ふんわりと優しい風が吹いた。
いや、背中を押されたのか…
身体が柔らかく包まれるような感覚がした。
目を開けると、見たこともないような景色。
1人でぼんやりと突っ立っていたはずだったのだが、
隣にはまだ幼い女の子が立っていた。
「あっち」
女の子が指を指す先には
色とりどりの花が咲いている。
気が付くと自然と足が動いていた。
「行くの?」
少し心配そうに見つめる女の子に、優しく笑いかける。
「あそこで寝そべったら気持ち良さそうだよね」
「でも……」
女の子は言葉を濁す。
その意味はわかっていた。
「大丈夫だよ。案内してくれてありがとう。」
花畑に足を踏み入れる。
身体が宙に浮いたかと思うほど、軽くなった。
女の子はもういない。
9/17/2022, 2:25:35 PM