箱庭メリィ

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12/4/2025, 9:39:50 AM

「冬といえば?」
「冬といえば〜?」

隣りにいる彼女から問われた。小首を傾げるさまが大変愛らしい。

「寒い、雪、鍋、肉まん、おでん――」
「もう、お腹空いてるの?ロマンないなぁ〜」

コートのポケットに手を突っ込みながら答えると、彼女は軽く頬をふくらませて唇をとがらせた。
どうやら彼女のご期待に添えない答えだったらしい。

「冬といえばさ」
「うわっ」

彼女はにこっと笑ったかと思うと、突然俺のコートのポケットに手を突っ込んできた。

「こうやって手を繋げることでしょ!」

彼女はぎゅっとポケットの中で俺と手を繋ぐと、ふふ、とはにかんだ。

「にぎにぎ〜。ほら、あったかい」

可愛い、と思ったが不意打ちすぎて何だか照れくさくて口に出来なかった。
代わりに視線をそらしながら、

「手なんていつでも繋げるだろ。恋人なんだから」

と答えた。
彼女はそうだね、と微笑み頷いた。


/12/3『冬の足音』

12/3/2025, 2:40:26 AM

箱を開けたら、空っぽだった。

「これは、なに?」
「何って、プレゼントよ」

プレゼントと言って渡された箱は、それと言われて想像するまさにその箱で、綺麗にリボンでラッピングされたものだった。中身以外は。

「中身、ないんだけど」
「ほんとに?受け取りきれてないだけじゃない?」
「どう見ても何も入ってないよ。振っても音しないし」

左右に箱を振ってみても、かすかに風を切る音だけがした。

「まさかこんな変哲もない箱がからくり箱とか言わないよね?」
「まさかあ。よく見て、受け取って」

もう一度箱を見てみる。やはり何もない。

「どういうこと?」
「んもう!ロマンのわからない人ね。気持ちよ、気持ち!私の愛がたっぷり詰まってたでしょ?」

ふんとスネたかと思ったら、どうだと胸を張って言われた。そのいばる様はまるで王様だ。

「……そういうこと」

脱力したように箱を持つ手を下げる。

(そんなに言うのなら、こんなに仰々しい箱でなくてもよかったのでは?)

なんて思ったが、怒られるだけなので言わない。

今年のクリスマスは、「愛」をもらった。

(文字列だけ見ると美しいのに、この切なさはなんだろう)


/12/2『贈り物の中身』



凍えるような
すっきりとした星空の下で
君と飲むココアが好きなんだ


/12/1『凍てつく星空』

11/30/2025, 2:40:27 PM

ただ隣を歩くだけ。
それだけでいい。
それだけで君と紡がれる毎日が彩られる。


/11/30『君と紡ぐ物語』

11/30/2025, 6:10:59 AM

声が出なくなった。

彼女の声が出なくなった。
風邪を引いたわけでも、病気になったわけでもない。
突然彼女の声が出なくなったのだ。

普段から物静かな彼女だから、コミュニケーションを取るのは、そう難しいことではなかった。
喋らずとも伝わる。

ひとつだけ困ったことが、彼女の歌が聞けないことだった。
街で流行りの歌手より、僕は彼女の歌のほうが好きだった。
なのに、今はその歌声が聞けないのだ。

(いつか聴けるようになるのかなぁ?)

じっと彼女を見つめると、思っていることが伝わってしまったのか、彼女は困ったように笑った。


11/29『失われた響き』


「冷たっ」

自分の悲鳴で目が覚めた。

突然覚醒した頭とまだ寝ぼけている目をこすって、ゆっくり体を起こした。いや、起こそうとした。右側の布団が持ち上がらなかったのだ。
犯人は最近同棲し始めた彼女。猫のように体を丸めて僕の隣と布団を陣取っている。

「また……?」

思わず口について出た。
朝が冷え込めば冷え込むほど彼女が布団に潜り込んでくる確率が上がってくる。
それだけならいいのだが――。

(毎回冷たい足を僕の足であっためるの、やめてほしいんだよなぁ……)


11/28『霜降る朝』


毎日忙しい日々
深く呼吸をすることすら忘れて
溺れてしまいそうになる

そんな時こそ深呼吸して
リセットすることを忘れずに

たまには
好きなことする日もいいよ


11/27『心の深呼吸』

11/27/2025, 2:31:45 PM

封じ込めてしまったドアを、そろりと開けた。
箱には何も入っていない。それでいい。、
私にしか見えないからだ。

「さあ、開けるわよ」

箱の中の更に中に入っていた小箱。
この箱の中から何が出てくるのか、持ち主の自分でもよくわかっていない。

開ける前に深呼吸を。
自分の見たくないものかもしれないものを開ける恐怖と言ったらない。

(でも開けなくちゃ)

私は、私の心の中の箱から飛び出した小さい箱を開けるために、深く深呼吸をした。
カチャリ、と軽い鍵の音がして箱は開いた。

/11/27.『心の深呼吸』


「もしもし、聞こえますか?」
「もしもし、聞こえますよ」

真っ暗な世界で、その白い糸だけは見えるという。
片方の筒に口元を当て、片方の筒に耳を当てる。
あちらとこちらを繋ぐ糸(せかい)。

「どうですか、お元気ですか?」
「お元気ですよ。そちらはどうですか?」
「僕もお元気ですよ」
 
子どもたちは糸電話で彼らの世界を繋いでいる。

こそこそと大人に秘密の会話でもしているのだろうか。

どうか声を大きくしすぎて秘密が聞こえないようにね。


/11/26『時を繋ぐ糸』

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