踊りませんか?
蒼く冷たい月明かりに照らされた、
静かな部屋で、
失われた愛を取り戻すかの様に、
記憶の中のあの人と踊る貴方。
夢と現実の狭間を彷徨う貴方は、
一人きり。
私と、踊りませんか?
私は、そっと声を掛けます。
虚空に響くその言葉に、
一瞬、貴方の動きが止まります。
遠い過去を探るように、
悲しみに濡れた、
貴方の蜂蜜色の瞳が、
ゆっくりと私を捉えました。
私はそっと手を差し出します。
貴方は儚げな笑みを浮かべて、
優しく私の手を取りました。
静かにステップを刻み始めます。
月明かりだけが、
私と貴方を優しく照らし、
冷たい夜の静寂の中、
私と貴方の影が、
一つに溶けていきます。
今、貴方と踊っているのは、
ずっと貴方の心に住み続けている、
あの方ではなく、私なのだと、
貴方に気付いて欲しくて。
私は貴方に身を任せるのです。
10/4/2024, 6:26:22 PM