霜月 朔(創作)

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君が見た景色



小さな頃から、
ずっと一緒に居た、
俺と君。

握り締めた小さな掌。
俺を見上げる、綺麗な瞳。
ずっと、ずっと、
護りたいと思ってた。

優しい黄色の菜の花と、
桃色の春の風。
入道雲と夏の空の色、
白と蒼のコントラスト。
赤や黄色に染まる、
山や木々の切なさ。
物悲しい枯れ木に咲く、
冷たい白い雪化粧。

君と俺は、
幾つもの季節を繰り返した。
お互い、少しずつ、
大人になっていったのに、
俺はそれを認めたくなかったんだ。

俺が君との想い出の中に、
立ち止まっている間に、
君は、外の世界へと、
飛び出していった。

気が付けば。
君と隣には、
俺の知らない男が居て、
君は幸せそうに笑っていた。

ねぇ。
俺が過去の夢の中にいた間に、
君が見た景色は、
どんな色をしていたの?

それを君に聞くことは、
出来ないのかな?
だって、俺は、
大人になった君の隣には、
立てなかったんだから。

8/15/2025, 6:57:54 AM