フィロ

Open App
8/7/2024, 12:34:20 AM

「原始女性は太陽だった」平塚らいてうの名言だ


母親が一家の太陽と表させるのも、
太陽は明るさやエネルギーの象徴であり、欠かせない唯一の存在という概念から昔からそう言われてきたのだろう

ところが、ここ最近の命さえ脅かされるような暑さからはそのギラつく太陽が疎ましくさえ感じられてしまう
その恩恵がどれほどのものかを、無くてはならないものかを百も承知の上でもだ

こんな時に「君は太陽のようだね!」なんて言われたら、(暑苦しくて迷惑な存在なのかしら?)なんて思ってしまいそうだ…


地球温暖化を阻止するための特効薬のような取り組みが地球規模で行われない限り、この暑さは年々増していくと考える方が自然だろう

ならば、やはりこの夏の激しい太陽の力を生かす他はないだろう
ソーラーパネルの普及や太陽エネルギーの活用を国策として早急に全力で取り組んで欲しい
今こそ、太陽の恩恵を余すところなく活用するべきだ

むろん、そんな体力が国に残っていればの話だが…


ピンチをチャンスに!
まさにこういう時にこそ使う言葉だ




『太陽』


8/6/2024, 4:42:40 AM

「こんな時間にカフェでコーヒーなんていつぐらいぶりかしら…」

時計はようやく10時を回ったところだった
まわりに目をやると、遅めの朝食を摂るすでにリタイアしていると思しき男性がゆったりと新聞を眺めていたり、パソコンに向かい、コーヒーに手をつけることも忘れて忙しなくキーボードを叩くサラリーマン風の男性
紗代子のような主婦らしき人はひとりも居ないことに、すこし後ろめたさを感じた

もちろん紗代子も、普段のこの時間は家事に追われ家中を小鳥の様に飛び回っている
ところが今朝夫との会話のふとした一言が、紗代子の家事モードのスイッチをブチ壊した
何もかもが馬鹿らしくなり、食事の後片付けもろくにせず、残す家事もすべて放り出して家を出て来たのだ


「あなた!また奥のタオルから使っちゃったの?手前から使ってっていつも言ってるじゃないの!」
何度注意しても夫はキレイに畳まれ整然と並べられたタオルの列に無造作に手を突っ込みタオルを掴み取るのだ

「そんなつまらないことにいちいち拘るなよ!タオルなんてどれも同じじゃないか! あれはこうしろ、これはああしろ!ってそんなつまらないことに何の意味があるんだよ!」


紗代子の頭の中の何かの線が、ブチッ!と音を立てた
(つまらないことですって?!  何の意味があるかですって?!  そりゃ、お給料もらう貴方の仕事はさぞ意味があるでしょうよ
それに比べたら、私の毎日の家事なんて意味の無いことでしょうよ
やったって、やったって、目に見えた成果があるわけじゃなし、掃除したってすぐに汚れる、食事を作ったってあっという間に食べ終わる、私のやってることなんて、やったことも分からない様な不毛なことだらけよ!
家政婦でも頼めば済むことばかり
私じゃなくたって、お金で解決することばかりよ!
もう!やってられない!!)

そう心の中で湧き上がる思いをぶちまけた
毎日欠かさない夫の見送りにも出なかった


コーヒーのお陰で少し心が落ち着くと、たいして化粧もせず普段着で飛び出して来たことを後悔した
「これじゃ、気晴らしにショッピングなんて気にもならないわ」

紗代子はとりあえず美容院でシャンプーとセットをして貰うことにした
ヘアースタイルが整うと気分も上るし見栄えも格段に良くなる 
簡単なメイクなら頼めば施して貰えるはずだ
「たまには、そんな贅沢したって罰は当たらないわよね」

予定外の美容院はリッチな気分がした
髪は整い薄く化粧で仕上げられた紗代子の顔はいつもよりスッキリとずっと若く見えたが、心は少しもスッキリしなかった


いつもなら次から次に追われる家事を恨めしく思っている時間が、今日はやけにその流れが遅い

せっかくキレイになってショッピングを楽しむはずだったが、何故が心が弾まない
こんな時だから、奮発してランチでもとも思ったが、店の看板のメニューを見てもつい、「こんなの家で作れば簡単に出来るのに、勿体ない!」なんて思ってしまう貧乏性な自分にも呆れてしまう


なんとなく時間を潰しているうちに何だかもう、あれぼどの怒りもどこかへ行ってしまった…

時計をチラチラ見ては、そろそろ洗濯物を入れる時間だわとか、夕飯の仕込みをしておかなくちゃ、なんてことを結局考えているのだ


「そうね、もうこの辺にしておきますか…結局は私は家庭の主婦なのよね
つまらないことでも結構!不毛な仕事で結構! でも、そのお陰で日々の生活が滞りなく回っているのよ、私が細かいことに気を配っているから貴方が気持ちよく生活出来てるのよ、分かってるの?」と心の中の夫に向かって言い聞かせた

