これは、天使と悪魔の、ちょっとしたお話。
───
「あ、あの人お婆さんを助けてる。」
私は、天国から人間界の様子を見ている天使でね。
毎日毎日、人間の笑い声や笑顔を見ているわ。此方も楽しくなる位、笑うの。
天使の役目(しごと)は、善い事をしている人を此方(天国)から見て、閻魔様に報告する事。
でも私は、逆の事をしているわ。報告は、上手くやっているわよ。
「あ───ふふ、悪さしてる人みいっけ。」
***
「人間たちは悪さをするのが好きだな。」
私は、地獄から人間界の様子を見ている悪魔でな。
毎日毎日、人間の悲鳴や怯えた顔を見ている。此方も苦しくなる位、叫ぶんだ。
悪魔の役目(しごと)は、悪い事をしている人を此方(地獄)から見て、閻魔様に報告する事。
でも私は、逆の事をしている。───報告か?上手くやっているぞ。
「あ───善い事してる人がいる。」
***
「閻魔様。今日善良な行いをしていた人間はこの███さんでしたよ。───あの、閻魔様?」
「お前は、嘘を吐いているな。」
「そんな事は…!!」
「此奴は今日、万引きをした筈だ。…仕事中、何をしている?」
「其れは、あの」
「お前は、地獄で悪魔として働け。善いな?」
「…はい」
***
「閻魔様。本日悪行を働いたのはこの███です。───あの?」
「お前も、嘘を吐いているな。」
「えっと、はい?」
「此奴は今日、道で老人を助け、道に迷っている子供も助けていた。…天使と立場を変えろ。彼奴だ」
「…承りました。」
天使と悪魔はそれぞれ閻魔様の前に立ち、天使は悪魔に、悪魔は天使に、と立場を交換した。
***
「ふふ、今日もあの人は善い行いをしているな」
天使となった今、天国では毎日人間達の笑顔を見ることが出来て、私は幸せ者だ。
***
「あはは、あの人はまた悪さしてるのね。嗚呼、あの相手の顔も───」
悪魔となった今、地獄では毎日人間達の怯えた顔を見ることが出来て、私は幸せ者よ。
───
おしまい。
嗚呼、御免なさいね。最初の文に言葉が足りなかったわ。
これは、元天使と元悪魔の、ちょっとしたお話。
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題名:天国と地獄
5/27/2024, 12:25:28 PM