霜月 朔(創作)

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8/16/2025, 4:50:30 AM

!マークじゃ足りない感情



残酷な世の中で、
何も与えられず、
傷だらけになり、
社会から見捨てられ。

たったひとり。
飢えと孤独に震えていた、
ボロボロの私に、
救いの手を差し伸べてくれた、
優しい貴方。

冷たく醜い他の人間とは違う、
貴方という人を知り、
私は初めて、
愛を知りました。

私にとって、
貴方は世界の全てだったのに、
貴方には、
私以外の世界が存在したのです。

だから、私は。
誰も知らない場所に、
貴方を閉じ込めました。
貴方が私以外の世界を、
二度と見ないように。

陽の射さない、地下の牢獄。
蝋燭の僅かな灯りが、
仄かに貴方と私を照らし、
湿り気を含んだ空気が、
二人を包み混みます。

もう、苦しまなくていいのです。
貴方を苦しめる物は、
この部屋には、
何一つ無いのですから。

…そう。
私が貴方に捧げたのは、
!マークじゃ足りない感情。
二人きりの永遠の世界。

誰よりも、愛しい貴方。
私はここに居ます。
ですから。
このまま、二人で…。

8/15/2025, 6:57:54 AM

君が見た景色



小さな頃から、
ずっと一緒に居た、
俺と君。

握り締めた小さな掌。
俺を見上げる、綺麗な瞳。
ずっと、ずっと、
護りたいと思ってた。

優しい黄色の菜の花と、
桃色の春の風。
入道雲と夏の空の色、
白と蒼のコントラスト。
赤や黄色に染まる、
山や木々の切なさ。
物悲しい枯れ木に咲く、
冷たい白い雪化粧。

君と俺は、
幾つもの季節を繰り返した。
お互い、少しずつ、
大人になっていったのに、
俺はそれを認めたくなかったんだ。

俺が君との想い出の中に、
立ち止まっている間に、
君は、外の世界へと、
飛び出していった。

気が付けば。
君と隣には、
俺の知らない男が居て、
君は幸せそうに笑っていた。

ねぇ。
俺が過去の夢の中にいた間に、
君が見た景色は、
どんな色をしていたの?

それを君に聞くことは、
出来ないのかな?
だって、俺は、
大人になった君の隣には、
立てなかったんだから。

8/14/2025, 8:44:44 AM

言葉にならないもの

8/13/2025, 6:52:44 AM

真夏の記憶



夏が来る度に、思い出す。
眩しい程に青い空と、
綿菓子の様な白い雲を、
憎々しく見上げた、
幼い日の記憶。

無遠慮に照り付ける太陽。
止め処なく流れる汗は、
何も持たないオレから、
容赦無く、体力を奪っていく。

華やかな街の裏にある、
吹き溜まりの様な、
街の片隅の荒屋が作る、
僅かな日陰に、身を沈める。

食べ物も、飲み水も、
身を隠す場所さえなく、
涼風の吹く、夜の訪れを、
ひたすら待ち続ける、
真夏の記憶。

太陽の照り付ける夏が、
キラキラした季節だと云うのは、
一部の恵まれた人間だけで、
そんな人間の踏み台になる、
多くの持たざる者は、
夏の暑さに苦しめられるだけ。

真夏の記憶。
乾きと飢えと痛みの、
苦しみの記憶。

そして、今年も、
傍若無人な夏がやってくる。

8/12/2025, 8:26:36 AM

こぼれたアイスクリーム




夏の昼下がり。
一人きりで過ごす夏の、
寂しさを誤魔化すように、
アイスクリームを愉しむ。

欠けた心を忘れたくて、
アイスクリームの冷たさに、
酔った振りをする。

夏の陽射しに負けて、
溶けていくアイスクリーム。
透明に輝く硝子の器から、
こぼれたアイスクリームを、
指で掬い取る。

甘くて、冷たくて、
でも、少しだけ温くて。
柔らかく指に纏わりつく、
溶けかけのアイスクリーム。
甘い香りが、鼻腔を擽り、
私を誘惑する。

こぼれたアイスクリーム。
今でも忘れられない元恋人。
私の手から溢れ落ちた、
甘くて柔らかな、時間。
戻らない、過去。

そっと、指を舐める。
まるで、甘い想い出に、
口付けるように。

だけど。
ベタベタに甘い筈の、
蕩けたアイスクリームは、
何故か、ほんのり苦くて。

明日も、きっと。
暑い日になるだろう。

窓の外の青い空を見詰め、
まだ疼き続ける、
心の傷の痛みを誤魔化すように、
無理矢理、微笑んでみせる。

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