霜月 朔(創作)

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8/27/2025, 7:32:56 AM

素足のままで



素足のままで、
夜の砂浜を歩く。

奥底に昼間の温もりを、
抱いたままの砂粒は、
何処か生温い。

なのに、
君の手はとても冷たくて、
君が此の世から消えていく、
そんな気がして、
繋ぐ手の力を少し強くする。

君の微かな歌声が、
夜の海に響く。
空に月さえ浮かばない、
静かな新月の夜。

濁った日々の中で生きるには、
君の心は余りに透明だった。
しかし、冷たい人々の群れは、
そんな君を受け入れては、
くれなかった。

そんな君が消えていく。
こんな日が来る事は、
分かっていた。

だが、私には、
君を一人で行かせることは、
出来はしない。
初めて君と会った、あの時。
君を護ると決めたのだから。

素足のままで、
海へと歩を進める。
海水の冷たさに、
一瞬身を竦めるが、
もう、私達は止まれない。

黒く蒼い海が、
私達を包み込む。
もう、苦しまなくていいのだと、
波の音が、歌っている。
そんな気がした。


8/26/2025, 8:10:43 AM

もう一歩だけ、



俺はずっと、
君を見ていた。

君と俺は、
ずっと友達で。
きっと親友で。
でも、…それだけ。

本当は、
君の隣に立ちたい。
君の特別な存在になりたい。
そう願ってた。

だけど。
君に話し掛けると、
余りに透明に笑うから。
俺はそれ以上、
言えなくなるんだ。

もう一歩だけ、
君に近付きたい。
俺の中に、
何度も生まれ、
そして、消えていく。

もう一歩だけ、
君に近付いて、
君の視界を占領したい。
一瞬でいいから。
俺だけを見て欲しいんだ。

そんな俺の願いは、
夕暮れの風と共に、
ふわりと舞う。

手の届かない想いが、
弾けて消える。
悲しい程にあっさりと、
…何の跡も遺さず。

8/25/2025, 6:53:00 AM

見知らぬ街

8/24/2025, 8:53:03 AM

遠雷



夏の夕暮れ。
灼けるような暑さが、
少しだけ、緩む時刻。

お前は、手を伸ばせば、
届く距離にいるのに、
お前の心の在処は、
何故か遠くて、
その微笑みさえも、
作り物なのだろう。

暗い灰色の雲が、
空を覆いはじめていた。
湿り気を含む風と共に、
遠くの方から、
低く鈍い、雷の音がした。

お前は、その音に、
空へと目を向けた。
遠雷の音でさえ、
お前を動かすのに。

きっと、
俺の想いは、届かない。
どんな言葉を紡ごうとも。

遠雷は続く。
その音は、次第に、
大きくなる。

ポツリと一粒、
雫が落ちた。

8/23/2025, 6:48:26 AM

Midnight Blue



静かな静かな、蒼い夜。
君の部屋を尋ねる。

闇に揺蕩う蒼を、
窓越しにそっと眺める、
君の後ろ姿が、
余りに儚げだったから、
私は君を抱き締めた。

君は何も言わず、
身動ぎもせず、
ただ、私の腕の中で、
そっと瞳を閉じた。

Midnight Blue。
闇に溶ける蒼が、
君を、そして私を、
静かに侵食していく。

作り物の恋で構わない。 
哀しい蒼に染まった、
君の虚ろな心を、
少しでも誤魔化せるなら。

お互いの息遣いで、
罅割れた心と心を、
埋め合わせようと、藻掻く。
それが偽りだと知りながら。

夜の蒼の中で、
君の温もりを、
必死に手繰り寄せる。
君は此処に居る筈なのに、
心は此処にはなくて。

君が私の腕の中に居る、
そんな、蒼い夜だけは、
私を愛しているフリをして、
偽物の笑顔を見せて。

もうすぐ、
黒くて蒼い夜が明ける。
君と私の絆の結び目も、
夜明けと共に解けていく。


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