「……夜、か」
私は決まって夜に突然涙が止まらなくなって、この世から消えたくなる。
早く寝れば良いじゃないか、って思われると思う。けれど寝てしまえば一瞬で朝が来る。
それが嫌で、私はこうして夜更かしをしている。
ゲームをして、お菓子を食べて、スマホを触って。そんな事で気を紛らわそうとするけれど。
「あ……泣きそう」
ただ、泣きたくなって泣くだけ。無表情。苦しい顔もしない。いや……できないんだと、思う。
消えたいなあ、最初からいなかった事にしたい。
こんな世界嫌だ、って。終わりにしたい、って。
そんな事何度も考えるけれど、行動に移せなきゃ意味がなくって。……痛いのは、生まれた時から嫌だから。
夜明け前。今日は少し海にでも行こうと思って、
寝巻きのまま適当に靴を履いて家を出る。
信号も合わせて……5分もすれば着く。
まだ日も出ていないのに輝いている海は、私に
「おはよう」なんて喋りかけているようで何だか
面白くて、笑ってしまう。
「っふふ……うん、おはよう」
そう言うと、海から日が出てきて。まるで人間みたい。おはよう、って言われて、布団から少しだけ
顔を出す。そんな感じ。
「貴方は、今起きたのよね。おはよう」
日に向かって声を掛けると、また顔を出す。
「何だか貴方達を見てると疲れも吹っ飛んじゃう。ありがとう。また明日も来るわ」
──ザァァ。
「返事……してくれたの?」
と、少し笑ってしまう。
嗚呼、今日は何だか頑張れそう。
それから私は、夜明け前に海へ行く事を習慣化させた。海と日の出に、ちょっとした元気を貰いに。
───────────────────────
題名:夜明け前
───────────────────────
9/13/2024, 4:11:59 PM