窓から見える景色
窓から外を眺める。
この部屋から見える景色も。
廊下の窓から見える景色も。
屋上から見える景色も。
貴方との想い出が詰まってる。
窓から見える景色は、
貴方がいた頃と変わらず、
季節の移ろいを見せ、
その時々の様々な表情を、
見せてくれているのに。
貴方は…もう、居ない。
この世の何処にも、居ない。
貴方と一緒に眺めた、
この窓から見える景色は、
少しずつ、姿を変えていく。
それが酷く哀しくて。
窓から見える景色が
涙に滲んで見える。
そして、俺は。
貴方が居るだろう天に向かって、
そっと手を伸ばすんだ。
形の無いもの
貴方が私にくれたもの。
大人として必要な、
一般教養、知識、マナー。
読み書き、計算能力。
社会で生きる為の、
一般常識、生活の知恵。
コミニュケーション能力。
心が傷付かない為の、
ストレス対処法、
アンガーマネジメント。
生活を豊かにする為の、
音楽や美術等の芸術、
スポーツ、季節のイベントの経験。
そして。
沢山の優しさと、
深い…愛情。
貴方が私にくれたものは、
どれもこれも、全て、
形の無いもの…ですが、
とてもとても、
大切なものばかりです。
そう。
ペアリングの様に、
形のあるものでは、
ないけれど。
貴方の愛情に、
嘘は無い筈…ですから。
ジャングルジム
何もかも、上手く行かなくて、
全部、嫌になっちゃった時は、
庭の片隅にある、
大きな木に登るんだ。
大人になって、木登りなんて、
誰もやらないから。
此処はボクだけの、
秘密の場所。
公園で遊ぶ子供達が、
ジャングルジムに登る様に、
ボクは、慣れた身の熟しで、
木に登っていく。
高い木の上から見ると、
嫌になった事なんか、
ちっぽけに思えて。
少しだけ元気になれるから。
そして、ボクの足元には。
突然姿を消したボクを、
心配そうに探してる…アイツの姿。
一番早く、ジャングルジムの
一番上迄登った子供の様な、
不思議な優越感に浸って。
ボクは、木の上から、
ボクを探す、アイツを眺めて、
こっそり微笑むんだ。
声が聞こえる
俺は地に伏した。
…もう、駄目だ。
身体に力が入らない。
こんな残酷な世の中で、
今日迄、野垂れ死ななかったのは、
単に、幸運だったに過ぎない。
俺は、目を閉じた。
大きく息を吐く。
この世に執着は、無い。
こんな世の中、
生きていたって、
苦しいだけ、だ。
声が聞こえる。
彼奴が…俺を呼んでいる。
彼奴がいたから、
こんな酷い世の中で、
俺は何とか正気で居られた。
俺は、此処で、
諦める訳にはいかない。
声が聞こえる。
大切な彼奴の声が。
俺は答える。
…直ぐに、帰る。
心配するな。
俺は、目を開けた。
そして。
残された力を振り絞り、
再び立ち上がろうと、
足掻き始めた。
秋恋
少しだけ、涼しくなった風が、
庭に咲いている、
秋桜の花を、
そよそよと揺らす。
薄紅色の秋桜。
可憐で何処か華奢な、
その姿に、秋を想う。
夏が終わり、
秋がやってくる。
秋の空。秋恋。
行き場を失った、私の恋心。
花言葉に私の想いを託して、
忘れられない、想い出の彼に、
黒い秋桜を贈ろうかな。
黒い秋桜の花言葉は…。
『移り変わらぬ気持ち』
例え貴方が、
私を忘れてしまっても、
私はまだ…。
貴方を、愛してるんだ。