桜井呪理

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6/15/2024, 12:53:06 PM

私は今日も、ひとりぼっち。

もうここに来てからは、人とも喋ってもいない。

ただ毎日、本を読む。

今のところ、その繰り返しが続いている。

そんな私に、私より2つくらい上であろう男の子が話しかけてきた。

きみもこの本好きなの?

そう言われて、驚いた。

この本を好きな人なんて、私以外いないと思っていたから。

思わず綻びそうになった顔を必死で隠したけれど、もう遅かった。

あはは、笑ってる。
で、この本のどんなところが好きなの?

ずるい。
そんな風にに聞かれたら、もう話したい気持ちが抑えられない。

その日私は、少年と夜がふけるまで話し込んでしまった。

そんな日がしばらく続いていったある日、少年から話があると言われた。

いつもの場所に行くと、小さな花束を抱えた彼が立っていた。

いつも通り話しかけると、少年が凛とした声で言い放った。

ずっと話しているうちに、きみのことが大好きになっちゃったんだ。
愛してる。
彼岸まで一緒に行こう。

愛してる。

ろくでもない彼氏に捨てられて自殺した私にとって、何よりの言葉だった。

私も彼が好きだ。

でも、それよりも先に、出てきた言葉があった。

きみも死んでるの?

とにかくそれに驚いた。

すると少年は、

僕はね、ある事故で死んじゃったんだ。
でも、きみに会って、どうしようもなかったこの死を受け入れられた。
彼岸でしか愛することは出来ないけど、受け止めきれないほどの愛をあげる。
だからこの気持ち、受けとってくれる?

こんなこと言われて、言うことはただ一つ。

喜んで。

彼岸行きの道を歩みながら、私たちは、同じ本を持った手を、そっと繋いで、微笑みあった。

6/15/2024, 10:02:02 AM

私は今日、この世界に終わりを告げる。

私は、そのことを知っていた。

もう治らないと言われている病気に、到底払える額ではない手術代。

今日も自分の心音が少しずつ、少しずつ弱まっているのが、わかっていた。

わかっていたから目を閉じた。

辛いなら目を背けて仕舞えば良い。

もう2度と目覚めることがなかったとしても、痛くないならそれでも良いと、私の心のように曖昧な空を見つめながら目を瞑った。



それからどのくらいったのだろうか

私は不思議なところにいた。

恐ろしほどに美しい花畑の中で呆然としていると、白い服を着た、幼い少年に話しかけられた。

おねーさん 何してるの?
ここはおねーさんが来るとこじゃないよ?

そう言われた私が、じゃあここはどこなのかと聞くと、その少年は、くひひっと笑って答えた。

おねーさん知らないの?
ここはあの世とこの世の境目。
おねーさんは、生きれるからここにいちゃいけないんだよ。

そんな答えを突き返され、私はなんだか腑に落ちてしまった。

そうなんだ。
でもね、私は病気なの。
きっともうしばらくしたら死んじゃうから、あの世に連れてかれるまでここにいるね。

そう私が答えると、しばらく黙っていた少年が口を開いた。

おねーさん、空の色、どんなだった?

唐突な質問に、私は驚きながらも、

曖昧な空だったよ。

と答えた。

すると少年が、

もったいないよ。
曖昧な空だってことは、これからもっと綺麗になるかもしれないじゃん。
ほら、俺がこの世に送ってくれるからさ。

と言って、私の体をぐいっと花畑の中に突き倒した。

だんだん体が眠くなっていく。

ぼんやりとした意識の中で、少年が悲しそうに手を振るのが見え、思わず、あなたは戻らないの、名前は何と聞くと、

僕は雨宮透。
いつか会いにきてね。

と悲しげな声が聞こえた、、、、


目が覚めた。

気がつくと私の周りにはたくさんの人がいて、生きるか死ぬか死ぬかの瀬戸際だったと伝えられた。

みんなが部屋を出ていく時、私は看護婦さんに、あの男の子のことを聞いた。

私と同じ生と死の狭間にいたのなら、この病院にいると思った。

すると、看護婦さんは、雨宮透は、昔この病院で死んだ、空が好きな男の子だったのだと言った。

私は驚いた。

でも、彼のあの寂しそうな顔が忘れられなかった。

彼のお墓は、空を見つめられるようにと、小高い丘の上にあるのだそうだ。

いつかこの病気が治ったら、彼の眠るところへ行こう。

そうして、彼の好きな空のことを、伝えたい。

私はそう願い、生きることを決めた。

6/13/2024, 1:28:33 PM

憂鬱な梅雨には、紫陽花が咲く。

鮮やかな青色をした紫陽花に、私は今日も話しかける。

大好き大好き大好き。

この花を愛するのには、私には愛する人がいたからだ。

今日みたいな梅雨の日、大好きだった彼に、別れを告げられた。

正直もう君に縛られるのは限界だと、もう愛せないと、そう言われた。

悲しくて悲しくて、憎らしくて憎らしくて、許せなくて、気がついたら、小さなナイフを握った手が、カレの体に触れていた。

今日も私は紫陽花に話しかける。

この紫陽花が生きている限り、私は彼と生きられるのだ。

だーいすきだよ、カレ❤️

甘ったるいその声で、私はつぶやいた。




6/12/2024, 1:08:01 PM

好き、嫌い、好き、嫌い。

貧相な花をちぎりながら、そう呟く少女がそこに1人、佇んでいた。

なんだか、どこかで見たことがあるような、そんな感じがしたから、なんとなく話しかけた。

何をしているのと、そう尋ねると、少女はこう言い放った。

すきだったひとをね、さがしてるんだぁ
でもね、みつからないの
だから、おはなさんに、そのこのことを、おしえてもらってるんだよぉ

その瞬間、僕は小さい時に好きだった子のことを思い出した。

その子もよく花占いしてたっけな。

そうぼんやりしていると、少女にどうしたのだと話しかけられた。

僕は、ただ昔のことを思い出したのだと言い、つい詳しく話してしまった。

その時だった。

少女の姿が変わり果て、一瞬のうちに僕を飲み込んだ。

ああ、やっと見つけた。やっと一緒だと、少女は言った。

そういえばあの子は死んだはず。

じゃあこの子は、、、

その真相を、僕は知る由もなく、飲み込まれていった、、、

6/11/2024, 3:11:59 PM

今日も私は屋上に立つ。

毎日毎日毎日毎日星空を見上げて呟く。

ああ、今日も見つからない


ここに越してくる前、ある少年と星空を見た。

少年は、夜空にぼんやりと輝く二つの星を、自分たちみたいだと言って笑った。

私が引っ越す時、彼は、この星が見える限り、僕たちは繋がっているのだと、また会えると、泣きながら言った。

私も、好きだと言ってあげられなかった彼にもう一度会いたかった。会いたくてたまらなかった。


だから私は星を探した。

でも、いくら探しても、あの星は見つからなかった。

どれだけ探しても、鬱陶しい音々の光に隠れて、あの星は消えてしまった。

もう彼には会えない、、、、

そんなどうしようもない現実を突きつけられた気がして、私は泣いてしまった。

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