霜月 朔(創作)

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七夕


七夕の夜は晴れて欲しい。
と君は云う。

その君の言葉に、俺は、
天の川に隔てられる、
哀れな牽牛星と織女星に、
君自身と君の想い人との関係を、
重ねているのかと思い…。

君にそこまで慕われる相手は、
どんな人なのか。
俺は知らないし、知りたくないけど。
俺は、君への恋心を押し隠し、
ズキズキと痛む胸の痛みを堪えながら、
笑顔の仮面を被って。

俺が君達の鵲になろうか。
と告げたんだ。

すると君は、
急に顔を朱に染めて、
年に一度しか会えない彦星と織姫が、
雨が降って会えないのは、
気の毒だと思っただけだ。
なんて、余りに優しい事を言うから。

雨の所為で彦星に逢えなくて、
織姫が流す涙が雨になる。
それが七夕の雨…催涙雨だなんて。
優しい君には悲しいだろう言い伝えは、
心の中にしまっておいて。

七夕に雨が降っても、
彦星と織姫が逢えるように、
鵲は毎年頑張ってるんだよ?
と、俺は君に嘘を吐く。

そんな俺の言葉に。
それなら安心したと、微笑む君が、
俺には余りに眩しくて。

俺は君の彦星にはなれないだろうけど。
雨の七夕でも、君を彦星の元に送り届ける、
鵲にはなりたい、と。
哀しみを堪えて、微笑むんだ。

7/7/2024, 6:44:58 PM