霜月 朔(創作)

Open App

踊りませんか?


蒼く冷たい月明かりに照らされた、
静かな部屋で、
失われた愛を取り戻すかの様に、
記憶の中のあの人と踊る貴方。

夢と現実の狭間を彷徨う貴方は、
一人きり。

私と、踊りませんか?
私は、そっと声を掛けます。
虚空に響くその言葉に、
一瞬、貴方の動きが止まります。

遠い過去を探るように、
悲しみに濡れた、
貴方の蜂蜜色の瞳が、
ゆっくりと私を捉えました。

私はそっと手を差し出します。
貴方は儚げな笑みを浮かべて、
優しく私の手を取りました。

静かにステップを刻み始めます。
月明かりだけが、
私と貴方を優しく照らし、
冷たい夜の静寂の中、
私と貴方の影が、
一つに溶けていきます。

今、貴方と踊っているのは、
ずっと貴方の心に住み続けている、
あの方ではなく、私なのだと、
貴方に気付いて欲しくて。
私は貴方に身を任せるのです。

10/4/2024, 6:26:22 PM