海が近く、水平線から出てくる初日の出がキレイに見れるという、この街の初日の出スポットだ。

 だが今年は暖冬とは言え、日の出てない時間は気温が低い。
 厚着をしてきたが、寒いので早く帰りたい。 
 そう思いながら東の空を見ると、何やら一際強く輝く星が見えた。

「明けの明星だよ」
 僕の心を読んだのか、彼女が答える。
 明けの明星、金星の別名。
 日が昇れば、太陽の光でたちまち見えなくなってしまう、そんな星。

「あれ、満ち欠けするんだよ」
「よく知ってるな」
「見かけの大きさも変わる」
「マジか」
 彼女の金星の知識に感心する。
 言われてみれば確かにその通りだ。
 月と違って、金星と地球の距離は変わる。
 当たり前だが、考えたこともなかった。

 その後も彼女は金星について、色んな話をしてくれた。
 神話に絡めた話や、現代の創作物での扱い、宇宙移民計画の立案から廃案までのエピソードなど、様々なことを語っていく。
 初日の出の見に来たのに、まるで新年初の金星を見に来たかのようだ。

 彼女の話は面白く、あっという間に時間が過ぎていく。
 ふと気がつけば、既に金星に輝きが弱くなっていた。
 もうすぐ日の出だ。

 彼女は十分話したのか、満足したようだった。
 今まで知らなかったが、金星が好きなのだろうか。

「金星好きなのか?」
「うん、君よりも」
「えっ」
「キシシ」

 驚いて彼女に振り向くと同時に、日が出て周囲を照らし始める。
 だがイタズラっぽく笑う彼女の顔は、太陽でも隠せないほど輝いていた。
 

1/3/2024, 9:34:35 AM

〈昨日までのあらすじ〉
 小説家になるための一歩目として、去年から“書く習慣アプリ”で毎日短編を書いている私。
 去年の9月から、多少つまずきながらも、毎日更新する事ができた。

 そして、来たるべき今年初のお題は“新年”。
 それに対して、いつものように悩みつつも、私は“新年の抱負”を主題に短編を書いて、今回も乗り切るのだった。


✂―――――――――✄―――――――


「どうするんだよ、これ……」
 私は悩んだ。
 悩むのはいつもの事だが、今回は程度が違う。
「“今年の抱負”、昨日やったんだよな……」

 そうなのだ。
 昨日のお題『新年』対して、『新年の抱負』について短編を書いたら、今日のお題はまさかの『今年の抱負』である!
 昨日のお題で、アイディアを出し切ってしまったので書くことがない。
 大事故だ!

 ヒラメキを得ようと他の人のものを読むと、何人か事故った人がいる。
 一人じゃない(^o^)
 でも何も閃かない(-_-;)
 
 とりあえず今年の抱負を述べます。
①コンビニに行く度に、募金箱にお金をいれる。
②小説のインプットのため、サメ映画を見る。
(理由は昨日の短編参照)

 盛大に事故ったせいで、何も面白いこと言えませんが、今年もよろしくお願いします。

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