たやは

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すれ違い

とある王国。国の面積は広大でそこに住む人々は裕福ではないが、畑を耕していれば食べる物には困らないくらいの生活ができる国でした。そんな王国の王妃さまが初めての出産を控えていたため、国中はどこかソワソワとして落ちつかない日々が続いていた春の日、王妃さまは可愛らしいお子様をお産みになった。

「オギャ〜。オギャ」
「オギャ。オギャ〜」

「2人なのか!」

王妃さまがお産みなられた赤ちゃんは双子でした。この国では双子は不幸の証とされ、忌み嫌われており、王様はさぞ驚き悲しみました。

「1人は殺してしまえ。私の子供は先に産まれた子供だけた。」

「あ、あなた。そんな!どちらも私たち子供です。殺すなんてしないで下さい。」

「黙れ!お前が双子など産むからだ。いいか、お前は1人しか産まなかった。国王としてこれは命令だ!もう1人はいない。」

王妃さまはどうしても2番に産まれた子供を殺すことができず、信頼できる古くからの自分の召使いに2番目の子供を預けることにしました。召使いは2番目の子供を自分の孫夫婦に託しました。孫夫婦は、長いこと旅をして、城下町から遠く遠く離れた小さな村に住むことにしたのです。

それから15年の時が流れました。王室に残った1番目の子供はたくましく、優しい性格の王子さまに育ちました。召使いの孫夫婦に預けられた子供は朗らかな笑顔の少女に成長しました。そう、2番目の子供は女の子だったのです。王室で育てば美しいドレスを着て、きらびやかで華やかな王女となったことでしよう。でも、田舎育ちの少女はどんな辛いことにも立ち向かえるくらいのたくましさを持ち、誰に対しても優しく慈悲深い人となったのです。

今日は王子さまのお誕生日。城下町では、王子さまのお誕生日パレードがあり、式典が開かれる日です。たくさんの人々が成長した王子さまを一目見ようと集まってきています。
あの少女は、今まで一度もパレードを観たことがありません。養父母に「城下町へは絶対に行ってはいけない」と言われていたからです。でも、16歳となる今日はこの国では成人の仲間入りとなる日です。少女は、自分の意思で幼馴染たちと初めて城下町にやって来たのです。

「へぇ〜。人が多いな〜」
「そうだね。にぎやか。」
「あっちにもお店があるよ。」

パーン。パカパーン。パーン。
ラッパの音が鳴りパレードが始まります。

早駆け足の馬を先頭に2頭立ての馬車が少女たちの前を通りかかろうとした時、強い風が吹き、少女の幼馴染の帽子が風に舞い上がります。少女は慌てて帽子を拾おうと道を歩き出し馬車の横に屈みます。馬車の窓から王子さまが少女を見ましたが、すぐに目線を上げました。少女は帽子に気を取られ馬車の中の王子さまを見ることはありませんでした。
双子とはいえ男と女、似ていない2人。
産まれた時以来会ったことのない2人。
馬車の中と外ですれ違った2人。
産まれたときは一緒。でも今は赤の他人。

2人が真実を知るのはまだ先のこと。その時に2人の本当の姿が見えるのかもしれません。どちらも優しいお子様方です。されど、魔物が住むと言われる王宮、何が起こるかは誰も知らないのです。

この国では双子は…。

10/19/2024, 11:51:13 PM