「さて、夕飯の買い物でもして行きますか…」
紗代子はいつものスーパーへ向って歩き出した

その足取りは今日一番軽ろやかに感じられた





『つまらないことでも』

8/4/2024, 4:36:44 AM

ねぇ、お願い
私の目が覚めるまでに、どうか私をさらって行って…

貴方の話す言葉がすべて愛の囁きに聞こえるうちに
どんな人混みにいようと貴方だけに光が差して見えるうちに
貴方への想いに何の曇りもないうちに

あばたがエクボに見えるうちに…


貴方が白馬に乗った王子様に見えるのは
貴方の香りが私を惹きつけて止まないのは
貴方以外の人が見えないのは

すべて神様がかけてくれた「恋の魔法」のせいだから


だから、お願い
私が魔法から目が覚めぬうちに…
私をあなたのものにしてちょうだい




『私の目が覚めるまでに』

8/3/2024, 4:31:03 AM

これは僕が小学生の頃の話だ

僕の母は僕が生まれた頃から病気がちで入退院を繰り返していた
僕が3年生になった年の夏休みにもひと月近く入院した

母が入院している病院は家からそれほど遠くなかったので、僕は毎日自転車で母の顔を見に行った
特に用事があるわけではなかったけれど、母の顔を見ると安心した

「公ちゃん、もう帰るの? 今来たばかりじゃないの」
と、着いて5分と経たずに帰ると言い出す僕に母はクスクス笑いながら呆れていた

そんな母の顔が見られれば十分だった


母の病室から西側の突き当りに、特別室と札の掛かった部屋があった
名前の札は入っていなかった
母の病室から帰る方向とは逆なので部屋の前を通ることはそれまで無かったが、その日は何故かその部屋が気になり部屋の前まで行ってみた
ドアが10cmほど開いていたので、そっとその隙間から中を覗いた

すると、白い髪をきれいに束ねた品の良さそうなお婆さんがベッドにちょこんと腰掛けて僕に向かって手招きした
まさか人が居るとは思わずビックリしたが、とても優しそうなお婆さんの柔かい声が僕を安心させた

「坊や、こっちへいらっしゃらいな
美味しいキャンディーがあるのよ」

もちろん、キャンディーが欲しかった訳では無かったが、何故が逆らえない気がして静々と部屋の中へ導かれるように入って行った

「坊や、どなたかのお見舞い?  偉いわねぇ じゃあ、こちらの素敵な包み紙の方のキャンディーをあげましょうね」
と、お婆さんの柔かそうな白い手がキャンディーを差し出してくれたけれど、僕は受け取らなかった

「知らない人から物を貰っちゃいけないんだ」
と答えると、お婆さんはとても哀しそうな顔で
「坊やは偉いのねぇ…」
と残念そうに呟いた
僕はとても悪いことをした気持ちになり
「え〜と、え〜と、本当はダメなんだけど、ひとつだけなら…」
とそのキャンディーを受け取った

「坊やは優しいのねぇ…  また遊びにいらっしゃいね」
ととても嬉しそうにお婆さんは微笑んだ


そのキャンディーはそれまで見たことのない美しい包装紙で包まれていた
きっと外国製のものだったのだろう
帰り道中身のキャンディーは口に放り込み、その包装紙はきれいに折り畳んでポケットに大事にしまった
家に着くとすぐに、大切な物をしまってある宝箱の中にその包装紙をそっと入れた


それから毎日母の顔を見た後はそのお婆さんの部屋にも寄るようになった
特に話をするわけでもなかったが、毎回違った模様のキャンディーやチョコレートをくれた
そして
「坊や、また明日もいらっしゃいね」
と優しく微笑んでくれた


宝箱にしまった包装紙がかなりの数になった頃、母が退院した
最後の日は父や姉が一緒だったので、そのお婆さんさんにお別れの挨拶が出来なかったことが心残りだった

帰りの車の中で、初めてそのお婆さんの話をした
すると母が不思議そうな顔で言った

「えっ?あの特別室は誰も入院していないわよ  もう長いこと用具室としてしか使われていないもの 
いやぁね、公ちゃんたら、お母さんを怖がらせようとしてるの?」
と母は僕を冷やかした

そんな筈はなかった
だって、毎日お婆さんにあっていたし、証拠の包装紙だって大事に取ってあるのに!

家に着くと一目散で部屋に駆け上がり、宝箱を取り出して中を確認した
ためた包装紙は確かにそこにあった
「やっぱり!」
急いで母に見せようと思ったが、ふと思い留まった

もしかしたら、お婆さんの姿は僕にしか見えなかったように、この包装紙も母には見えないのかも知れない…

あのお婆さんは、何故だかは分からないけれど、僕にだけ気付いて欲しかったんだ…
この出来事は僕だけの心の中にしまっておいた方がいいんだ…


リビングからは家族の久しぶりの賑やかな声が聞こえてくる

「公一、早く降りて来なさい せっかくお母さんが帰って来たんだから
皆でケーキを頂こう」
と父の嬉しそうな声がした



これが、僕が小学生の時に体験した不思議な病室の思い出だ




『病室』


8/2/2024, 6:59:13 AM

そもそもここで言葉を綴り始めたのは、自分の居場所を広げたかったことと、自分の思いを自由に吐き出す場所が欲しかったからだ

でもそれは同時に、例え与えられた題に従って綴ったとしても、完全なフィクションを描いたとしても、自分自身の片鱗がチラホラと炙り出されてしまうものだ
自分の中に蠢く自分さえ気が付かないでいた、長年抑え込まれていたドロドロとした感情を掘り起こしてしまうことにもなる

もちろん、そのことは自分自身と向き合う良いチャンスではあるが、果たしてそれが必ずしも憂さ晴らしになる訳ではなく、それを受け止めきれない弱い自分は再び浮上して来れないほど打ちのめされてしまうこともある


そんな経験を繰り返すうちにこの気持ちは浄化されていくのだろうか…

それが、言葉を綴るということなのだろうか…


こんな思いが明日、もし晴れたら
いままでより、ずっとずっとマシなものが書けるようになるのだろうか

でも、その思いが晴れてしまったら、
そもそも書きたいというモチベーションも無くなるのかも知れない

それではまるで、賢者の石だ


でも…負のエネルギーがプラスに変わる時、思ってもみなかった力が湧いてくるのかも知れない


こんなことを綴っているうちにも、ムクムクと新たな思いが頭をもたげて来た気がする


明日はきっと晴れる気がする




『明日、もし晴れたら』


Next