遠雷
夏の夕暮れ。
灼けるような暑さが、
少しだけ、緩む時刻。
お前は、手を伸ばせば、
届く距離にいるのに、
お前の心の在処は、
何故か遠くて、
その微笑みさえも、
作り物なのだろう。
暗い灰色の雲が、
空を覆いはじめていた。
湿り気を含む風と共に、
遠くの方から、
低く鈍い、雷の音がした。
お前は、その音に、
空へと目を向けた。
遠雷の音でさえ、
お前を動かすのに。
きっと、
俺の想いは、届かない。
どんな言葉を紡ごうとも。
遠雷は続く。
その音は、次第に、
大きくなる。
ポツリと一粒、
雫が落ちた。
8/24/2025, 8:53:03 AM