桜井呪理

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1/21/2026, 3:44:59 PM

「特別な夜」

今日しかない

ふと、そう気づいた

もうずっと我慢していた

お母さんが平手打するのも

お父さんが私に色目を使うのも

お姉ちゃんが私をこき使うのも

でも

もう我慢の限界なの

ねえ、私あと半年で死ぬんだって

病院のお医者さんが言ってたの

なんでこんなになるまで病院に来なかったんだって、怒られちゃった

みんながお外に出してくんないから

私のことちゃんと見てくんないから

結局お前らに未来まで奪われる羽目になったんだよ

だから

だからもういいや

みんなは夕飯を食べてぐっすり

そりゃそうだよね

私が睡眠薬を入れたんだもん

ナイフを手に取る

家族の前に立つ

「さよなら」

ナイフを振りかざした

らん、らん、らららん

踊るように手を動かす

悲鳴が聞こえる

らららん、らん

気がつけば終わっていた

受話器の音

姉を殺すのが遅れたせいか

通報されてしまった

それでも構わない

私は外に出る

「綺麗な空、、、」

何日振りに外に出たろう

血だらけなのに、どこか清々しい

遠くからサイレンの音が聞こえる

捕まってしまう

それでもいいと思った

だって今日は、

私が家族から解き放たれてた

特別な夜なのだから


1/20/2026, 3:50:01 PM

「海の底」



あなたが悪いんだもん

あなたが他の女の子とキスしたのがいけないんだもん

あたしのこと愛してるんでしょ

あたしが一番なんでしょ

だってみーくんそう言ったもんね

君が一番好きだって

みーくんが言ったんだもんね

はぁ?ホストだったから?

知らないよそんなの、あたし言質取るって言ったもん

みーくん笑っていったもんね

嘘じゃないよって

だいじょーぶ!

あたしみーくん嫌いになったりしないから

あたし今日ね、いいもの持ってきたの

じゃーん!人魚になれるお薬!

これを二人で飲んで海に入るとね、

運命の糸で結ばれた二人の人魚になれるんだって

いいでしょ!

俺はそんなの飲んでない?

みーくん気づかないの?

ほんっとに鈍いねぇ

さっきカフェで飲んだジュース

ちょっと苦かったでしょ

え?その瓶のラベルに何か書いてある?

それはただの猛毒だ?

そんなわけないじゃん!

ほら、私たちこれでツインレイになれるんだよ?

おこんないでってばぁ

ね。

一緒に逝こう

みーくんの腕を掴む

私たちは、崖から飛び降りた



体に力が入らない

沈む

苦しい

でも、そんなのちっとも気になんないの

やっと結ばれるね、みーくん

体が海の底にたどり着く

これでもう大丈夫

私は意識を手放した




1/19/2026, 3:25:34 PM

「君にあいたくて」

どうして死んじゃったの。

来月出るパフェの新作、

一緒に食べに行こうって話してたのに。

なんでもう会えないの。

お話ししたいことがいっぱいあったのに。

一緒にゲームセンターに行こうって言ったのに。

誕生日プレゼントを買ってあったのに。

どうして私を庇ったの。

あなたといる世界が好きだったのに。

一緒じゃないならここにもいたくないのに。

どうしてあの日の記憶が頭から消えないの。

あの日の血の温もりの気持ち悪さも

少しずつ浅くなる息遣いを

冷たくなったあなたの体も

いっそ忘れてしまえたら楽だったのに。

ごめんね

ごめんね、美玲

お姉ちゃん、もうダメみたい。

せっかく助けてくれた命なのにごめんね。

お空にひとりぼっちで寂しいよね。

お姉ちゃんすぐいくから。


お空で会えたら、一緒にパフェを食べようね。

いきたかったとこに行こうね。

やりたかったことをやろうね。

来世は幸せに長生きしようね。

「今いくよ、美玲」

私は、踏み台から足を離した





1/18/2026, 3:32:39 PM

「閉ざされた日記」


暗い、暗い部屋の奥。
俺は一人で座っていた。
「やっちまった〜〜!!」
部屋の隅々まで響くほどの声で叫ぶ。
(研究員の人ぶん殴っちまったのは不味かったかなぁ)
ところどころ骨が軋んで痛む体で、ぼんやり考える。
俺たちは実験台。
異能を持った子供の人体改造とか、自我を欠落させることによる兵器化だとか、おぞましいったらありゃしない。
(さぁーて、これからどうすっかなぁ
 抜け出してえけど、、、、。   )
どうしようかと頭を悩ませる。
その時。
部屋の角で、物音がした。
「誰だ?」
物音がした方を見る。
「、、、お前かよ」
拍子抜けしてしまった。
「はっ、悪かったねぇ僕で」
「本当だよ」
「それよりさ」
レウの声が、少し強張った。
「ここから抜け出さない?」
「、、、はぁ!?
 無理に決まってんだろ!
 あいつらの力のことわかってんのか?」
「つれないなあ〜
 でも、いつかはできると思わない?」
どきり、とした。
こいつとならできるかもしれない。
いつか。
いつかここから逃げられるのかもしれない。
「いつかな」
できるだけ平然という。
「はいはい、楽しみにしてるよーん」
本当に、いつかそんな日が来るんだと思った。
そしてその隣には、お前がいると思っていた。
当たり前のように。
笑顔で笑ってくれるんだと思っていた。
保証なんて、どこにもなかったのに。


それからしばらくして、レウが死んだ。
実験の拒否反応で、あっけなく。
俺は、全く泣けなかった。
そのすぐ後ぐらいに、俺は警察に助け出された。
抜け出せなんてしない。
俺は無力な子供で、夢なんてそんなもんだった。
警察の人が、レウの遺品だと言って一冊の日記帳を渡してくれた。
古ぼけた日記帳。
記憶が、蘇った。
『レウ、なんだよこれ〜』
『あー!それは見ちゃダメ!』
『え〜ケチじゃん!』
『じゃあ、いつか僕が見ていいって言ったら見せてあげる。それまで待ってて!』
涙が溢れた。
なんで忘れていたんだろう。
なんでもっといろんなことを話さなかったんだろう。
なんで、なんで、なんで。
「なあ、日記、見ていいって言われてねーぞ
 何書いたか知りてーのに、これじゃ見れねえじゃん
 返事しろよ、レウ、、、」
気づけば、写真に向かってそう言っていた。
日記の裏表紙を見る。
『ここを出たらやりたいこと!
 ①零といっぱい遊ぶ
 ②普通になる
 ③零のしたいことをする!』
レウがやりたかったこと。
全部、俺がしたいと言ったことだった。
「レウ、俺、ここに書いてあることのうち二つはもう
 できねぇけどさ、この普通になるってやつ、やって    
 みるよ。
 そしたら、この日記、見てもいいかな、?」
涙を拭って美しい立ち上がる。
普通になって見せるんだ、精一杯。
レウが心配しないくらい。
その為に。
今はまだ、閉ざされたままにしておこう。
テーブルの上に置かれた日記が、涙と共に輝いた。

1/17/2026, 3:03:47 PM

「木枯らし」

木枯らしが響く

街の間を縫って

人々の間をすり抜けて

体温を

温もりを

奪っていく

手がほんのりピンク色になっている

その冷たい手を

かじかんだ手を

繋いで温めた日

その淡い温もりをくれたあなたは

あの暖かい笑顔をくれたあなたは

もうどこにもいないのですね

「あいたいなぁ」

そっと、小さな声で呟く

白い息が、漂っていた

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