霜月 朔(創作)

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声が聞こえる


俺は地に伏した。
…もう、駄目だ。
身体に力が入らない。

こんな残酷な世の中で、
今日迄、野垂れ死ななかったのは、
単に、幸運だったに過ぎない。

俺は、目を閉じた。
大きく息を吐く。

この世に執着は、無い。
こんな世の中、
生きていたって、
苦しいだけ、だ。

声が聞こえる。
彼奴が…俺を呼んでいる。

彼奴がいたから、
こんな酷い世の中で、
俺は何とか正気で居られた。

俺は、此処で、
諦める訳にはいかない。

声が聞こえる。
大切な彼奴の声が。

俺は答える。
…直ぐに、帰る。
心配するな。

俺は、目を開けた。
そして。
残された力を振り絞り、
再び立ち上がろうと、
足掻き始めた。

9/22/2024, 5:28:39 PM