「……夜、か」
私は決まって夜に突然涙が止まらなくなって、この世から消えたくなる。
早く寝れば良いじゃないか、って思われると思う。けれど寝てしまえば一瞬で朝が来る。
それが嫌で、私はこうして夜更かしをしている。
ゲームをして、お菓子を食べて、スマホを触って。そんな事で気を紛らわそうとするけれど。
「あ……泣きそう」
ただ、泣きたくなって泣くだけ。無表情。苦しい顔もしない。いや……できないんだと、思う。
消えたいなあ、最初からいなかった事にしたい。
こんな世界嫌だ、って。終わりにしたい、って。
そんな事何度も考えるけれど、行動に移せなきゃ意味がなくって。……痛いのは、生まれた時から嫌だから。
夜明け前。今日は少し海にでも行こうと思って、
寝巻きのまま適当に靴を履いて家を出る。
信号も合わせて……5分もすれば着く。
まだ日も出ていないのに輝いている海は、私に
「おはよう」なんて喋りかけているようで何だか
面白くて、笑ってしまう。
「っふふ……うん、おはよう」
そう言うと、海から日が出てきて。まるで人間みたい。おはよう、って言われて、布団から少しだけ
顔を出す。そんな感じ。
「貴方は、今起きたのよね。おはよう」
日に向かって声を掛けると、また顔を出す。
「何だか貴方達を見てると疲れも吹っ飛んじゃう。ありがとう。また明日も来るわ」
──ザァァ。
「返事……してくれたの?」
と、少し笑ってしまう。
嗚呼、今日は何だか頑張れそう。
それから私は、夜明け前に海へ行く事を習慣化させた。海と日の出に、ちょっとした元気を貰いに。
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題名:夜明け前
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ふと思う。子供の頃は、幸せだったなと。
❆❆❆
子供の頃は、ちょっとした事で笑うし、泣くし。
今は如何だ?人の顔色ばかり気にして、自分の本音を話せなくて。ただ汚い笑顔を貼り付けるしか───
「ママ?」
娘に声を掛けられて、我に返る。
「あ、ごめんね。如何したの?」
「なんでもないの。ただね、ママ、くるしそうなかおしてたから」
「え〜?ママそんな顔してたかなあ?」
「うん…こんなかんじでね。むすーって」
腰に手を当てて、私の真似をしてくれる。
「ごめんね、怖かったよね」
「ううん、ママのあたらしいかおみれて、███うれしいよ!」
そうやって歯を見せて笑う娘は、何処か昔の私に似ていて。
「今、幸せ?」
「しあわせだよ!ママのこどもにうまれてよかった!」
「そっ、かあ…」
「…ママ、ないてるの?」
「嬉し泣き!大丈夫だから」
「ふふ、そっかあ!」
…子供の頃はただ、笑う事と泣く事が多かっただけ。今も、十分幸せだ。
❆❆❆
題名:子供の頃は
これは、天使と悪魔の、ちょっとしたお話。
───
「あ、あの人お婆さんを助けてる。」
私は、天国から人間界の様子を見ている天使でね。
毎日毎日、人間の笑い声や笑顔を見ているわ。此方も楽しくなる位、笑うの。
天使の役目(しごと)は、善い事をしている人を此方(天国)から見て、閻魔様に報告する事。
でも私は、逆の事をしているわ。報告は、上手くやっているわよ。
「あ───ふふ、悪さしてる人みいっけ。」
***
「人間たちは悪さをするのが好きだな。」
私は、地獄から人間界の様子を見ている悪魔でな。
毎日毎日、人間の悲鳴や怯えた顔を見ている。此方も苦しくなる位、叫ぶんだ。
悪魔の役目(しごと)は、悪い事をしている人を此方(地獄)から見て、閻魔様に報告する事。
でも私は、逆の事をしている。───報告か?上手くやっているぞ。
「あ───善い事してる人がいる。」
***
「閻魔様。今日善良な行いをしていた人間はこの███さんでしたよ。───あの、閻魔様?」
「お前は、嘘を吐いているな。」
「そんな事は…!!」
「此奴は今日、万引きをした筈だ。…仕事中、何をしている?」
「其れは、あの」
「お前は、地獄で悪魔として働け。善いな?」
「…はい」
***
「閻魔様。本日悪行を働いたのはこの███です。───あの?」
「お前も、嘘を吐いているな。」
「えっと、はい?」
「此奴は今日、道で老人を助け、道に迷っている子供も助けていた。…天使と立場を変えろ。彼奴だ」
「…承りました。」
天使と悪魔はそれぞれ閻魔様の前に立ち、天使は悪魔に、悪魔は天使に、と立場を交換した。
***
「ふふ、今日もあの人は善い行いをしているな」
天使となった今、天国では毎日人間達の笑顔を見ることが出来て、私は幸せ者だ。
***
「あはは、あの人はまた悪さしてるのね。嗚呼、あの相手の顔も───」
悪魔となった今、地獄では毎日人間達の怯えた顔を見ることが出来て、私は幸せ者よ。
───
おしまい。
嗚呼、御免なさいね。最初の文に言葉が足りなかったわ。
これは、元天使と元悪魔の、ちょっとしたお話。
───
題名:天国と地獄
「あのね、██ちゃん」
「何、何でそんな深刻そうな顔してんの」
「もし、私が死んじゃったら、どうする?」
「アンタが死ぬ?また変な事言って…全く想像付かないっての」
そう笑う貴方は、昨日、不慮の事故で死んだ。
「昨日は、星が綺麗だったね。近くにある川が流れる音と、星空。最高じゃない?」
そう喋りかけても返事は来ない。でも、喋り続ける。
「私が昨日あんな話をしたからかな。ごめん。」
「いいよ、そんぐらい。」
後ろからそう聞こえた気がした。喋れるなら一寸くらい、姿を現してくれても良いじゃない。
「生まれ変わっても、また仲良くしてくれる?」
「生まれ変わるって…はは、生まれ変わるには平均で4、5年はかかるんだよ。」
「猫になれば良いじゃない」
「ああー、確かに」
「私、あそこでずっと待ってるから。猫になったら、来てちょうだい」
「勿論」
「有難う」
そこから、彼女の返事は無くなった。
また、あの星空の下で出会えますように。
題名:星空の下で
───────フィクション───────
「お母さん、お父さん。ただいま!」
「「おかえり、待ってたよ」」
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私は上京して、所謂、都会に住んでいる。
両親は上京したいと言った私の荷造りを手伝ってくれたり、応援してくれた。
そんな私は月一度は必ず実家に帰り、泊まることにしている。予定が合えば何度でも会いに行った。
私の住んでいる県と両親が住んでいる県はだいぶ遠く、会う手段は列車に乗って行くしかなかった。それプラス何度も乗り換えをする。
でも時間や大変さなんて気にした事がなかった。両親に、1秒でも早く会いたかったから。
「お母さん、お父さん。ただいま!」
「「おかえり、待ってたよ」」
───────フィクション───────
3/1
この物語はフィクションですが、現在ド田舎に住んでいる匿名も何れこうなります。