IROHA

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9/18/2022, 2:00:36 PM

陽が落ちて、街に明かりが灯る。
ここから見る景色が何故だか、寂しい。

鞄からスマホを出して、画面を見つめる。
特に通知はなく、ため息をついてカメラを起動させた。

カシャリ。

無機質な音は、私を余計に孤独にさせるのに、
画面に写された景色はとてもとても温かかった。

オレンジの家の灯り、青い街灯、車の黄色いライト、
商店街のネオン、全てがキラキラとして、
闇ですら寄せ付けない気がした。

あの中に戻れたら、
寂しさはなくなるのかな…

戻りたい。
でも、このまま闇に消えてもいいような気もする。
~~~♪
突然鳴ったスマホを見て、私の頬が弛んだ。

「もしもし?
…いま?夜景見てた。…うん。いつもの所。」

通話が終わると、ベンチに腰掛ける。

もうすぐ、私をあの灯りの中に連れ戻してくれる人が来る。
嬉しいような、残念なような、
なんとも言えない気持ちだけど…。

今はもう少しだけ、外側の闇から温かさを見ていよう。

9/17/2022, 2:25:35 PM

ふんわりと優しい風が吹いた。
いや、背中を押されたのか…
身体が柔らかく包まれるような感覚がした。


目を開けると、見たこともないような景色。
1人でぼんやりと突っ立っていたはずだったのだが、
隣にはまだ幼い女の子が立っていた。

「あっち」

女の子が指を指す先には
色とりどりの花が咲いている。

気が付くと自然と足が動いていた。

「行くの?」

少し心配そうに見つめる女の子に、優しく笑いかける。

「あそこで寝そべったら気持ち良さそうだよね」
「でも……」

女の子は言葉を濁す。
その意味はわかっていた。

「大丈夫だよ。案内してくれてありがとう。」

花畑に足を踏み入れる。
身体が宙に浮いたかと思うほど、軽くなった。

女の子はもういない。

9/15/2022, 1:29:05 PM

静かな部屋に響く通知音。
「………」
のそのそと腕を伸ばしてスマホを掴む。
「…あー…やっちまった」
ぼんやりとしていた身体が、
急に動くわけでもなく、
しばらく画面を見つめて、
スタンプを1つ押した。
『ごめんなさい』
可愛らしいキャラクターが土下座をしている。

すぐに鳴る通知音。
『早く、来い』の怒りの文字と、
それとは真逆の寂しそうにしているキャラクターのスタンプ。
思わず口元が弛む。

やっと身体の起き上がる準備が出来たところで
軽く身支度を整えて、
部屋を出た。

寝坊は何度目だろう?
今日も君からのLINEに起こされてしまった。

「目覚ましかけたのになぁ‥」

きっとまた、彼女にこってり怒られてしまうだろうな。
その後はきっとスイーツ巡りだ。

「胸焼けしない程度にして欲しいなぁ‥」

ポツリと呟きながら、愛しい人のもとへ。

9/14/2022, 2:40:29 PM

私は今日も働く…。

今日は小さな子供たちを迎えに行く。
正直、気が進まない。
まぁ、年齢がいくつであっても気は進まないけども。

まだ数年、数ヶ月、数日…の世界しか知らない子供たち。
もっとやりたいことがあっただろう。
もっと家族と一緒に居たかっただろう。
もっともっと…広い世界を見たかっただろう。
そんなことを考えて、足を止める。

白い靄が薄くなると子供たちが不安そうに立っていた。

「おいで。こっちだよ。」

私は努めて優しく言う。
以前、迎えに行った年配の女性に
『死神様は顔が怖いから、声だけは優しい方が良いわよ』
と言われたことがある。
彼女の命も綺麗な色をしていた。

子供たちを優しく手招きして、
靄の先にある湖に連れていく。

1人…また1人…と、静かに湖に吸い込まれて、
小さな小さな炎が浮かぶ。
しばらく浮かんでいた炎がだんだんと消えかかって、
やがて、最期の炎が消えたとき、
キラキラと輝く蒸気が上へ上へと昇っていった。

「さようなら。次に会うときは、もっと大きくなってからがいいかな。」

私は今日も働く。

人の命が燃え尽きるまでを見届ける為に…。

9/14/2022, 9:01:11 AM

夜が明ける。
月は静かに眠りについて、
太陽はのろのろと起き上がる。

私の長い1日が始まる。

そして、
太陽がそそくさと眠りにつく頃、
月はのんびりと立ち上がる。

私の長かった1日が終わる。


そうして、
毎日は慌ただしくも、
ゆったりと過ぎていく。

夜明け前、
すれ違う太陽と月は何を想うんだろう?

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