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「はあ、このイベントも今年で終わりか」
「仕方がない。だって人来ないもの…」

 そう言って彼女は周囲を見渡す。
 人はまばらで、俺たちがサボっても、文句を言う客はいない。
 俺と彼女は何年もイベントの実行委員で参加していて、サボる要領がいいのもあるのだが…

 町おこしで大大的に宣伝し、初めは客がたくさん来たものの、次第にいなくなった
 まあ善戦したほうだろう

「終わらせないで、ってお願いしたら来年もやらないかな」
「ないだろ。こんなんでもカネがかかるんだ。予算が降りない。次はないよ」

 そういうと、彼女は少し考えて、
「じゃあ、君と私の自腹で!」
「なんでだ」
「いいじゃん。美少女と一緒にいられるんだよ」
「自分で美少女っていうな」

「なんで終わってほしくないんだよ」
「君と一緒に居たいからかな。楽しいし、終わらせたくないんだよ」
 彼女の言葉にちょっとドキッとする。
 それでも、今年で彼女とはお別れだ。

 俺は動揺を隠しながら彼女を諭す。
「あのな、何事にも終わりがあるんだよ。でも悪いことじゃない。終わるからこそ、新しいものが始まる。そうだろ?」
「…なに言ってんの?」
「俺今いいこと言ったよな」
 全然響いてなかった。

「終わらせて始める、ね」
 彼女は小さな声でつぶやく。
「じゃあ、パアーっと終わらせますか」
「何を?」
「それはもちろん!」

 彼女は俺の正面に向き直る。
「友達同士の関係を終わらせて、私と恋人関係を始めませんか?」
 そう言い切ると彼女は笑った。
「恋人関係は終わらせないで、ね」

11/29/2023, 9:27:46 AM