霜月 朔(創作)

Open App

真夏の記憶



夏が来る度に、思い出す。
眩しい程に青い空と、
綿菓子の様な白い雲を、
憎々しく見上げた、
幼い日の記憶。

無遠慮に照り付ける太陽。
止め処なく流れる汗は、
何も持たないオレから、
容赦無く、体力を奪っていく。

華やかな街の裏にある、
吹き溜まりの様な、
街の片隅の荒屋が作る、
僅かな日陰に、身を沈める。

食べ物も、飲み水も、
身を隠す場所さえなく、
涼風の吹く、夜の訪れを、
ひたすら待ち続ける、
真夏の記憶。

太陽の照り付ける夏が、
キラキラした季節だと云うのは、
一部の恵まれた人間だけで、
そんな人間の踏み台になる、
多くの持たざる者は、
夏の暑さに苦しめられるだけ。

真夏の記憶。
乾きと飢えと痛みの、
苦しみの記憶。

そして、今年も、
傍若無人な夏がやってくる。

8/13/2025, 6:52:44 AM