大事にしたい
私は、生きる為に、
罪を重ねてきました。
しかし恐らく、人は私を、
罪人とは呼ばないでしょう。
誰しも生きる為に、
牛や豚、鶏や魚、そして植物等。
様々な生命を、喰らっていながら、
それを罪とは言わない様に。
ですが。
私の手は、血に塗れ、
私の魂は、穢れています。
こんな私が。
貴方に惹かれてしまったのです。
どんなに不遇な環境でも、
どんなに他人に虐められても、
太陽の様に輝く魂を失わない、
そんな貴方に。
こんな汚れきった私が、
貴方に触れる事は、
赦されない事は、
分かっている心算です。
ですから。
私の願いは、一つ。
貴方の美しい魂を、
大事にしたい。
只、それだけです。
時間よ止まれ
夜の帳が降りて、
皆が寝静まる時間。
それは、私と貴方が
仮初めの恋人になる、
魔法が掛かる時。
貴方は私に、
優しく微笑んで、
愛の言葉を紡ぐから。
私は貴方に、
そっと口付けて、
愛の言葉を返すんだ。
愛しい貴方が、
今は、私の腕の中にいる。
だけど。
時間よ止まれ、と、
私がどんなに願っても。
それは叶わぬ夢。
貴方は、夜明けと共に、
私の元から去り、
独りきりの部屋に戻って、
何時戻るとも知れない、
貴方の本当の恋人の、
帰りを待つのだろう。
貴方が居なくなった部屋で。
私は、独りきり。
貴方が残した僅かな温もりを、
そっと抱いて、眠ろう。
夜景
静かな夜。
街の外れの高台から、
街を眺めます。
普段は、何処も彼処も汚くて、
醜い人間の欲望渦巻く、
私の住む街も、
今だけは美しく見えます。
夜景が綺麗なのは、
人々が灯す灯りが、
あるからだと思うよ。
何度、他人に傷付けられても、
人間という存在を、
信じ続けている貴方は、
夜景にさえ、人間の営みを、
感じるのでしょう。
嫌なものを全て隠す、
宵闇と家々の灯りが、
美しくて哀しくて。
私は、涙を隠して、
そっと貴方に寄り添います。
こんな不完全な私を、
そっと抱き寄せて下さった、
貴方の温もりが、
眼の前の夜景を、
より美しいものに、
変えてくれました。
また、貴方と二人で、
美しい夜景を眺めたいです。
今度は、何処か遠い旅先の、
夜景を眺めるのも、
悪くないですよね。
花畑
俺は、向日葵畑が、
好きだった。
真夏の真っ青な空の元、
鮮やかな黄色が、
まるで小さな太陽の様に、
元気に輝いている。
そんな、花畑。
向日葵畑は、
未だ家族が側に居た頃の、
幸せだった想い出の欠片だ。
しかし。
家族を失ってからは、
俺には、花畑に行く気力なんて、
何処にも無かった。
だけど。
お前と出逢って、
漸く、思い出したんだ。
真夏の花畑。
向日葵の美しさを。
今度。
一緒に、向日葵畑に行かないか?
そして。出来たら、
お前の好きな、花が咲く花畑に、
俺を、連れて行ってくれないか?
空が泣く
気が付いたら、
俺はたった一人だった。
この間迄、俺の隣で、
一緒に笑っていた友は、
今は、土の下で眠っている。
昨日迄、俺と一緒に、
戦っていた仲間は、
今日、この世を去った。
少し前迄、
俺は沢山の人に囲まれて、
在り来りな人生を、
歩んでいた筈なのに。
今は…独りぼっち。
心にぽっかり穴が空いた。
悲しいのに、
泣き喚く力さえ、
無くしてしまったみたいで。
重たい曇りから、
ポツリと、雨粒が落ちてきた。
空が泣く。
泣く事さえ出来ずにいる、
俺の代わりに、
泣いてくれて居るのだろうか…。