たやは

Open App
10/21/2024, 12:36:53 PM

声が枯れるまで

毎年11月になると楽しみしていることがある。全国高校サッカー選手権の県予選をママ友と見に行くことだ。もちろん私たちの子供たちはとっくに高校を卒業していて、どの高校が優勝しても私には全く関係ない。でも、県予選の決勝戦だけは見に行きたい。
自分の出身高校や子供が通っていた高校が決勝にでも残れば応援団に混じって応援するが、そんなにサッカーで有名な校ではない。ただ、住んでいる地域はサッカーが盛んで、家の近くの高校は決勝に残ることがある。その時は、生徒さんたちに混じり、声が枯れるまで応援をする。
ボールを追いかけひたむきに走り、メンパーを信じてパスを出す選手たちの姿は、ああ青春。応援したくなるに決っている。

でも最近の子たちはそれだけではない。足技が得意なドリブラー。フリーキックはめちゃくちゃ曲がり、ゴールまでの距離はお構いなくボレーシュートを打つ。昔とはレベルが違う。
そんな見ごたえのある県予選を勝ち抜き全国大会に出場しても、1回戦を突破できない年が続いている。

サッカー好きとしては寂しい。

私が中学生のころは、サッカー王国などと言われていたが、今は南のほうの県や北関東あたり、何と言っても本州最北端の県にはなかなか勝つことができない。

全国のレベルが上がっている証拠だが、それでも自分の県には全国優勝してほしいもの。そのためにもまずは、県予選を勝ち抜き全国に行く学校を決めなければならない。

今年はどここ高校が県代表となるのか。ドキドキ、ワクワクの11月が始まる。

10/20/2024, 9:15:44 PM

始まりはいつも

始まりはいつも私から。
終わりはいつもあなたから。

あなたのことが大好きだった私は、大学時代から何度もあなたに「好きです。付き合って下さい」と告白した。あなたは、いつも「友達でいいだろ」と告白をはぐらかしてばかり。でも何度目かの告白で、私たちは恋人になった。
3年ほど付き合ったが、あなたからのプロポーズの言葉はない。

「俺たち別れないか」

あなたからの別れ話しをどこか他人事のように聞いていた。

あなたと別れてから3年。私たちは会社の取り引き先相手として再会した。やっぱりあなたは運命の人と勘違いした私。

何度目かのデートで「好き。もう一度付き合って欲しい」とあなたに告げた。
「ゴメン。付き合ってる人がいる。結婚するつもりだ。」とあなたは少しはにかみながら言った。

始まりはいつも私から。
終わりはいつもあなたから。

10/19/2024, 11:51:13 PM

すれ違い

とある王国。国の面積は広大でそこに住む人々は裕福ではないが、畑を耕していれば食べる物には困らないくらいの生活ができる国でした。そんな王国の王妃さまが初めての出産を控えていたため、国中はどこかソワソワとして落ちつかない日々が続いていた春の日、王妃さまは可愛らしいお子様をお産みになった。

「オギャ〜。オギャ」
「オギャ。オギャ〜」

「2人なのか!」

王妃さまがお産みなられた赤ちゃんは双子でした。この国では双子は不幸の証とされ、忌み嫌われており、王様はさぞ驚き悲しみました。

「1人は殺してしまえ。私の子供は先に産まれた子供だけた。」

「あ、あなた。そんな!どちらも私たち子供です。殺すなんてしないで下さい。」

「黙れ!お前が双子など産むからだ。いいか、お前は1人しか産まなかった。国王としてこれは命令だ!もう1人はいない。」

王妃さまはどうしても2番に産まれた子供を殺すことができず、信頼できる古くからの自分の召使いに2番目の子供を預けることにしました。召使いは2番目の子供を自分の孫夫婦に託しました。孫夫婦は、長いこと旅をして、城下町から遠く遠く離れた小さな村に住むことにしたのです。

それから15年の時が流れました。王室に残った1番目の子供はたくましく、優しい性格の王子さまに育ちました。召使いの孫夫婦に預けられた子供は朗らかな笑顔の少女に成長しました。そう、2番目の子供は女の子だったのです。王室で育てば美しいドレスを着て、きらびやかで華やかな王女となったことでしよう。でも、田舎育ちの少女はどんな辛いことにも立ち向かえるくらいのたくましさを持ち、誰に対しても優しく慈悲深い人となったのです。

今日は王子さまのお誕生日。城下町では、王子さまのお誕生日パレードがあり、式典が開かれる日です。たくさんの人々が成長した王子さまを一目見ようと集まってきています。
あの少女は、今まで一度もパレードを観たことがありません。養父母に「城下町へは絶対に行ってはいけない」と言われていたからです。でも、16歳となる今日はこの国では成人の仲間入りとなる日です。少女は、自分の意思で幼馴染たちと初めて城下町にやって来たのです。

「へぇ〜。人が多いな〜」
「そうだね。にぎやか。」
「あっちにもお店があるよ。」

パーン。パカパーン。パーン。
ラッパの音が鳴りパレードが始まります。

早駆け足の馬を先頭に2頭立ての馬車が少女たちの前を通りかかろうとした時、強い風が吹き、少女の幼馴染の帽子が風に舞い上がります。少女は慌てて帽子を拾おうと道を歩き出し馬車の横に屈みます。馬車の窓から王子さまが少女を見ましたが、すぐに目線を上げました。少女は帽子に気を取られ馬車の中の王子さまを見ることはありませんでした。
双子とはいえ男と女、似ていない2人。
産まれた時以来会ったことのない2人。
馬車の中と外ですれ違った2人。
産まれたときは一緒。でも今は赤の他人。

