霜月 朔(創作)

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7/7/2024, 6:44:58 PM

七夕


七夕の夜は晴れて欲しい。
と君は云う。

その君の言葉に、俺は、
天の川に隔てられる、
哀れな牽牛星と織女星に、
君自身と君の想い人との関係を、
重ねているのかと思い…。

君にそこまで慕われる相手は、
どんな人なのか。
俺は知らないし、知りたくないけど。
俺は、君への恋心を押し隠し、
ズキズキと痛む胸の痛みを堪えながら、
笑顔の仮面を被って。

俺が君達の鵲になろうか。
と告げたんだ。

すると君は、
急に顔を朱に染めて、
年に一度しか会えない彦星と織姫が、
雨が降って会えないのは、
気の毒だと思っただけだ。
なんて、余りに優しい事を言うから。

雨の所為で彦星に逢えなくて、
織姫が流す涙が雨になる。
それが七夕の雨…催涙雨だなんて。
優しい君には悲しいだろう言い伝えは、
心の中にしまっておいて。

七夕に雨が降っても、
彦星と織姫が逢えるように、
鵲は毎年頑張ってるんだよ?
と、俺は君に嘘を吐く。

そんな俺の言葉に。
それなら安心したと、微笑む君が、
俺には余りに眩しくて。

俺は君の彦星にはなれないだろうけど。
雨の七夕でも、君を彦星の元に送り届ける、
鵲にはなりたい、と。
哀しみを堪えて、微笑むんだ。

7/6/2024, 5:35:48 PM

友だちの思い出



幼い頃からずっと。
私には友達が、居ませんでした。
その所為か、私は、
友達という関係の存在を、
知識としては知っていても、
感覚としては、理解出来ずにいるのです。

友達とは、何なのでしょう?
同僚、知り合い、顔見知り…。
それらの人とは、何が違うのでしょう?

家族でもない人に、
心にも身体にも、鎧を着ていない、
無防備な姿を曝す等、
余りに危険な行為ではないのでは、と、
私は考えてしまうのです。

友達の居ない私には、
友達の思い出はありません。
でも。
貴方が、貴方以外の人と過ごす事も、
大切な事だと教えて下さったので、
頑張ってみようと思います。

…もし。
私に、友達との思い出が出来たら、
貴方は、私を褒めてくれますか?

7/5/2024, 5:39:07 PM

星空



飽きずに振り続ける初夏の雨。
曇天の日が続く梅雨の季節。
その合間に。
ふと顔を見せる、星空。
何時もより、少しだけ貴重に思える、
夜半の星の煌めき。

一際明るい星。
目を凝らさなければ見えない小さな星。
ぼんやりと輝く星。
青い星、赤い星、白い星。
星空は、様々な星を、
全て受け入れて、
こんなにも美しい。

大人も子供も。
豊かな人も貧しい人も。
善人も悪人も。
夜空を振り仰ぎ見れば、
星達は、等しく輝いてくれるんだ。

その事が、俺の不甲斐無さを、
星達が受容してくれているみたいで、
明日は会えないかも知れない綺羅星に、
そっと、溜息を零す。

こんな駄目な俺でも。
星だけは赦してくれるんだって。
星空の下で、少しだけ自惚れてみるんだ。

7/4/2024, 6:27:22 PM

神様だけが知っている


何故、自分は生きているのだろう。

戦いに明け暮れ、
何度も酷い怪我を負った。
だが、死ななかった。

身体の一部を失い、
生死の境を彷徨った。
それでも、死ねなかった。

昨日迄俺の隣で戦っていた仲間は、
傷付き、倒れ、
いとも簡単に、この世を去った。

櫛の歯が抜ける様に、
仲間が鬼籍に入り、
俺は、身体も心もボロボロで、
何処も彼処も傷跡だらけなのに、
俺は未だこの世に齧り付く。

こんな俺が、
何故生かされているのか。

それは。
神様だけが知っている、
のだろう。

ならば俺は。
この命尽きる迄、
歯を食い縛り、藻搔きながら生きてやる。

7/3/2024, 5:41:11 PM

この道の先に


真っ暗な道を進んでいきます。
足に、錆び付いた鉄の鎖で結ばれた、
罪と言う名の重い重りを引き摺って。

私の身体は、罪を重ねた後悔で、
雁字搦めで、
動く度に、軋む様な音を立てます。

私は行く当てもなく、歩きます。
兎に角、前に進まないと、
私の背後から何か醜悪な物が、
私を呑み込もうと追って来ている。
…そんな気がするのです。

真っ暗な道。
この道の先に、
明るい未来が待っているのか?
私の罪を断罪する者が待ち受けているのか?
将又、道が途切れて居るのか?
それは、分かりません。

しかし。それでも。
私を只管追い掛けてくる、
得体の知れない青黒く燃える闇から、
浅ましくも、逃れたいと願う私は。
この、真っ暗な先の見えぬ道を、
藻搔きながら進むしか無いのです。

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