霜月 朔(創作)

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12/18/2024, 6:47:38 AM

とりとめのない話



冬の夜、月の青い光が、
凍えるオレの心を、
更に冷たく蒼に染める。

隣に寝転ぶアナタは、
夢の世界へと、
半ば足を踏み入れながら、
オレのとりとめもない話に、
適当な相槌を返す。

オレは溜息交じりに、
大きく寝返りを打つ。
その気配に気づいたアナタは、
重たそうな瞼を、ほんの少し開けて、
少し乱暴だけど、何処か優しく、
オレの髪を撫でた。

その手の温もりが届く。
けれど、心の深い部分には、
触れてはくれない。
だけど、心の氷河は解けず、
静かに孤独が漂う。
それでも、この温もりは、
オレの身体を僅かに暖める。

オレは、ぽつぽつと語りかける。
語る言葉の端々に、
アナタへの想いと、切なさが混じる。
ずっと言えずにいた、
アナタへの憧れ、そして…恋慕。

きっと、言葉が届く事は無く、
届かせる心算もない。
だって、これは、
只の独り言だから。

次第にアナタの呼吸が深くなる。
寝息がリズムを刻み、
オレの声を覆い隠していく。

それでも、オレは、
とりとめのない話を、語り続ける。
無意味な言葉を、並べ立てる事で、
凍える心を、少しでも埋めたくて。

ふと、アナタの腕が動き、
ただ黙って、オレを抱き締めた。
何処か不器用なアナタが、
オレの心の奥に沈む孤独に、
そっと、触れようとしてくれる。
そんな気がした。

オレは静かに目を閉じた。
この冬の夜が、
永遠に続けばいいのに、と、
そんな、叶わない願いを、
胸に押し殺して。

12/17/2024, 6:15:23 AM

風邪



君の名前を呼ぶように、
喉が咳を吐く。
熱を帯びた息が、
深い溜息に変わって消えた。
何も、残さずに。

ベッドで布団に包まる。
熱だけが、孤独な私を抱き締める。
…お前は弱い。だから逃げたんだ。
そんな声なき声が、冷えた胸に軋む。

あの日、君と袂を分かってから、
私は、小さな傷さえも、
隠すようになった。
薬箱の中の薬瓶にに触れながら、
治療よりも、記憶を避けてしまう。

これは、ただの風邪だと、
自分に言い聞かせる。
だが、この熱は、どこか違う。
君が残した想い出の、
燃え殻なのか。

机の上に、風邪薬。
君の記憶を、薬と共に、
冷たい水で、無理矢理飲み下す。
二度と戻らない、
君の隣にいた日々。

風邪が治れば、
この胸の傷も消えるだろうか。
そんな浅ましいことを考え、
眠れぬ夜、静かな部屋に独り、
私は、溜息に似た咳をする。

12/16/2024, 6:55:57 AM

雪を待つ



冬の日。
空は、重い灰色の雲に覆われ、
身を切る様な北風が、
枯れ葉を巻き上げながら、
吹き抜けていきます。

ですが、貴方は、
厚手のコートを纏い、
子供の様な無邪気な瞳で、
空を見上げています。

雪を待つ、貴方の笑顔は、
冬の光のように温かく、
私には眩し過ぎて、
私は、胸に溢れる想いを押し殺し、
ただ静かに微笑む事しか出来ません。

雪を待つ、貴方と私。
私も雪を待ちます。
真白に降り積もる雪が、
罪の赤に塗れた、私の手と、
醜い黒に覆われた、私の心を、
雪の白い結晶が、
包み隠してくれるのではないか、と。

身勝手な願いを抱き、
貴方の隣に立ち、
私は、灰色の空を見上げます。

白く儚い雪が、ひらひらと、
空から舞い落ちてきます。
…私と貴方の夢を乗せて。

12/15/2024, 7:41:17 AM

イルミネーション



冬の街に灯る明かり。
冷たい風が頬を刺す中、
何処か温もりを感じる、
イルミネーション。

行き交う恋人たち。
手を繋ぐ家族。
微笑みながら、
足を止めるその姿に、
煌めく光の中に、
冬の街が息衝いている。

そんな街を、
俺は友達と歩いてた。
寒さに背中を丸め、
つい、早足になる。
だけど、不意に、
イルミネーションの光に惹かれ、
歩みが緩んだんだ。

その華やかな煌めきを、
目を細めて、見詰める君。
だけど、俺は。
イルミネーションの煌めきよりも、
君の瞳の輝きに、
目を奪われていたんだ。

隣に立つ君の手に、
俺の手が微かに触れる。
その瞬間、胸が高鳴る。
心臓が、音を立てて跳ね上がる。

だけど…俺には、
その手を握る勇気なんか、
何処にも無くって。
離れてしまうのは、寂しいのに、
どうしても、踏み出せないんだ。

触れた指先の温もりが、
冷えた空気の中で、
激しく、俺の心を揺さぶる。
冬の夜に華やかに煌めく、
イルミネーションよりも、
ずっと…鮮烈に。

12/14/2024, 6:44:52 AM

愛を注いで



夜の闇の底で一人、
貴方の名を呟く度、
乾き切った私の胸に、
冷たい影が落ちます。

孤独に震え、
血に塗れたこの手は、
何を抱けるのでしょうか。

貴方の声は、酷く遠くて。
耳を塞ぐのは自分だと知りながら、
尚も私は暗闇に縋るのです。

貴方の瞳に映るのは、
貴方の温もりを求めた、
…浅ましい私の影。

愛を注いで、と、
貴方に願う度に、
溢れる筈の温もりが、
冷たい涙の雨となるのです。

貴方が私の全てに、
触れてはくれないのは、
この罪深い心の所為ですか?

崩れた瓦礫のような感情が、
胸の中で音もなく崩れ落ちます。
貴方の全てが欲しい…。
私の欲望が、黒く渦巻き、
私を支配します。

心も身体も魂も、
貴方の全て私のものにして、
その吐息の一欠片さえ、
奪い尽くします。

それでも、願ってしまいます。
愛を注いで、と。
貴方を殺めようとしたこの手で、
貴方を求めてしまう。
浅はかな愚かさと、愛と狂気の間で。

夜が更けても、夜が明けても、
貴方の声は届きません。
愛を注ぐ器を失った私には、
貴方から消えていく温もりが、
最期の記憶になるのでしょう。


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