星座
ボクは独り、夜空を見上げた。
星たちは、何時も変わらず、
優しく、静かに瞬いてた。
夜空に一つずつ輝く星も、
線を繋げば、星座になって、
皆、誰かと繋がってる。
なのに。
ボクは…独りきり。
冷たい夜風が頬を撫でる。
何時か、ボクも、
誰かと繋がれるのかな?
こんなボクでも、
誰かの一部になれるのかな?
頭上に煌めく、星座みたいに、
誰かと形を成せるなら。
そんな、願いを抱いて、
星空を眺める。
見上げた空には、大熊座。
北斗七星を指でなぞる。
遠くで、誰かが、
同じ星を見てる気がした。
ボクは一人じゃない。
そう信じて。
そう信じたくて。
ボクはそっと、
夜空に手を伸ばした。
踊りませんか?
蒼く冷たい月明かりに照らされた、
静かな部屋で、
失われた愛を取り戻すかの様に、
記憶の中のあの人と踊る貴方。
夢と現実の狭間を彷徨う貴方は、
一人きり。
私と、踊りませんか?
私は、そっと声を掛けます。
虚空に響くその言葉に、
一瞬、貴方の動きが止まります。
遠い過去を探るように、
悲しみに濡れた、
貴方の蜂蜜色の瞳が、
ゆっくりと私を捉えました。
私はそっと手を差し出します。
貴方は儚げな笑みを浮かべて、
優しく私の手を取りました。
静かにステップを刻み始めます。
月明かりだけが、
私と貴方を優しく照らし、
冷たい夜の静寂の中、
私と貴方の影が、
一つに溶けていきます。
今、貴方と踊っているのは、
ずっと貴方の心に住み続けている、
あの方ではなく、私なのだと、
貴方に気付いて欲しくて。
私は貴方に身を任せるのです。
巡り会えたら
俺とお前は。
同じ年に生まれ。
同じ国で育った。
だが。
裕福な家庭に育ったお前と、
貧しく荒んだ家庭で育った俺は、
住む世界が、余りに違い、
幼い頃に巡り会う事は無かった。
悲しく辛かった幼い頃に。
周りに裏切られたあの頃に。
お前に巡り会えていたら。
どんなに良かっただろう。
お互いが、こんな不幸な運命に、
雁字搦めになる前に、
お前と巡り会えていたら、
俺とお前は、
ごく普通の友人に、
そして、在り来りな恋人に、
なれたのだろうか。
だが。
それは叶わぬ夢。
俺とお前は、
酷く残酷な状況で、
巡り会ってしまった。
もしも。来世で、
再びお前と巡り会えたら。
俺はお前に手を差し出すから、
俺の手を取って欲しい。
そして、
俺はお前にこう言うんだ。
…今度こそ二人で幸せになろう。
と。
奇跡をもう一度
目を覚ますと。
そこは、見覚えのある部屋。
重々しい石の壁に囲まれ、
小さい明かり取りの窓には、
冷たい鉄格子。
ここは…。
嘗て私が囚われていた場所。
悪夢の残骸。
私は、たった独り。
手も足も、鉄の鎖に繋がれ、
私の生殺与奪の権は、
見知らぬ誰かのもの。
助けて下さい、と、
ありったけの声を張り上げ、
身を捩ります。
しかし、他の人の気配は無く、
私の声が虚しく響くだけ。
嘗て囚われていた、
この部屋から抜け出し、
貴方に拾われた、あの日の様に。
奇跡が起こりはしないかと、
強く願い、叫びます。
奇跡をもう一度。
もう一度。
私を助けて下さい。
私を見つけて下さい。
私を抱きしめて下さい。
そして。
…私を愛して下さい。
たそがれ
西の空が赤く染まる、
夕暮れ時は、何処か物悲しくて…。
塒に帰る烏達の鳴き声に、
二度と帰れない故郷を思い、
零れそうになる涙を堪え、
大きく息を吐きます。
黄昏。赤から橙、
そして、紫のグラデーション。
その刹那な時間に、
何故か悲しみが溢れます。
まるで黄昏泣きをする赤子の様に、
理由もなく、悲しみに支配され、
何の衒いも無く、
声を上げて泣くことが出来たなら。
ですが、貴方には、
本当の私を見せたく無いのです。
何故なら、貴方の前では、
私は理想の私で在りたいから。
だから、私は。
黄昏に、独り、
心の中で、泣くのです。
何時か…。
刹那な黄昏の時間に、
貴方の胸の中で、泣いてみたい。
そんな、気恥ずかしい願望は、
心の奥に鍵を掛けて、
無かった事にしましょう。