霜月 朔(創作)

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9/30/2024, 4:28:26 PM

きっと明日も


買い物の帰り道。
街中は綺麗な夕焼けの、
オレンジ色に染まってた。

街を行き交う人々は、
何処か急ぎ足。
きっと大切な人の待つ家に、
帰るんだろう。

だけど、俺は…。
独りぼっち。
俺の隣は、ずっと空いたまま。
失恋の傷跡がちくりと痛む。

空を見上げると。
夕焼け色の空は、
少しだけ夜に近付いてて、
一番星が、輝いてた。

だから。
『きっと明日も、
良い日になるよ』って、
涙堪えて、茜色の空を眺めて、
そっと、呟いてみる。

『ほらね?
さっき迄あんなに悲しかったのに、
不思議と元気が出て来たでしょ?』
俺は俺に、魔法をかける。

きっと明日も、
…良い天気。

9/29/2024, 5:56:51 PM

静寂に包まれた部屋



独り、書類に向かい合います。

窓の外は、夜の闇を纏い、
半月は、西の空へと傾き、
星々が煌めいています。

私の目の前には、
山程の領収証と帳簿。
見たくない赤い数字。
深夜になっても、
終わらない書類の山。

皆が寝静まる深夜。
襲い来る疲労感。
耐え難い眠気。
思わず、溜息が溢れます。

空に瞬く星の様な、
貴方の美しい瞳を。
初夏の木漏れ日の様な、
貴方の明るい微笑みを。
護る事が出来るのなら。

どんな辛い事も、
私は、耐える事が、
出来るのです。

夜の静寂に包まれた部屋に、
私の声が、小さく響きます。

普段は決して、
言の葉に乗せてはならない、
そんな想いを。
今だけは、口にする事を、
許して下さい。

貴方を…愛しています。

9/28/2024, 6:03:55 PM

別れ際に


久しぶりに再会した、
懐かしい、幼馴染。

子供の頃から、君の事を、
憎からず思ってたけど、
ずっと言えないまま、
それぞれ、大人になって、
それぞれ、故郷を離れた。

何年も経って再会した君は、
すっかり大人になってた。
泣き虫で、怖がりで。
直ぐに俺の背中に隠れてた君は、
何時の間にか、優しくも、
しっかり者になってた。

俺は君の事を、
忘れられずに居たけれど、
気になってたのは、
俺だけだったみたい。
暫く会わない間に、
君には、恋人が出来てた。

君との別れ際。
思わず『またね』と言いそうになって、
慌てて、言葉を飲み込む。

君と俺。
これから二度と交わらない道を、
歩いて行くんだから。

別れ際に贈る言葉は、
『さよなら、元気でね』。

…君の幸せを、
遠くから、祈るよ。

9/27/2024, 4:40:44 PM

通り雨



街で偶然見掛けた、
昔の恋人。
彼の隣には、
優しい笑顔で微笑む人。

絡める様に手を繋ぎ、
親しげに話しながら、
街を歩いて行く。

独りきりで眺めている私になんか、
気付く事もなく、
想い出のあの人は、
新しい恋人と街に消えて行った。

私の頬を、涙が伝う。
もう、忘れた心算だった。
涙なんか疾くに涸れたと思っていた。
なのに、涙が零れ、胸は痛む。

通り雨が降り出す。
さらさらと僅かに音を立てて、
街を、道を、木々を、
そして、私を。
別け隔てなく濡らす。

傘を差すことなく、
街を歩き続ける。
雨粒が、情けなくも涙に濡れた、
私の頬を隠してくれる。
そんな気がした。

止まぬ雨は無い。
そんな言葉なんて、
今の私には、到底、
信じる事は出来ない。

9/26/2024, 5:18:19 PM

秋🍁


冬は、死の季節。
緑は枯れ、葉は落ち、
…そして朽ちる。

そんな冬を前に、
生き物は、秋という季節に、
限られた生を享受する。

秋の赤や黄色に、
美しく彩られた景色は、
まるで、モノクロの冬を迎える前の、
最後の晩餐の様だ。

秋は…美しい。
風に揺れる曼珠沙華、
それは、忍び寄る、
冷たい冬という死の気配。

でも、きっと。
大切な君と一緒なら。
死の国の、地獄の業火さえ、
この見事な、秋の赤の様に、
美しく見えるだろう。

私は、大丈夫だよ。
君が望むなら、
私は、何処へでも、
一緒に行くから。

だから。
繋いだこの手を、
決して、離さないと、
約束して欲しい。

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