G14

Open App
11/30/2023, 9:07:55 AM

 自分の体の調子が良くなってくると、ついに冬が始まったと心の中でガッツポーズする。

 私は夏のあの暑さが大ッッ嫌いであり、夏など無くなればいいと思う。

 あの暑さは、呪いのように私の体を蝕み、体力を常に消耗させ、頭のキレを鈍らせる。
 ふつうの人は汗をかいて対抗するけれど、私は体質なのか汗があまり出ない。
 出る頃には最早手遅れである
 私の体は空冷式なのだ

 しかし冬は違う
 冬の寒さは、体の熱を取り去ってくれる。
 体は羽のように軽く、頭のほうも雲ひとつ無い青空のようにクリアなのだ。

 そして冬は暖かい食べものにボーナスがつく
 肉まん、ホットコーヒー、鍋、出来立ての料理
 ああ、そうだ、イチゴも美味しくなる
 すべてが素晴らしい

 そしてイベントが目白押し
 クリスマス、正月、バレンタイン
 これから楽しみだ

 なので私は、冬のはじまりを祝福したいと思う。
 みんな、冬をもっと評価すべきだ
 冬をもっと讃えよ

 私の熱くなったハートが訴える
 冬、万歳

11/29/2023, 9:27:46 AM

「はあ、このイベントも今年で終わりか」
「仕方がない。だって人来ないもの…」

 そう言って彼女は周囲を見渡す。
 人はまばらで、俺たちがサボっても、文句を言う客はいない。
 俺と彼女は何年もイベントの実行委員で参加していて、サボる要領がいいのもあるのだが…

 町おこしで大大的に宣伝し、初めは客がたくさん来たものの、次第にいなくなった
 まあ善戦したほうだろう

「終わらせないで、ってお願いしたら来年もやらないかな」
「ないだろ。こんなんでもカネがかかるんだ。予算が降りない。次はないよ」

 そういうと、彼女は少し考えて、
「じゃあ、君と私の自腹で!」
「なんでだ」
「いいじゃん。美少女と一緒にいられるんだよ」
「自分で美少女っていうな」

「なんで終わってほしくないんだよ」
「君と一緒に居たいからかな。楽しいし、終わらせたくないんだよ」
 彼女の言葉にちょっとドキッとする。
 それでも、今年で彼女とはお別れだ。

 俺は動揺を隠しながら彼女を諭す。
「あのな、何事にも終わりがあるんだよ。でも悪いことじゃない。終わるからこそ、新しいものが始まる。そうだろ?」
「…なに言ってんの?」
「俺今いいこと言ったよな」
 全然響いてなかった。

「終わらせて始める、ね」
 彼女は小さな声でつぶやく。
「じゃあ、パアーっと終わらせますか」
「何を?」
「それはもちろん!」

 彼女は俺の正面に向き直る。
「友達同士の関係を終わらせて、私と恋人関係を始めませんか?」
 そう言い切ると彼女は笑った。
「恋人関係は終わらせないで、ね」

11/28/2023, 9:00:24 AM

 私はイチゴを愛情込めて育てている。

 私はアパートに住んでいて庭がないので、ベランダで育てている。
 最初は育つのだが、イチゴがならなかったり、枯らしたりして大変だった。

 でも水やりの頻度、日当たり風通しなどが分かってきたときくらいから、大きなイチゴを付けてくれるようになった。

 今では見るだけで調子がわかるようになった
 これを、愛と呼ばずしてなんと呼ぼう!

 込めた愛情を返してくれたのだ、というほど私はロマンチストではない
 多分、イチゴはいい感じの水といい感じの土、いい感じの日当たりで自分のしたいことをやっているだけなのだ。
 私という存在を認識しているかすら怪しいものである

 ならばイチゴのしたいことはなんだろうか
 赤いイチゴという魅惑の果物を作り、他の存在に恵みを分け与える
 それは実に慈悲深く、愛に溢れた行為だ

 もしかしてイチゴは、私よりずっと愛情深い存在なのかもしれない

11/27/2023, 9:23:32 AM

「懲りないねぇ。今回は誰にお熱なの?」
「サッカー部の杉咲くん」
 そう言われて、私は杉咲の顔を思い出そうとする。

「駄目だ。思い出せない。誰よ、杉咲って」
「幽霊部員だからね」
「それ、サッカー部って言っていいのか?」
「試合しか出ないの。数合わせで入ってるだけだし」
「もう一度言うぞ。それサッカー部って言っていいのか?」

 このまま続けても不毛そうなので話題を変える。
「なんで好きになったの?」
「んふー。弟が近くの小学生野球チーム入ってるんだけど、杉咲くんがそこで野球教えてるの」
「まさか本当にサッカー関係無いとは…」
「でね。弟に杉咲くんが教えるんだけど、その時の杉咲くんの表情、とってもカッコいいんだ」
「へぇ~」
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」

 もちろん聞いているとも。
 私はこの子の恋バナを聞くのが好きなのだ。
 でも恋バナが好きって訳じゃない

 この子の持っている熱が好きなのだ。
 恋に興味がない私にさえ、いいかもと思わせるくらいの熱量。

 熱が無い私に、彼女の熱が伝わる感覚。
 結構気に入っている。

 そうして何回も聞いていると、私の中にも熱を感じるようになった
 彼女に比べたら、なんてこと無い微熱くらいの熱

 気づいた時はびっくりしたけど、悪い気はしない

 ちょっとだけ、恋してみようかな
 
 

11/26/2023, 7:49:28 AM

 暑い
 それが外に出たときの感想
 
 ジリジリと照りつける太陽のもと、道を歩いていく
 暦上は冬だと言うのにこの暑さはなんだろう。
 道行く人々は大量の汗をかき、ミイラになって転がっているやつもいる。
 気温計を見れば、今の気温は100度。
 ふざけてる

 おれは暑いのが大嫌いだ
 たとえお天道様が許しても俺が許さない
 ま原因はお天道様なんだけども

 だとしたら倒すべきは太陽。
 今すぐ破壊しなければ
 俺は、持っていたミサイル発射装置を押し、太陽に向かってミサイルを発射。
 太陽を破壊に成功する
 やった

 だが未だに暑いのが消えない。
 なぜだ
 なぜこんなにも暑いんだ



 俺は思わず飛び起きる
 自分の体は汗でびっしょりだった。
 思わず空を見上げると未だに太陽がある
 馬鹿なと思ったが、頭が徐々に覚めてきてあれは夢だと言うことに気づく

 そうだ
 天気がいいからと言って庭でぼーっとしていたのだが、いつの間にか寝ていたらしい。

 しかも太陽は高い位置にあり、一番気温の高い時間帯だ。
 汗もかくはずだ。

 着替えるために一度家に戻ろう。
 部屋に入ってから、もう一度太陽を見る

 やっぱり暑すぎるので、一度破壊すべきでは?

Next