こぼれたアイスクリーム
夏の昼下がり。
一人きりで過ごす夏の、
寂しさを誤魔化すように、
アイスクリームを愉しむ。
欠けた心を忘れたくて、
アイスクリームの冷たさに、
酔った振りをする。
夏の陽射しに負けて、
溶けていくアイスクリーム。
透明に輝く硝子の器から、
こぼれたアイスクリームを、
指で掬い取る。
甘くて、冷たくて、
でも、少しだけ温くて。
柔らかく指に纏わりつく、
溶けかけのアイスクリーム。
甘い香りが、鼻腔を擽り、
私を誘惑する。
こぼれたアイスクリーム。
今でも忘れられない元恋人。
私の手から溢れ落ちた、
甘くて柔らかな、時間。
戻らない、過去。
そっと、指を舐める。
まるで、甘い想い出に、
口付けるように。
だけど。
ベタベタに甘い筈の、
蕩けたアイスクリームは、
何故か、ほんのり苦くて。
明日も、きっと。
暑い日になるだろう。
窓の外の青い空を見詰め、
まだ疼き続ける、
心の傷の痛みを誤魔化すように、
無理矢理、微笑んでみせる。
8/12/2025, 8:26:36 AM