霜月 朔(創作)

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たそがれ


西の空が赤く染まる、
夕暮れ時は、何処か物悲しくて…。

塒に帰る烏達の鳴き声に、
二度と帰れない故郷を思い、
零れそうになる涙を堪え、
大きく息を吐きます。

黄昏。赤から橙、
そして、紫のグラデーション。
その刹那な時間に、
何故か悲しみが溢れます。

まるで黄昏泣きをする赤子の様に、
理由もなく、悲しみに支配され、
何の衒いも無く、
声を上げて泣くことが出来たなら。

ですが、貴方には、
本当の私を見せたく無いのです。
何故なら、貴方の前では、
私は理想の私で在りたいから。

だから、私は。
黄昏に、独り、
心の中で、泣くのです。

何時か…。
刹那な黄昏の時間に、
貴方の胸の中で、泣いてみたい。
そんな、気恥ずかしい願望は、
心の奥に鍵を掛けて、
無かった事にしましょう。

10/1/2024, 5:16:06 PM