2人が真実を知るのはまだ先のこと。その時に2人の本当の姿が見えるのかもしれません。どちらも優しいお子様方です。されど、魔物が住むと言われる王宮、何が起こるかは誰も知らないのです。

この国では双子は…。

10/18/2024, 9:49:16 PM

秋晴れ

結婚式と言えば6月が人気。6月の結婚式はジューン・ブライドと呼ばれ、6月に結婚した花嫁は一生幸せになると言われています。でも、6月は梅雨の時期。ジメジメして足元もビチャビチャで、気候的には結婚式に向かないような気がします。
その点、秋は夏の暑さが落ちつき、新婦さまが着物を着ても暑くなく、ノースリーブのウエディングドレスを着ても寒くなく新婦さまに優しい季節です。また、実りの秋でもあり、祝宴のお料理も華やかな彩りとなり参加者の気持ちも踊ります。

あ!申し遅れましたが、私、このチャペルのスタッフでウエディングコーディネーターをさせていただいている者です。 
このチャペルでの結婚式エピソードを聞いて下さい。あなたもここで結婚式を挙げたくなりますよ。では…

今回の新郎新婦さまは数年前に結婚されて、5歳になる娘さんがいました。結婚当時は、まだ社会人となったばかりでお金に余裕がなく、結婚式を挙げることができなかったそうです。
娘さんが3歳になった頃、娘さんに病気が見つかり入退院を繰り返すようになってしまい、家族から笑顔が消えいっそうです。みんなが悪いことばかり考えるようになり、お母さんである新婦さまも娘さんは小学校にも中学校にも通えず、ましてや結婚式なんて絶対にできない。と悲しでおられました。そんな時、お父さんである新婦さまが、みんながこんな暗い顔ばかりしてばかりではいけない。何かみんなが楽しめことはないかと、ご友人さまに相談され、ご友人さまの「お前たちの結婚式してさ、あの子にも可愛いドレス着せてあげたら喜ぶよ」とのお話しがきっかけで当チャペルに足を運んて下さいました。

式当時まで、娘さんに内緒でいろいろな準備が進んでいきました。今回は娘さんの病気もあるので、ゲストのいない家族だけの結婚式でしたが、笑顔や笑い声の溢れる結婚式となりました。
新婦さまとお揃いの白いドレスを着た娘さんは新婦さまに抱っこされ、新婦さまがヴァージンロードを歩かれで来るのをニコニコと笑顔で迎えます。

「ママとおんなじ。ママ綺麗!」

娘さんを真ん中に挟み新郎新婦で記念撮影です。娘さんは病気であること忘れさせる歩ほど元気に走り回っておられました。
そして、娘さんから新婦さまへのメッセージが読まれます。

「大好きなママへ。けっこんおめでとう。いつも一緒にいてくれてありがとう。ママがすごくきれいで嬉しいです。」

マイクを向けられた娘さんは新郎さまと一緒に精一杯声を出し、読み終わると新婦さまの元へ駆け寄られます。

新婦さまだけでなく、見ているスタッフ全員が涙、涙のもらい泣きです。

チャペルでの結婚式もつつがなく終わり、
娘さんが私たちスタッフにも「ありがとう」のメッセージを下さいました。
こちらこそ、こんな素敵な式に立ち会わせていたたきありがとうございました。


みなさんも、秋晴れの爽やかな風を感じなから結婚式をしてみませんか?

10/17/2024, 7:12:13 PM

忘れたくても忘れられない

前に借りていたアパートは、駅に近く、商店街の一本裏にあり、生活環境はすごく良かった。何より家賃が安く、事後物件を疑うほどだった。始めてアパートの部屋に入居したときは、1DKの狭さを感じさせない広い窓から入る陽の光の暖かさを気にいって住むことにした。

引っ越してきて2ヶ月が経った頃、毎晩のように金縛りに会うようになった。
時間はいわゆる丑三つ時のの2時前後。布団の中で体が動かせなくなり、手も足も力が入らなくて、「どうしょう」、「どうしょう」と思っていると胸の当たりが急に重くなった。苦しさに目を開けると、黒い影に大きな口だけの顔がニカッと口を開けて胸の上に乗ってこちらを見ていたのだ。

「うあっ」

恐ろしさのあまり変な声が出て目を覚ますパターンが1週間続いた。もうアパートで寝るのことが無理だと思い、大家さんに引っ越すことを告げた。

「あら、あなたは口しか見えなかったのね。」

は?口だけって。それでも怖くて、怖くてここに住むのは無理だ。

「そう。あれは座敷童子なのに。怖いなら仕方ないわ。きっと上手く付き合える人がいるはすだから大丈夫。」

何を言っているのか理解できなかった。座敷童子は会うと幸運になると言われる妖怪の一種だ。でも、でも、自分があの部屋で見たのは、口しかない黒い影だ。座敷童子ではない絶対に!

こうして、生活環境に恵まれた場所に建つ格安なアパートを去ることにしたが、あの影のことは、忘れたくても忘れられない体験となってしまった。
それから少しして、あのアパートが火事にあったと聞いた。おのまま住み続けたら命の保証はなかったかもしれない。大家さんのことが気かかるが、関わりたくなかった。火事のニュースでは怪我人がいなかったのが救いだ。

火事の跡地は更地になり再びアパートが建つようだ。あの影はまだ住みつくのだろうか…。

Next